東映株式会社様

クリエイティビティを発揮するための人的投資に注力
個々人が尊重され、自分らしく働ける環境づくりを探求

東映株式会社様

東映株式会社 
取締役 映像本部副本部長兼撮影所事業部門長 小嶋 雄嗣 様
上席執行役員 人事部長 重盛 雄一 様
東映株式会社(以下、東映)様は、映画を始め多様な映像製作を中心に、多角的なビジネスを展開する総合コンテンツ企業として、様々な領域から世界にエンタテインメントを提供されています。制作に集中できる職場環境づくりの一環として、白石和彌監督の『孤狼の血LEVELⅡ』(2021年8月公開)の撮影現場にて、日本の映画会社で初めてリスペクト・トレーニングを導入されました。その後、東映様で手掛ける映画やテレビドラマの撮影前には、リスペクト・トレーニングが原則義務化とされるなど、働く個々人が尊重され、自分らしく働ける環境づくりに注力されています。詳しいお話を、取締役 映像本部副本部長兼撮影所事業部門長 小嶋雄嗣様、上席執行役員 人事部長 重盛雄一様にピースマインド代表取締役社長の荻原英人が伺いました。

日本の映画会社で初めてリスペクト・トレーニングを導入
変革期の映画業界のミライのためにコミュニケーションに投資

荻原 映画/映像業界の働き方改革が進んでいますが、日本を代表する映画会社として数々の名作を製作されてきた東映様の視点で、現在の流れをどのように捉えていらっしゃいますか?
小嶋様 かつて映画製作の現場は非常に過酷な労働環境だと言われてきました。現在は、映画/映像業界が変わっていこうという意識がありますが、つい伝え方がきつくなってしまうなど、受け取り手によっては「言葉の暴力」と感じるようなコミュニケーションは、残念ながら根絶できていません。

このような状況の背景には、長時間労働や休暇取得の難しさといった課題があります。東映としても映画/映像業界全体としても、まずは長時間労働がストレスを生む環境を是正しなければいけないと考えています。
荻原 労働時間の課題について、東映様ではどのような改革をされていますか?
小嶋様 1日あたりの撮影時間の上限を定めるなど、具体的な数字を示してスタッフの労働時間をコントロールしています。このような働きやすい環境づくりは、スタッフの定着率を上げてよりよい作品づくりに集中してもらうために必須の取り組みです。
荻原 日本映画制作適正化機構※1(以下、映適)の認定制度の影響もあるのでしょうか?
映適の認定1号作品は、東映様の作品ですね。 映画『王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン』(申請者:東映/東映テレビ・プロダクション)が映適認定第1号作品として認定されました。
小嶋様 そうですね。経産省と連携して映適が音頭を取ることで、映画/映像業界全体の意識改革に繋がっていると思います。就業環境が適正であり、かつサステナブルなものにするためには、労働時間の課題をまず改善しなければいけないと意識して改善に取り組む事業者が増えてきました。

