高ストレス者向け医師面接指導とは?-産業医によるストレスチェック後の医師面接指導の流れとポイントを解説-
労働安全衛生法(※1)の改正によるストレスチェック実施義務化に伴いストレスチェックを実施しているものの「面接指導の申出率が低い」「医師面接指導で産業医が何をしているのか分からない」という人事の方のお悩みの声が少なくありません。
本記事ではストレスチェック後の面接指導をより効果的に実施する方法についてお伝えします。
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ストレスチェック後の産業医による面接指導
ストレスチェックにて高ストレス者と判定された従業員は医師による面接指導の対象となります。
医師による面接指導はストレスによる身体的疾患やメンタルヘルス不調を防ぐことを目的としています。そのため、従業員が面接指導を受けない場合、ストレスを軽減する手立てがとられず、従業員の心身の状態が悪化する危険性があります。
労働安全衛生法(※2)では、従業員から面接指導の申出があった場合、企業は面接指導を受けさせることが義務づけられています。また従業員が面接指導を受けるためには従業員自ら企業に申出を行う必要がです。
このような状況で、従業員は「自身が高ストレス者であることが会社に知られることで自身の評価に悪影響を及ぼすのではないか」という不安を抱え、面接指導の申出にハードルを感じることも少なくありません。
医師面接指導申出率が5%未満の企業が76.8%を占めています(※3)。
面接指導では何をするのか
医師からの面接指導では、ストレスチェックで測定される「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」という要素に加えて、
|・勤務状況(業務上のストレス)
|・心理的ストレス反応(抑うつ症状など)
|・その他心身の状況(過去の健診結果や現在の生活状況など)
について聞き取りが行われます。
ストレスチェックの結果と面接での聞き取り結果を医学的に評価し、ストレスが業務とどの程度関連しているか、関連している場合は業務負荷がどの程度かを評価します。
医師は評価の結果に基づき、セルフケアに関する助言や専門医療機関への受診勧奨を行います。また、企業に対しては面接指導の結果に基づいて就業上の措置に関する意見書を提出します。
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例
職場内環境がストレス要因となっている場合には、対象者のストレスの要因となる因子を特定します。新しい職場に異動した後に高ストレスと判定された場合には、職務に慣れていないこと、時間配分が上手くいかないことなどから時間外労働や休日労働が増加していること、通勤時間が長くなったことなどが相俟って高ストレスとなっている場合が考えられるため、一定期間、時間外労働や休日労働を制限することで高ストレス状況の改善を試みます。上司や同僚との人間関係やコミュニケーションの問題が発生しており、職務不適応に起因する高ストレス判定であると推察される場合には、人事担当者と産業医の連携で改善を図ることになります。
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医師面接指導に期待できること
ストレスチェック後に医師からの面接指導を受けることには、どのようなことが期待できるのでしょうか。
主なものとしては以下の3つが挙げられます。
従業員の状態を詳しく評価することができる
1点目は、従業員の状態を詳しく評価することができるというものです。
ストレスチェックは従業員本人が回答するため、本人が自覚している範囲のストレスしか反映されないという限界があります。
面接指導を行うことで、従業員本人の主観的な評価だけでなく、医師による客観的な評価を行うことができ、従業員がどのような状態にあるのかということをより詳しく知ることが出来ます。
面接指導を行うことで、より多面的な評価を行うことが可能になり、
実際の悩みやお困りごとに即した改善策を検討・提案することが出来ます。
従業員のセルフケアスキル向上が期待できる
2点目は、従業員のセルフケアスキル向上が期待できることです。
産業医面談では従業員本人の状態評価だけでなく、今後のメンタルヘルス不調を予防する為に助言や指導も行われます。その中の1つには、従業員のセルフケアのスキルを高めるものもあります。
セルフケアスキルを高める助言・指導が行われることで従業員自らがメンタルヘルス不調を予防し、休職や離職を未然に防ぐことが期待されます。
業務・職場環境の観点から検討することができる
3点目は、業務・職場環境の観点から検討することができることです。
高ストレス者の選定基準として「仕事のストレス要因」および「周囲のサポート」の点数が一定以上であることを盛り込むことが推奨されています。
したがって、高ストレス者と判定された従業員は業務や職場環境に対して何らかのストレスの要因を抱えていることになります。
職場内にストレス要因が存在する場合には、産業医との医師面接指導を行うことで職場での業務上の配慮の必要性を検討できるほか、業務外にストレス要因がある場合でも、職場や職務への影響を大きくしないよう職場内で実施可能な配慮を検討することが出来ます。
産業医と面談を行うことで、具体的にどのような点にストレスを感じているのかを確認することが出来ます。面談の結果、職場環境自体の改善が必要だと考えられる場合には、産業医と人事が連携して対策を講じることができます。
職場や業務についての理解がある産業医と面談を行うことで、意見書を通じて業務面や職場環境の改善(ラインケアの向上など)を促すことも可能です。
まとめ
ストレスチェック実施後の面接指導は、高ストレス者として選定された従業員本人だけでなく、職場環境全体にも良い効果をもたらすことが期待されます。
面接指導の機会を作るためには、面接指導を受けるように働きかけることも必要ですが、より良いストレスチェック体制に参画してくれる産業医の存在が欠かせません。
ストレスチェックを配って終わりにしないためにも、メンタルヘルスの対応を行える産業医を選任するところから始めてみてはいかがでしょうか。
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参考文献
※1:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル
※2:労働安全衛生法
※3:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて