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職場復帰支援の流れを解説~休職者の対応として抑えるべき5つのステップとプラン作成のポイント~

メンタル不調による休業後の職場復帰は、社員だけでなく企業にとっても重要な課題です。
適切な職場復帰支援が行われていないと、本来のパフォーマンスを思うように発揮できず焦燥感により精神疾患の再発・再休職のリスクが高まり、社員の離職に繋がる可能性もあります。

しかし職場復帰支援は個別性も高いため、対応に苦慮されている人事・管理職ご担当者もいらっしゃるのではないでしょうか?
本記事では、休職者への適切な対応と職場復帰支援のポイントについてご紹介します。


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目次[非表示]

  1. 1.メンタルヘルスの問題に関する休復職支援とは
    1. 1.1.社員1人の休職が企業に及ぼす影響
    2. 1.2.休復職支援に取り組んでいる企業は3割に満たない
  2. 2.職場復帰支援の流れ~5step~
    1. 2.1.Step1:休業開始および休業中のケア
    2. 2.2.Step2:主治医による職場復帰の判断
    3. 2.3.Step3:職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
    4. 2.4.Step4:最終的な職場復帰の決定
    5. 2.5.Step5:職場復帰後のフォローアップ
  3. 3.まとめ
  4. 4.ピースマインドの「はたらくをよくする®️」EAPサービス
  5. 5.参考文献・参考資料


メンタルヘルスの問題に関する休復職支援とは

社員1人の休職が企業に及ぼす影響

従業員の心身の健康を保持することは、企業にどれほどの利益をもたらすのでしょうか。
例えば、従業員1名(30代後半、年収約600万円、男性)がメンタルヘルス不調等に伴い休職する場合、コストは442万円以上に上り、退職率は42.3%に上ると言われています(従業員100~999人の中規模企業を想定)。

休職に伴うコスト


また休職・退職は金銭的なコストのみならず、生産性の低下や企業イメージの低下など様々なリスクを伴います。適切な休復職支援は、職場環境改善の一環として今以上に力を入れる必要があるでしょう。

休職が職場に与える影響


休復職支援に取り組んでいる企業は3割に満たない

メンタルヘルス不調により休職した場合、復職しても状態が悪化し、再休職になることも少なくありません。その傾向は、事業所規模が大きくなるほど顕著に見られます(※1)。

メンタルヘルス不調 休業 割合


一方で、メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業のうち、復職支援を導入している企業は24.8%と少なく、再休職予防への対策が十分に行われていない可能性もあります(※2)。

職場復帰支援に取り組んでいると回答した企業の割合


休職者を増やさないためには、復職者へ適切な処置を即座に提供できる職場をつくり、
よりよい労働環境へと改善していけるかが鍵となります。


職場復帰支援の流れ~5step~

では、具体的にどのような支援が求められているのでしょうか。
社員が休職を開始してから、職場復帰後のフォローアップまで、人事担当者が押さえるべき職場復帰支援の流れを5つのステップに分けて解説していきます。

職場復帰支援の5STEP


Step1:休業開始および休業中のケア

Step1 休業開始および休業中のケア

まず、社員より診断書(病気休業診断書)が提出され、正式に休職となります。
ここで休職者に対し、必要な事務手続きや職場復帰支援の手順を説明します。また、休業期間中に安心して療養できるよう、悩みの相談先の紹介や傷病手当金などの経済的な補償などの情報提供をしましょう。その際、休業を開始する労働者に対しては、安心して療養に専念できるよう、心身を気遣う姿勢が望ましいでしょう。

さらに、休職者の了承を得て、主治医との情報交換を始めます。
主治医は、病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、実際に職場復帰できる状態であるとは限らないこともあります。あらかじめ主治医に、職場環境(休業前の業務内容)や支援制度、職場復帰判定の基準を伝えておくことで、より安全でスムーズな職場復帰支援を進めることができます。

本人を通じて文書をやり取りするか、人事労務担当者などが受診に同伴し、直接情報提供を行うことが望ましいです。

Step2:主治医による職場復帰の判断

step2

復帰の意思が示されたら、主治医に復帰可能か判断してもらうフェーズです。
このStepでは主治医と窓口担当者との連携が重要となります。

休職者より復帰の意思が示された場合には、「職場復帰可能」という判断が記された主治医からの診断書の提出を求めます。本人や家族による不安・焦りから、十分な回復がなされないまま復帰の意思が示されることがあるため、注意が必要です主治医と連携し、十分回復したうえで復帰できるように説明をしましょう。復帰可能と判断された場合には、メンタルヘルス不調の社員をサポートする従業員支援プログラム(EAP)の窓口で復職の相談が始まる場合もあります。

Step3:職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成

Step3 職場復帰の可否の判断、職場復帰支援プランの作成

企業側が職場復帰の可否を判断するStepです。企業が復帰可能と判断した場合には、具体的な復帰支援プログラムを作成する過程も、このStep3に含まれます。

職場復帰支援をスムーズに行うために、職場復帰の可否の最終決定の前段階として、情報収集と評価を行ったうえで職場復帰ができるかを適切に判断し、職場復帰支援プランを作成します。職場復帰支援プランの作成は、主治医や産業医の意見を中心に、管理監督者や休職中の本人との綿密な連携のもとに進められます。



