部下の成長or仕事の成果?|臨床心理士に聞く、部下の育成に伴う葛藤を解消するヒント
「部下の育成に力を入れたいけど、どう対応したら良いかわからない」
「仕事の成果を求められていて、部下とあまり関われていない」
と悩んだことはありませんか?
本記事では部下の育成に伴う葛藤を解消するためのポイントをご紹介します。
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部下の育成は管理職の裁量に任されることが多い
部下の育成が重要業務だとわかっていても、そこにどれだけ注力するかは、管理職の裁量に任されることが多いです。部下の育成に熱心な上司であっても、業務量が多い部署では業務をこなし成果を上げることで手一杯というケースはよくあります。
「育成の必要性を理解していても、なかなか手が回らない」「部下に申し訳ない」「成果が出せていないと部下を育成する余裕が持てない」といった成果と育成の板挟みに悩んでいる上司の方々に、育成における葛藤を解消するヒントをご紹介します。
仕事の成果と部下の成長、どちらを優先すべき?
成果を優先する理由としては、部下を成長させたことが評価に結びつかないことが挙げられます。
部下の育成には時間と労力がかかるため、求められる成果と部下の育成を両立させるのはなかなか難しいことでしょう。しかし、覚えていただきたいことは「成果は目先の利益、成長は投資」ということです。
異動がある会社員だと、部下の成長を支えたとしても必ずしも異動先に部下を連れていけるわけではありませんし、投資の恩恵を直接受けられないのであれば、成果を優先することはやむを得ないのかもしれません。
しかし、ベテランが多い会社だと急に世代交代を迎えて、「急いでノウハウを教えないといけない」という状態になることも少なくありません。長期的に考えると、部下の育成は非常に大切です。
若手にどんどん新しいことを教え、ミスをすることのリスクを抱えながらも場数を踏ませる指導をする会社も数多くありますが、育成という投資を管理職で行うことは難しいことです。
以降では忙しい日々の中で部下を育成するコツをご紹介します。
「誰にどう成長してもらいたいか?」から仕事を割り振る
膨大な業務を抱える中で「誰にどのような仕事を割り振るか」というのは非常に重要なポイントです。
例えば「この方に頼めば確実だし早いけれど、新しく入った方にもこの仕事を覚えてほしい」「でも失敗できないし、早くやってほしいから、やっぱりこの方に頼むか」という場面に身に覚えがある人は多いのではないでしょうか。部下の成長と仕事の成果が天秤にかけられる場面です。
「誰にどのような仕事を与えるか?」を考えるうえで重要なのは「誰をどのように成長させるか?」ということです。時間の制約がある中で、全員を同じだけ成長させることができないのであれば、「誰にどう成長してもらいたいか?」とターゲットを決めましょう。
成長著しい部下には能力を発揮できる環境を整える
成長著しい部下とは、上司が細かい指示をしなくとも、最低限のチェックをすればきちんと仕事をこなすことができる部下です。育成という観点で見ると、このような方は手取り足取り教えられることや、命令・細かな指示を求めていません。
従って、ある程度裁量を持たせて、部下がより能力を発揮できる環境を用意することが上司の役割となります。
成長著しい部下を育成することのデメリット
意外に思う方も多いかもしれませんが、「成長著しい部下を成長させることのデメリット」もあります。それは、成長が飛躍的に向上する部下に依存していると、その部下が異動や転職・産休、育休で職場から離れた時に非常に困るのです。
その部下しか知らない、できない仕事だからと言って、そのまま放置しておくわけには行きません。特定の部下への依存を避け、日頃から他の部下の成長も促すようにしておくことが、安定した成果を生み出すための基盤となります。
特に、その部下しかできない仕事を作ることは、時にとても大きなリスクになる恐れがありますので、必ず複数人が対応できるように業務フローを整理しておく必要があります。
部下が尊大な態度を取る時には対処が必要
成長が著しい部下は仕事がよくできるために、時に尊大な態度をとることがあります。言動を逐一注意することは難しいですが、度が過ぎてしまい、パワハラに該当するような場合は対処する必要があります。
よく聞く事例としては「新しく異動してきた管理職を見下す」ということです。業務知識などの優位性を盾にして、部下から上司への嫌がらせ行為を行うことはパワハラに該当する場合もあります。
お困りの場合は社内のパワハラ相談窓口や提携先のEAPに相談することをおすすめします。
成長が停滞している部下には挑戦とフィードバックを与える
では、成長が停滞している部下にはどのような育成をしていけばいいのでしょうか?
