増加する若手の早期離職と「リテンション・マネジメント」
労働人口の減少や人材流動性加速に伴い、若手社員の早期離職に問題意識を抱えている人事担当者の方は少なくありません。本記事では、若手社員の早期離職に注目し、早期離職が企業に与える影響や、離職要因を見つけるための方法を解説します。
目次[非表示]
- 1.「リテンション・マネジメント」とは
- 2.若手社員の早期離職の現状
- 2.1.早期離職の影響
- 2.2.若手が早期に離職する要因
- 3.若手の不本意な離職を防ぐために
- 4.まとめ
- 5.ピースマインドのサービスのご紹介
「リテンション・マネジメント」とは
リテンションとは、「維持・保持」を意味する単語で、人事領域においては、特に「離職防止」を指します。この離職防止のための施策をリテンション・マネジメントと呼び、近年ますます注目が高まっています。
労働人口の減少により人材の相対的な価値が高まり優秀な人材の確保が難しくなる中、多くの企業にとって早期離職に対するリテンション・マネジメントは重要な経営課題の一つであるといえます。
本記事では特に、若手社員の不本意な早期離職に対するリテンション・マネジメントに焦点を当てて解説します。
若手社員の早期離職の現状
厚生労働省の報告(※1)によれば、少子高齢化の進行により生産年齢人口(15〜65歳)が減少し、労働力不足が深刻化しています。2017年12月時点で、全産業における人手不足率が30%を超えていることが明らかになっています。
実際に、新卒採用が難しくなる中、採用後の定着率も年々下がっているなど早期離職に関するお悩みをお持ちの人事担当者の方は多いものと思います。
年代別の転職者数の推移調査によると、34歳以下の転職者数が最も多く(2016年時点で205万人)、転職者全体(約475万人)の43%を占めており、他の年代と大きく差をつけている(※1)ことがわかります。
これらのことから、離職、特に若手の早期離職に対するリテンション・マネジメントの重要性が高まっていることが明らかです。
早期離職の影響
早期離職が企業にもたらす悪影響として、主に以下の4つが考えられます。
人材の流失と採用コスト増 |
知識と経験の喪失 |
組織の不安定化 |
ブランドイメージへの影響 |
若手が早期に離職する要因
「働き方」の価値観の変化
近年、若手世代は従来のキャリアパスにとらわれず、フリーランスや副業、起業などの働き方を選択する傾向があります。このような選択肢の拡大は、従来の企業の雇用形態との不一致を引き起こし、若手社員が早期に離職する可能性を高めています。
また若手世代は、仕事だけでなくプライベートな時間や趣味、家族との時間などのワーク・ライフ・バランスを重視する傾向があります。そのため長時間労働や過度のストレスがかかる環境では、若手社員が早期に離職する傾向が強まります。
さらに、企業の価値観や文化が合わないと感じた場合、若手社員は早期に組織から離れる傾向があります。特に、柔軟性や自己表現の重視などの価値観において、違和感を抱くとされています。
以下、具体的な離職要因にはどのようなものがあるのか、厚生労働省のデータを元にお伝えします。
離職理由Top3からわかる離職に繋がる要素
2022年7月~2023年6月に転職した労働者を対象に行われたランキング調査の結果、20代の転職理由は、1位が「給与が低い・昇給が見込めない」で35.2%、2位が「人間関係が悪い・うまくいかない」で25.9%、3位が「社員を育てる環境がない」で23.5%でした。(※2)
この結果から、労働時間や労働条件といったワーク・ライフ・バランスが重視されること、職場の人間関係がストレス要因となって離職する割合が高いことが考えられます。
以上の結果から、早期離職の大きな要因となっているのが「職場環境」や「人間関係」だということはわかります。しかしいずれも様々な要因が複雑に絡み合うものであり、具体的に何が課題なのか、どのような要因が離職に影響しているのかを特定することは困難です。そのため具体的な離職要因を把握するためには、様々な分析手法を用いて解像度を高める必要があります。
若手の不本意な離職を防ぐために
早期離職を防ぐためには、普段から1on1をはじめとしたコミュニケーションや管理職のマネジメント、チームビルディングなどを行い、離職要因となりやすい職場環境・人間関係に注意を向けることが求められます。
加えて、効果的な防止施策策定に当たっては、まず正確に現状・原因を把握することが大切です。その際にストレスチェックや、後述するレゾナンス・インデックスなどの離職要因の分析指標を活用すると、現状の客観的な把握に役立ちます。
ストレスチェック結果からみる退職要因
以下はストレスチェックの結果から明らかとなったある企業における離職者の退職要因です。
離職の要因と考えられる項目は「職場のハラスメント」や「上司の支援」など、職場の人間関係に関するものが半数を占めていることがわかりました。この結果からも、職場の人間関係によるストレスが離職を促す要因の1つとなっていると考えることができます。
このような背景から、人間関係やコミュニケーションの課題解決を図るために多くの企業で「ハラスメント対策」や「インシビリティ・マネジメント研修」といった研修や様々な施策が実施されています。しかし、今ひとつ効果が表れない、そもそも自社の退職要因に即した対策ができているのかがわからないと、頭を抱えている人事担当者の方も多いと思います。
次章では、より正確に現状把握の測定手法の例について解説します。
長期就業意欲の測定−レゾナンス・インデックス−
近年、離職の原因がわからないまま突然離職するというケースも若年層を中心に増えています。隠れた離職の意思や離職に繋がりかねない環境要因に気づくために、長期就業意欲を定期的に測定することをお勧めします。ピースマインドでは、ストレスチェックのオプションとして、長期就業意欲を測定する尺度「レゾナンス・インデックス」を用いた調査を提供して、若手社員が長く働きたいと意欲が持てる職場づくりを支援しています。
レゾナンス・インデックスとは、ストレスチェック項目に追加いただくことで、35歳までの若手社員の長期就業意欲を予測し、離職リスクが高い組織の特定、改善施策の検討に活用することができます。
レゾナンス・インデックスの大きな特徴として、長期就業意欲を直接尋ねて測定しないことが挙げられます。具体的な測定内容として、職場環境や人間関係に関する項目から測定されたワークエンゲージメントや職場の一体感などと、既存のストレスチェックで測定された心理的ストレスの程度から、長期就業意欲を測定します。また測定結果から、離職リスクの高い部署の発見や改善すべき内容が把握できるので、具体的なリテンション・マネジメントの施策検討に役立ちます。
レゾナンス・インデックスの詳細は、こちらからご確認いただけます。
長期就業意欲を測る新尺度「レゾナンス・インデックス」を開発・提供開始 ~若手人材の定着に関する組織状態を把握し、 長く働きたいと意欲を持てる職場づくりを支援~
また近年の職場定着施策の1つとして、退職者予防コンサルティングがあります。ストレスチェック結果と退職者データの関連性を分析することで、退職の背後にある職場環境要因を詳細に把握することができます。
「退職者予防コンサルティング」の詳細については、こちらでご確認ください。
ストレスチェックから退職者の傾向を把握し社員の早期離職を予防する 「退職者予防コンサルティング」を開発・提供開始
まとめ
本記事では、若手の早期離職の現状や影響と、離職防止のための「リテンション・マネジメント」について解説しました。若手の不本意な早期離職の増加は、企業に悪影響を及ぼします。効果的に離職防止のための施策を行うために、ストレスチェックを活用した正確な原因把握に取り組むことが大切です。
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参考文献
※1 厚生労働省 「雇用を取り巻く環境と諸問題について」
※2 doda「転職理由ランキング【最新版】 みんなの本音を調査!」