心理的安全性とチームの生産性はどう関係する?事例を元に解説
心理的安全性は、1965年に組織心理学者のエドガー・H・シャインと経営学者のウォーレン・G・ベニスによって提唱された概念です。チームにおいて、自分の意見を伝えても、他のメンバーとの対人関係が悪くなる心配をしなくても良い信念が共有されている状態を指します。
本記事では、心理的安全性と生産性向上の関係について解説します。
心理的安全性について詳しく知りたい方はこちら
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心理的安全性を高めることが生産性向上に繋がるのか
-ぬるま湯組織と心理的安全性の違い-
心理的安全性を高めることを目標に、コミュニケーションを活性化させた結果、「ぬるま湯組織」と呼ばれるような、人間関係は良好なものの、目標達成は出来ない、生産性の低い組織を生み出すことに繋がるのではないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。
「ぬるま湯組織」では、対立や失敗を恐れ、業務や成長への意識が低いため、「自分が声を上げても上げなくても変わらない」と現状維持の姿勢を取る傾向が見受けられます。そのため、職場や業務に違和感を抱いても、改善行動を起こしづらくなり、生産性が低下する可能性があります。
心理的安全性を高める真の目的は、職場や業務に課題感がある際、対立を恐れず自由に意見交換ができる環境を構築することです。そのためには、単に発言しやすいだけでなく、メンバー全員が目標達成に向けて協力し、課題に直面した際には、他のメンバーに頼ることもできる自律的な行動が求められます。
「会社に伝えないまま離職」の背景にある心理的安全性の課題
若手を中心に、「会社に伝えないまま離職」するケースが増えています。
離職には様々な経緯がありますが、ここでは2つのケースをご紹介します。
事例① 「キャリアに不安がある」ことを伝えられない
「この職場で5年後活躍しているイメージが湧かない」といった悩みがきっかけの場合、事前に相談を受けていれば解決できることもあります。
例えば、「本当はこのようなプロジェクトに関わってみたい。希望が叶わないなら転職も考えている」といった悩みを打ち明けてもらえたら、相談内容に関連する別のプロジェクトへアサイン先を変更するといった対応も可能です。
しかし、日頃のコミュニケーションが希薄な場合は、上司に転職の相談をすることはハードルが高くなります。
事例② 働きづらさから「自分の適性に合わない」と感じる
「何となく仕事がしづらい」「適性に合った仕事ではない」と感じている場合は、「分からないことが聞けない」ことで悩みを抱えるケースが多く見られます。
分からないことを聞いた際に、ぞんざいな態度を取られたり、「マニュアルに書いてあるでしょう」「まず自分で調べましたか?」と返答されることで、「自分に非がある」と感じたり、「もう直接聞くのはやめよう」「なるべく話したくない」と感じることがあります。このようなコミュニケーションが日常的に行われることで、人に聞くことや頼ることが難しくなり、スキルの習得や業務の遂行に遅れが生じることがあります。
1on1で心理的安全性を高める-改善事例から分かるポイント-
どちらの事例にも共通する課題は、上司とのつながりやコミュニケーションが希薄である点です。上司に話しかけるハードルが高くなる要因は、心理的な距離感の遠さと言えるでしょう。心理的安全性を高める第1歩は、上司と部下の間の心理的な距離感を近づけることです。具体的には、定期的な1on1を通して、日常的に悩みを相談できる関係性を構築することが効果的です。
1on1で心理的安全性が向上した事例
マネジメントに課題を感じている組織で、上司・部下間の信頼関係構築を目的に定期的な1on1を実施した事例です。1on1開始当初は、上司が「何か困っていることはありますか。」と質問しても、部下からはあまり発言がありませんでした。その後も1on1を継続し、半年ほど経過したある日に、「今まで言えなかったのですが、」と本人から本音が語られるようになったという事例があります。この場合、半年ほど継続したことによって、部下が「話しても良いかな」と思える瞬間が訪れたと言えるでしょう。また、1on1を継続したことによって会議における社員の発言回数が増えるといった効果も生まれました。