・職場復帰支援プランの作成

職場復帰支援プラン作成の際、休業する前の就業状態に戻すまでには、いくつかの段階を設定し経過を見ながら、休職者の状態に応じて内容や期間を調整することが望ましいでしょう。
また、休職者本人の希望のみで職場復帰支援プランを決定することが円滑な職場復帰につながるとは限りません。主治医の判断や産業医等の医学的意見を踏まえ、総合的に判断・決定をすることを心掛けてください。

職場復帰プラン作成のポイントは、各段階ごとに求められる水準も明記することです。(例)定時勤務が可能、職場内での仕事に関する意思疎通が可能、顧客との折衝が可能、など)
以下の項目について検討し、職場復帰支援プランを作成します。

職場復帰支援プラン作成の際に必要な項目


休職者本人には、きちんとした計画に基づき着実に職場復帰を進めることが、職場復帰後に長期に安定して働けるようになることにつながることの理解を促し、労働者と企業の双方が安心して働ける状態を整えることが望ましいでしょう。

Step4:最終的な職場復帰の決定

Step4 最終的な職場復帰の決定

Step3での判断を踏まえて、最終的な職場復帰の可否の判断を行うのがStep4です。
最終的な判断で復帰可能とされた場合には、本人に対して復帰の可否やフォローアップのプランなどについて通知するとともに、産業医によって作成された「職場復帰に関する意見書」や最終決定の内容を主治医に情報提供しましょう。
人事と主治医、産業医が職場復職支援について綿密に情報共有を行うことで、職場復帰の可否について、判断がスムーズになります。

また、必須の支援プログラムではありませんが、本格的な職場復帰をする前にデイケア等で軽作業を行ったりする模擬出勤や、業務の負担や勤務時間を軽くしながら職場に一定期間出勤するといった試し出勤の制度を導入している企業もあります。「試し出勤」の制度導入時は、様々な配慮とルール作りが求められることに注意しましょう。

Step5:職場復帰後のフォローアップ

Step5 職場復帰後のフォローアップ

職場に復帰したら、そこで復帰支援が終わるわけではありません。完全に仕事へ復帰するまでフォローアップを行っていくことが、最終のStep5となります。再休職・再発の防止には一番重要なStepです。

冒頭でも述べた通り、職場復帰後は再休職のリスクが高いとされているため、復帰後のフォローアップは非常に重要です。
管理監督者と事業場内産業保健スタッフ等と協力し、観察と支援によるフォローアップを実施していきましょう。職場復帰支援は計画通りに実行できないこともあります。
最初のうちはできるだけ短い間隔で適宜、職場復帰支援プランの評価や見直しを行い再発・再休職を防止しましょう。



復帰の意思表明から職場復帰後のフォローアップが重要

復帰後のフォローアップは本人だけでなく、職場にとっても再休職予防策として非常に重要です。
平成28年度における厚生労働省の労災疾病臨床研究事業「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」(※4)では、うつ病で休職した社員のうち47.1%が5年以内に再発、再休職を取っていることがわかっています。また、再び休職となれば、職場の復帰支援制度が不十分であったと本人やその周りの社員から思われかねません。



職場復帰後のフォローアップと配慮
職場復帰後に順調に業務を行ってもらうために、管理監督者の観察と支援、主治医や産業医との連携の下で復帰支援プランを適宜、見直してください。
職場復帰後のフォローアップでは、以下のような項目をチェックしてください。

​​​​​​​フォローアップ事項のチェック


フォローアップが行われていることが周りにも見えることで、会社への信頼へとつながることも考えられます。上記のようなフォローアップを行う際には、人事や管理監督者だけでなく、必ず産業医等の専門家との連携の下で行っていきましょう。


まとめ

休職者の職場復帰支援では、休職中から復帰後のフォローアップにわたり、人事労務担当者や管理監督者が、復職者の状態を把握することが必要です。
再休職再発の予防だけでなく、休職者を事前に防ぐためにも、産業医などの専門家との綿密な連携が取れるネットワークをつくり、適切な対処を行いましょう。

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参考文献・参考資料

※1:厚生労働省 令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」
※2:中央労働政策研究・研修機構 平成25年 『メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査結果
※3:厚生労働省 令和2年 「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
※4:厚生労働省 平成28年 労災疾病臨床研究事業費補助金研究報告書「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」
内閣府 平成20年「企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット」

鈴木 麻美(すずき あさみ)
鈴木 麻美(すずき あさみ)
ピースマインド株式会社 社員支援コンサルティング部 EAPスーパーバイザー  公認心理師 精神保健福祉士  社団法人日本産業カウンセラー協会 産業カウンセラー 大学卒業後、2004年よりピースマインド株式会社にて、コンサルタントとして、社員のセルフケア、人事・管理職向けのマネジメントコンサルテーション、職場惨事(死亡事故、自殺他)後の心のケア、など、産業現場のメンタルヘルスに関わる業務に携わる。個人カウンセリングだけでなく、グループセッション、研修、ストレスチェック組織分析説明会などを実施。 ストレス・マネジメント、不調社員、職場不適応社員対応、休職・復職対応、職場惨事対応などを専門とする。

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