このような部下に足りないのは、技術や知識、仕事の進め方などの基礎的な部分です。これらの多くは、OJTなどできちんとティーチングしていく必要があります。
しかし、成長しようという意欲を示さない人もいるかもしれません。上司も部下の特性を考慮して仕事をアサインすることは難しく、とりあえず業務を任せて様子を見るということも多いかと思います。
最初は、半ば強制的にチャレンジさせることも時には必要です。重要なのは、頼んだ仕事をきちんと評価してフィードバックすることです。仕事を任せきりにしてしまうと、部下としては仕事がただ増えていくだけに感じられます。
アサインした仕事に対して、部下がどのように成長したのか、客観的に伝え、細やかなフィードバックを行います。そうすることで、部下が達成感を感じ、前向きな気持ちで仕事に取り組んでいくことができるでしょう。
なかなか成長しない時には今できていることを評価する
全員が早期に成長することができる状態が理想ではありますが、人を成長させるにはマンパワーを多く要します。人手不足に加えて、部下自身がなかなか覚えられない、覚える気がないという場合には、今できていることを確実にやってもらうというのも一つの方法です。しかし、ずっと同じ仕事をこなすことによって部下のモチベーションが下がってしまうことを防ぐため、ルーティンワークにおいても適切に成果をフィードバックすることが重要です。縁の下の力持ちとしての仕事ぶりを評価し、フィードバックすることで部下のモチベーションを維持することが期待できます。
管理職自身の悩みにはどう対処する?
管理職の方は今の業務につく前から非常に優秀な社員で、管理職になることを楽しみにしていたかもしれません。辞令が出た時には「管理職になっても良い成果を出そう」と思い、同時に「どんな部下を持つのだろうか、部下に尊敬される上司になって、優秀な部下を育てていきたい」と考えていたのではないでしょうか。
しかし、実際に管理職になってみたら、「仕事の成果」と「部下の成長」両方を求めることは難しく、現実には成果を選ばないとやっていけない、と感じている方も多いのではないでしょうか。ここでは、仕事の成果と部下の成長という二つの目的の間で揺れ動く管理職の方の悩みを深掘りしていきます。
部下の仕事に対してつい口を出してしまう
部下の仕事ぶりを見ていると、「こうやればいいのに」「そこはあの人に聞けばすぐにわかるじゃないか」等、つい口を出してしまう時はありませんか?
「この仕事ならすぐ終わるだろう」と任せても、全然成果が上がってこないとイライラしますよね。これはつまり、管理職が早く答えを言いたがっている状態です。
部下の成長を思って、指導として口を挟みたくなる気持ちはわかりますが、部下の育成を促す自己効力感を高めるには、部下たちだけでやりきることが大切です。自己効力感というのは「これなら自分でもやれそう!挑戦してみよう!」という感覚です。
この感覚は自分だけでやりきった時の達成感や成功体験によってもたらされるものです。色々言いたい気持ちをぐっとこらえて、思い切って部下に任せてみてください。そのためには、ある程度時間にゆとりを持って仕事を任せることも必要かもしれません。
管理職として入った新しい職場が合わない
管理職として新しい職場に意気込んできたのに「部下からはやる気を感じられないし、やり方も考え方もなってない」とがっくりしてしまう、なんてことはありませんか?そこから、「職場改善に取り組もう!」とやる気を出してみても、一向に部下がまとまらず、空回りしてしまうこともあるかもしれません。
このような自分の価値観と大きく異なる職場に配属された時、どう立ち回って、チームを作っていけば良いのでしょうか。
まずは焦らずに、しばらく部下や職場全体を観察してみましょう。どのような特性・価値観を持っている人たちなのかを理解することが重要です。
社員への理解がないまま、自分の考えのみで職場改善を始めてしまうと「押しつけがましい」「裁量を奪われた」と感じさせることもあります。時間をかけて信頼感を積み重ねて、一緒に変えていくことが重要です。
まとめ
最近では、昔ながらのリーダーシップを発揮する管理職から、部下をサポートする管理職へと管理職に求められる役割が大きく変化してきました。
部下をサポートするリーダーとして力を発揮するには、日頃からのコミュニケーションや部下のモチベーションが上がるような方法での指導・育成が重要になってきます。
業務に忙しい日々の中で、部下の特性を理解し、それぞれに合った成長をもたらすことは容易ではありませんが、外部の研修や勉強会に参加することや1on1ミーティングを上手く活用することで、部下の育成を効率的に図ることができます。
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