最近では、無茶な撮影がなくなって、以前に比べて働きやすくなったと感じています。映適の認定が始まって1年なので、業界全体に浸透していくのはこれからですが、良い効果を生むことを期待しています。
荻原 労働環境の改善が業界全体に広がってきていることは素晴らしいですね。
東映様では、白石和彌監督の『孤狼の血LEVELⅡ』(2021年8月公開)の撮影現場で、日本の映画会社で初めてリスペクト・トレーニングを導入をされました。その後、ほぼ全ての映画やテレビドラマに導入をされていますが、このようなイニシアティブの背景のお考えを教えてください。
小嶋様 ハラスメント問題は、あらゆるニュースになっていて、誰もが社会課題だと認識しています。ただ、理屈ではわかっていても自分事として捉えることが難しい側面があると思います。リスペクト・トレーニングは、「○○をしてはいけません」と禁止事項のレクチャーを受けるのではなく、ワークを通じて「なぜ○○のような行為がいけないのか」を自分事として捉えられる構成になっているので、本人がしっかり腹落ちするところに効果があると感じています。
荻原 「リスペクト・トレーニング」実施後、社員や制作現場のスタッフのみなさまに変化はありましたか?
小嶋様 ギスギスした雰囲気が改善されたと思います。映適の動きもあり、守らなければいけない基準が共有できたことで、かつてあった「根性で乗り切れ」という雰囲気が減ってきました。ハラスメントのグレーゾーン的な発言は、なかなかゼロにはならない課題感はありますが、「いまの発言はダメなんじゃない?」という会話が現場のメンバー同士で生まれるようになったことは大きな一歩だと感じます。
荻原 職場の雰囲気が改善されてきているということですね。ハラスメントを恐れて、組織の中で上の立場の方が発言できなくなってしまうケースもあらゆる職場で聞かれますが、東映様の現場では闊達な意見交換がなされているのですか?
小嶋様 映画づくりは、コミュニケーションで成り立っているものです。監督の意見が絶対という風潮があった時代もありますが、現在はみんなの意見を聞きたいとお考えの監督がとても増えています。コミュニケーションが良くないと制作の進行や作品自体に影響が出てしまうことは撮影現場のトップである監督自身が一番よくわかっているので、白石監督のように発言しやすい雰囲気を作ってくださることも多いです。また、本当に難しい時には無理だと声をあげやすくなっていることも最近の良い変化だと思います。
荻原 コミュニケーションはしっかりとりつつ、ご自身や周囲のメンバーの方の発言について、立ち止まって考える文化が浸透してきているのは良い変化ですね。
小嶋様 2024年は制作部門のスタッフだけでなく、東映京都撮影所に所属している俳優のみなさんにもリスペクト・トレーニングに参加してもらいました。これが非常に好評でした。特に若手の反応が良く、ハラスメントについてみんなで考える場があることが喜ばれました。東映が会社としてハラスメント対策に真剣に取り組んでいることが伝わった結果だと思います。

今後の課題は、同じことを続けていると、「またですか?」という反応も出てきます。初めて受ける人と、作品毎に何度か受けている人がいるので、リスペクト・トレーニングの実施方法に工夫が必要な時期になってきました。 
荻原 私たちがお手伝いさせていただいているリスペクト・トレーニングの実施によって、御社がハラスメント対策に本気で取り組まれていることが制作スタッフや俳優の皆様に伝わって良い効果が出てきていることは大変嬉しく、光栄です。今後も継続的な取り組みにおいて、参加者の方の状況に応じて、より効果的なトレーニングになるように尽力させていただきます。

東映BRAVE宣言(Be Respectful And Value Empathy)
~序章:“ダイバーシティの波“起こせ!~
尊重する心を持ち、共感を大切にすることでD&Iを実現

荻原 東映グループ様の中長期VISION〈TOEI NEW WAVE2033〉の重点施策として「映像事業強化のための人的投資の拡大」が掲げられています。人事としてどのような想いを込めた取り組みなのか聞かせてください。

重盛様 東映グループは「愛される『ものがたり』を全世界に」を使命とし、事業活動を通じて持続可能な社会に貢献しつつ自社の持続的成長を実現することを目指しています。

持続的成長のために映画をはじめコンテンツ制作を力強く進めるうえでは、その担い手自身の能力をのびのびと発揮できる環境が不可欠です。そこでD&I理解向上のためのプロジェクトや、撮影現場でのリスペクト・トレーニングの導入など、東映で働く個々人が尊重され、自分らしく働ける環境づくりに力を入れています。

先程、小嶋が申し上げた通り、撮影現場の長時間労働とハラスメントの因果関係は映画/映像業界の課題なので、労働時間の法令順守は必須です。それに加えて、ハラスメントが起きない風通しの良い職場をつくっていくことが大事だと思っています。
荻原 映画や映像の制作会社の場合、作品単位のプロジェクトチームが主導でリスペクト・トレーニングを実施することが多い傾向にあります。一方で東映様では、人事主導で会社組織としてリスペクト・トレーニングを導入されていることは非常に特徴的です。どのようなお考えのもとに人事で施策を実行されているのですか?
重盛様 人事主導で進めているのは、会社としての姿勢の証です。東映ではたらくすべての人に、リスペクトのフィルターを通したコミュニケーションを推奨し、同じ認識を持ってほしいと思っています。東映では、社員、契約社員、フリーランスなど多くの雇用形態があり、役割も様々です。多様な人材が一堂に会してトレーニングを受け、目線を合わせることができることに、リスペクト・トレーニングの意義を感じています。
荻原 多様性を受け入れ尊重するダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)の視点が込められているのですね。東映様では、D&Iの取り組みとして「東映BRAVE宣言」を出されています。こちらについて詳しく聞かせてください。
重盛様 東映は従業員全員がD&Iを自分ごととして捉え、互いを尊重することでイノベーションを創出する企業を目指して、D&I推進に取り組んでいます。