1on1のポイント
1on1を始めたからと言って、すぐに心理的安全性が向上することはありません。話す機会を設けることで、徐々に心理的ハードルが下がり、少しずつ本音を話すようになります。この章では1on1を進める上でのポイントを3つお伝えします。
「『大丈夫です』で話が途絶えてしまう」
「何か困っていることはありますか」と尋ねても、「大丈夫です」と言われて話が途切れてしまう場合には、聞き方を変えてみることが有効です。「体調は大丈夫ですか?」のように、YES、NOで回答できるクローズドクエスチョンではなく、「最近任せている仕事だと、どれが面白いですか?」「その中でどんなことが大変ですか?」のように、YES、NOでは回答できないオープンクエスチョンを活用することで、社員の本音を引き出しやすくなります。
「悩みの有無を聞いても、『何もない』と答える」
「最近悩んでいることがあればなんでも言ってほしい」と伝えるものの、社員からはあまり回答が得られないこともあるでしょう。実際に悩みが全くないパターンもありますが、「話しても解決に繋がるか分からない」といった気持ちから話しづらさを感じている可能性もあります。この場合、「悩みを言えば解決のために一緒に考えてくれる」と思ってもらうことが重要です。例えば、社員が離職をする理由には「仕事が合わない」「今後のキャリアが不安」のように、キャリア形成に悩みを抱えるケースが多くあります。そのような悩みを聞き出すことができたら、相談先にぴったりな人を紹介したり、キャリアプランの相談に乗ったりとすぐに対応することで、安心感や信頼感が生まれ、また相談しやすくなります。
「1on1が有効な施策なのか、やり方は合っているのか不安になる」
先にも述べた通り、1on1が軌道に乗るまでには時間がかかることもあります。
社員に変化が訪れるまでの間は、他のマネージャー層の社員と1on1の状況を共有し、1on1を上手く活用できているチームからヒントを得てみるのもおすすめです。
まとめ:心理的安全性は急には高くならない、継続して取り組むことが大切
自分の気持ちを伝えず、黙々と仕事をし、ある日急に離職を決める…そういった方が増えています。
自分の気持ちや葛藤を伝えるアイテムとして、1on1等を活用してもらい、「言えば叶うこともある」を見せていくと、心理的安全性の高い職場となり、離職率低下やチームワーク向上に繋げることができます。
ただし、心理的安全性はすぐに高くなるものではありません。継続して取り組み、心理的安全性の向上を目指しましょう。
心理的安全性を高めるピースマインドの研修
ピースマインドでは心理的安全性を高める研修をご用意しています。
インシビリティ・マネジメント研修
インシビリティ・マネジメント研修では、職場風土や対人関係に悪影響を及ぼすような
ギスギスしたコミュニケーションの改善を支援します。
インシビリティ(incivility:礼節の欠如)とは、相手を傷つけようとする積極的意志は曖昧なものの、他人に対する思いやりや配慮を欠いた失礼で無作法な言動のことです。放置しておくと職場がギスギスした風土になり、職場のいじめやハラスメントにエスカレートしたり、社員のメンタルヘルス悪化や生産性の低下を招くリスクがあります。
知識を学ぶだけではなく、実践的なロールプレイを通じてインシビリティでない行動パターンを獲得することができます。
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▼ インシビリティに関する記事はこちら
リスペクト・トレーニング
リスペクト・トレーニングは、世界最大級の動画配信サービスNetflixが開発したワークショップ型のトレーニングです。
クオリティの高い作品を手掛けるにあたり、スタッフやキャストが安心して働くことができ、作品づくりに集中できることが大切であるという考えのもと、作品の制作に携わるすべての人が「リスペクト」を共通認識として持つことを目的としています。
同じ職場で働くすべての人が相互に「リスペクト」のフィルターを通して接する「思考の筋力」を鍛えることで、心理的安全性が高まり、誰もが安心して能力を発揮できる職場環境づくりに貢献します。
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