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最新版|DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは~企業の取り組み事例をご紹介~

近年、「ダイバーシティ・インクルージョン(以下D&I)」や「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(以下DE&I)」の概念が注目されています。

最近では、令和5年6月23日に性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解増進に関する法律が公布・施行されました。罰則規定はなく、努力義務ではありますが、日本社会全体でDE&Iの取り組みを進めていく大きな追い風となっています。また、経団連では「企業行動憲章」で人権や多様性の尊重を掲げ、その手引書のなかで性的マイノリティーに配慮した就業環境・制度整備を進めると定めています。

企業としては、労働人口の減少や、終身雇用制を前提とした従来の人事管理の刷新といった変化に対応するためにも、どのような人材でも能力を最大限発揮できやりがいを感じられる環境整えておく必要があるといえるでしょう。

本記事では、DE&Iの基礎知識と、企業の取り組み事例を5分でお伝えします。


目次[非表示]

  1. 1.D&IとDE&Iの違いとは
    1. 1.1.D&Iとは「多様性を受容する」ための取り組みである
    2. 1.2.DE&Iとは「エクイティ(公平性)」の考え方が加わったもの
    3. 1.3.組織におけるダイバーシティの課題とは?
  2. 2.D&Iへの関心は高いものの、エクイティの認知度、施策実施の割合は低い現状
  3. 3.DE&Iを推進するメリットとは
    1. 3.1.データからわかるDE&Iを推進するメリット
    2. 3.2.アンケートからわかるDE&I推進企業が感じるメリット
  4. 4.DE&I推進取り組みの事例を3つ紹介!
    1. 4.1.取り組み事例① 経営戦略への組み込み|ダイバーシティ・ポリシーの明確化
    2. 4.2.取り組み事例②推進体制の構築 |事業部門との連携
    3. 4.3.取り組み事例③ 全社的な環境・ルールの整備 |人事制度の見直し
  5. 5.まとめ



D&IとDE&Iの違いとは

D&Iとは「多様性を受容する」ための取り組みである

​​​​​ダイバーシティ(多様性)とは性別、年齢、国籍などの「目に見える多様性」と文化、価値観、信条、パーソナリティなどの「目に見えない内面的な多様性」の両方を指します。

インクルージョンは「受容、包括」という意味ですので、D&Iとは「多様性を受容する」ことです。

D&Iの推進とは社員それぞれの多様性をお互いが受け入れ、多様な人材が活躍できる組織を作っていく取り組みといえます。



DE&Iとは「エクイティ(公平性)」の考え方が加わったもの

DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは、従来のD&Iの考え方に「Equity(公平性)」を加えたもので、D&Iから一歩進んだ概念といえるでしょう。

公平性とは「様々な情報や機会へのアクセスを全ての人に公平に保証すること」を意味します。私たちの社会には、差別をなくし機会を平等に提供するだけでは解決できない不平等があります。誰もが同じスタートラインに立っているわけではない状況では、同じ機会を平等に提供しても、不平等は解決されず、分断や格差を定着させてしまう可能性があります。そのため、一人ひとりの違いや特性に配慮し、公平になる環境を整備することで、多様性と包括性のある組織にしていこうという考え方です。




組織におけるダイバーシティの課題とは?

性別、国籍、年齢等のそれぞれの属性を持った方が仕事をしていく上での課題は以下のものが挙げられます(※1)。



ライフステージや状況によって、それぞれ別の課題に直面することがわかります。

外見から識別可能な属性のみならず、「価値観」「信条」「職歴」「スキル」「パーソナリティ」「嗜好」「文化的背景」といった内面上の属性も多様性として認識することが必要です。

これら一つ一つに対して組織全体として十分に配慮できる仕組み作りが求められます。


D&Iへの関心は高いものの、エクイティの認知度、施策実施の割合は低い現状

『日本の人事部 人事白書2022(※2)』レポートから、およそ7割の企業がD&Iに対して重要視していることがわかりました。



しかし、『日本の人事部 人事白書2023(※3)』レポートによると、DE&IのE「エクイティ」についての認知度は非常に低く、D&Iへの関心の高さとは異なり、「初めて聞いた」割合が約半数に上り、「ほとんど正確に意味を理解していた」割合は1割にとどまっています。