プロジェクトメンバーが考えた推進スローガンである“B・R・A・V・E”は、「Be Respectful And Value Empathy(尊重する心を持ち、共感を大切にしよう)」の頭文字を取り、「BRAVE(勇気)」という言葉自体にも、変わる/変わらない勇気、そして相手を受け入れ、新しいことを受け入れるという勇気を持ってD&Iを推進していこうという想いを込めました。まさにリスペクト・トレーニングに繋がる宣言です。

これは会社が決めたものではなく、昨年発足した社員のプロジェクトチーム1期生メンバーが話し合ってまとめたものです。このチームは、様々な部門・年齢のメンバーで構成されています。
荻原 素晴らしいですね。プロジェクトチームの具体的な取り組み事例を聞かせてください。
重盛様 まずは、社外の有識者の方を招いて講演や研修をする所から始めました。昨年は、プロジェクトチーム1期生のメンバーが東映の課題についてディスカッションし、役員にプレゼンしました。1期生がまとめた課題を今年は2期生が引き継ぎ、具体的なアクションプランの検討に入っています。
荻原 これからプロジェクトメンバー主体のD&I活動が楽しみですね。

みんなが笑顔でクリエイティビティを発揮するために、
安心して発言できる職場づくりを推進

荻原 様々なお取り組みについてお話を伺い、東映グループ様の「安全で安心して働ける職場環境の実現」に向けたお取組みの本気度が伝わってきました。
最後に、小嶋様、重盛様にとっての「はたらくをよくする®」とはどのようなことか聞かせてください。
小嶋様 東映で働くみんなが、いつもにこにこしていられる状態をどうやって作っていくのかが鍵だと思います。楽しく働くことが一番大事です。楽しくやりがいのある「頑張っているけれど楽しい」環境をつくって、みんなが笑顔でいられるようにしたいです。
重盛様 職場で安心して発言できる環境を作っていきたいと思っています。発言を頭ごなしに否定されると、不安になって言いたいことが言えなくなってしまうこともあります。誰でも臆することなく発言できるように、聞く方も相手を尊重しつつ自分の意見を伝えるコミュニケーションができるようにすることも大事です。
荻原 日本の映像製作業界をリードされてきた東映様が、自社のみならず業界全体の働く環境をより良くすることを牽引されようとしている強い思いを感じました。今後も引き続き御社の「はたらくをよくする®」ことにご協力できれば嬉しいです。本日は貴重なお話をきかせていただきありがとうございました。
※1 映画制作を志す人たちが安心して働ける環境を作るために、映画界が自主的に設立した第三者機関
小嶋 雄嗣 様 プロフィール
東映株式会社 取締役 映像本部副本部長兼撮影所事業部門長、京都撮影所長、太秦地区担当
1984年東映株式会社入社。テレビ事業部に配属され、テレビドラマのプロデューサーとして、「暴れん坊将軍10〜12シリーズ」「八丁堀の七人」「京都地検の女」などをプロデュース。2009年東映テレビプロダクションに異動。所長代理、所長などを歴任。2021年6月東映株式会社顧問・大泉地区担当、2022年6月より東映株式会社取締役に就任。
重盛 雄一 様 プロフィール
東映株式会社 上席執行役員 人事部長
1993年東映株式会社に入社。ビデオ管理部を経て、2000年に人事労政部に異動。2022年7月に人事部長、2023年6月に執行役員、2024年6月に上席執行役員に就任。
社名 東映株式会社(TOEI COMPANY, LTD.)
事業内容 映画の製作、宣伝、配給、興行
設立 1949年(昭和24年)10月1日
従業員数 1381名(2024年3月31日現在)
URL https://www.toei.co.jp/index.html​​​​​​​
リスペクト・トレーニングの資料を無料配布中!
CTA_Rtraining_documentDL

関連記事

目指すはお客様とともに
「はたらくをよくする®」会社


平日 9:00~18:00
ご不明な点はお気軽に
お問い合わせください。
各サービスの資料をダウンロードできる
一覧をご用意しています。