【2025年度版】改めて整理する健康経営の顕彰制度と進め方
「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することを指します。企業理念に基づいて従業員の健康に投資することで、従業員の活力や生産性が向上し、組織全体の活性化が期待されます。これにより、最終的には企業の業績向上や株価の向上につながることが見込まれます。(※1)
➤「健康経営とは?」詳しく知りたい方はこちら
目次[非表示]
健康経営の顕彰制度
健康経営の顕彰制度は、優良な健康経営を実践する法人を「見える化」し、社会的な評価を受けられるようにすることを目的に、2016年度に経済産業省が創設した制度です。(※1)
健康経営優良法人の広まり
「健康経営」という考え方は2006年頃から普及し始め、今では多くの企業が経営方針の一つとして掲げるものとなりました。健康経営度調査への回答数・日程数ともに、増加の一途をたどっており、過去10年間での健康経営に対する関心の高まりが伺えます。(※1)
「健康経営優良法人」「ホワイト500」「ブライト500」の違いは?
健康経営優良法人に認定されるためには、基準に定められた項目に該当する取り組みを実施する必要があります。ただし、大規模法人部門と中小規模法人部門では、経営理念・方針と組織体制に関する認定基準が異なります。それぞれの部門の区分については、業種や従業員数に応じて以下の2つに分類されています。(※2)
部門の区分
業種 |
大規模法人部門 |
中小規模法人部門(いずれかに該当すること) |
|
従業員数 |
従業員数 |
資本金または出資金額 |
|
卸売業 |
101人以上 |
1人以上100人以下 |
1億円以下 |
小売業 |
51人以上 |
1人以上50人以下 |
5,000万円以下 |
サービス業 |
101人以上 |
1人以上100人以下 |
5,000万円以下 |
製造業その他 |
301人以上 |
1人以上300人以下 |
3億円以下 |
大規模法人部門で健康経営優良法人に認定された企業のうち、健康経営度調査結果の上位500法人が「ホワイト500」となり、中小規模法人部門では、同じく上位500法人が「ブライト500」となります。(※1)
さらに、「健康経営優良法人2025」では、中小規模法人部門において、ブライト500と通常認定の間に「ネクストブライト1000」という新たなカテゴリーが新設されました。これは、小規模法人の認定要件を一部緩和する特例として試験的に導入されたものです。(※4)
「健康経営銘柄」とは?
「健康経営銘柄」は、東京証券取引所に上場している企業を対象とした制度です。
この制度は、健康経営に優れた企業を選定し、長期的な視点からの企業価値の向上を重視する投資家にとって魅力ある企業として紹介をすることで、企業による健康経営の取り組みを促進することを目的としています。
この制度では、2014年度から「健康経営」を牽引する「アンバサダー」として、選りすぐりの健康経営企業を選定しています。選定は原則として1業種1社のため、非常に狭き門と言えます。(※3)
【2024年度最新版】「健康経営優良法人認定制度」で求められていること
健康経営に対する関心が高まる中、その考え方や認定に際して求められる事項も変化しています。2025年に向けた健康経営優良法人認定制度の改定では、「健康経営の可視化と質の向上」「新たなマーケットの創出」「健康経営の社会への浸透・定着」の3つが大きな変更点です。(※4)
健康経営の可視化と質の向上
健康経営が持続的に効果を生むためには、取組の意義や質の向上への意識を常に持ち続けることが重要です。そのため、経営層の関与を評価するなど、配点バランスが見直されました。また、自社の状況を把握し、結果や成果を意識した取組を推進するため、プロセスの多寡ではなくアウトプット指標への配点が高まりました。
さらに、個人の健康状態や生活習慣の可視化を通じて健康支援を充実させるために、適切にデータ管理されたPHR(Personal Health Record)活用に向けた環境整備状況についての設問が新設されました。
新たなマーケットの創出
健康経営の国際的な普及促進を検討するにあたり、海外法人を含めた健康経営の推進状況をより具体的に把握することを目的に、注力している国とその国での健康経営の実施方針についての設問がアンケートに追加されました。
健康経営の社会への浸透・定着
昨年度の調査結果では、仕事と介護の両立支援が十分に進んでいないことが明らかになりました。また、今年3月に経済産業省が公表した「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を踏まえ、大規模については育児と分離して、仕事と介護に関する設問が新設されました。
さらに、常時使用しない非正社員等を対象に含める企業の取組が評価されます。また、従業員数の少ない法人に対しては、実態に合わせた健康経営の推進を促すため、小規模法人の認定要件を一部緩和する特例が試験的に導入されました。
今後は、実績値の測定方法の開示だけでなく、数値良化に向けた具体的なアクションの質・量とその成果がより重視されるでしょう。
改めて整理する健康経営の進め方
健康経営に求められることは、無形の「人的資本」に投資し、その成果を将来の企業価値に転換することです。企業のより良い未来のためには、「人」がもつ創造力や生産力といった無形のエネルギーを育み、それを企業の成長に結びつけることが重要です。健康経営を進める際には、以下図の下から順に取り組むことが大切です。(※5)
まず、労働基準法や労働安全衛生法等の労働法を遵守することが、従業員の健康を守るための基本的な取り組みの判断基準となります。これは、健康経営の土台となる重要な部分であり、ここからスタートする必要があります。
次に、心と身体の健康づくりは企業の生産性に直結する部分です。生産性向上のためにIT化への投資が必要であるように、従業員の健康への投資は、従業員一人ひとりの労働の質を向上させることにつながります。
そして、従業員の健康が維持・向上することで、「働きやすさ」を改善するステップに進むことができます。働きやすさを改善することで、従業員は「働きがい」や「生きがい」を感じながら働くことができるようになります。また、企業としても、成長に貢献する新しいアイデアが生まれる土壌が培われ、投資へのリターンを感じることができるでしょう。
➤各項目について詳しく知りたい方はこちら
まとめ
本記事では、最新の健康経営優良法人認定制度や健康経営の深化に関する情報をもとに、健康経営の重要性や進め方について整理してお伝えしました。健康経営の推進を通じて、従業員と経営層の双方にとって働きやすい組織を目指しましょう。
▷コラム【企業が取り組むべき女性のメンタルヘルス対策とは?女性特有の症状と対応について解説】
▷コラム【最新版|DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは~企業の取り組み事例をご紹介~】
▷サービス導入事例【丸井グループ様:「自ら手を挙げる」企業風土を醸成し、ウェルネス経営のリーディングカンパニーに】
参考資料
※1 経済産業省,『健康経営の推進について(令和4年6月)』
※2 経済産業省,『健康経営優良法人申請区分』
※3 経済産業省,健康経営銘柄
※4 経済産業省,「健康経営銘柄2025」及び「健康経営優良法人2025」の申請受付を開始しました
※5 NPO法人健康経営研究会 健康長寿産業連合会 健康経営会議実行委員会,『未来を築く、健康経営 -深化版:これからの健康経営の考え方について- 令和3年7月19日』