このように多くの企業がD&Iに対して課題意識がある一方、「エクイティ」という概念に関する認知度はかなり低く、回答企業の半数ほどが「何をしたらよいかわからない」「社内の理解がない」「人手が足りない」といった理由からD&I推進に取り組めていない現状があります。




DE&Iを推進するメリットとは

DE&Iへの関心が高まる一方で、多くの企業が具体的な施策の実施に取り組めていない現状があります。「なぜ今DE&Iに取り組む必要があるのか」実際にDE&I推進によるメリットをお伝えします。


データからわかるDE&Iを推進するメリット

マッキンゼー&カンパニー社のレポート(※4)からはダイバーシティ経営が企業のパフォーマンスに好影響を与えることがから明らかになっています。多様なバックグラウンドを有する⼈が集まることで、安定性のみならず、成⻑機会を得られることが要因といえるでしょう。



また、ボストン・コンサルティング・グループとミュンヘン⼯科⼤学が欧州企業98社を対象に⾏ったダイバーシティとイノベーションに関する調査「The Mix That Matters」(※5)からは、⼥性社員が増えただけではイノベーションにつながらないが、管理職で⼥性20%以上なるイノベーションからの収⼊明確増え始め、⼥性管理職40%を超える企業集団直近の3年間で、売上約34%イノベーティブな製品/サービスから⽣み出されていることがわかっています。


\女性活躍の詳しい内容については以下の記事をチェック!/

  データで読み解く|女性活躍推進と職場のウェルビーイングの関係を解説! 本記事では、前半部分で女性活躍推進がもたらす効果をエビデンスを元に紹介し、施策を進める上での具体的なポイントについて解説します。記事後半では、女性活躍を妨げる課題の解決策をダイバーシティ・インクルージョンの観点から説明します。 ピースマインド株式会社


アンケートからわかるDE&I推進企業が感じるメリット

さらに、『日本の人事部 人事白書2022(※2)』の調査によると、DE&I推進を実際に行い、多様な人材が活躍している組織では、業務効率化生産性向上を実感する企業が半数にものぼっていました。

多様な人材を採用することで人材不足の改善につながったり、多様性を認めることで社員のエンゲージメント向上にも有効であることがわかります。




DE&I推進取り組みの事例を3つ紹介!

DE&Iはどの企業にとっても取り入れるメリットの大きい取り組みであるといえるでしょう。

しかし、「必要性は感じているが、何をしたらいいかわからない」と感じる人事の方も多いのではないでしょうか。

ここでは経済産業省が策定した「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン(※6)」を参考にDE&I推進取り組みの事例を3つ紹介します。


取り組み事例① 経営戦略への組み込み|ダイバーシティ・ポリシーの明確化

DE&I推進の第一歩として、ダイバーシティは経営戦略に不可欠であることを経営トップがダイバーシティ・ポリシーとして策定することが挙げられます。

ダイバーシティ・ポリシーとは「ダイバーシティを通じて、中長期的にどのような企業価値向上を目指す」という方針のことです。

例えば、「企業の成長の源は人材にあり、性別や国籍、人種に関係なく、能力のある人材がその能力を十分に発揮し、活躍できる環境が必要であること」を経営トップの宣言として明確にします。

ただ、宣言をするだけではなく、ダイバーシティと目指す企業価値の関係に対して、業績・生産性に関する指標と連関させることが有効です。



取り組み事例②推進体制の構築 |事業部門との連携

2つ目に紹介するのは、推進体制の構築についての取り組みです。

ダイバーシティ・ポリシーを経営戦略に落とし込んだ次のステップとして、ダイバーシティの取り組みを各事業部門に対して継続的に促す必要があります。

その取り組み例として、ダイバーシティ推進部門と各事業部門の連携が挙げられます。

全部門の担当役員が集まるダイバーシティ推進委員会を設置し、四半期に1度、各部門の部長等と議論していきます。

委員会前に、ダイバーシティ推進部門が各事業部門の部長等から、現場の意見を吸い上げることも欠かせないポイントです。


取り組み事例③ 全社的な環境・ルールの整備 |人事制度の見直し

年齢、性別等の属性に関わらず活躍できる人事制度の見直しをすることも重要な取り組みです。 

特定の属性に有利な仕組みとなるような年功序列的な人事システムなどを見直し、より成果に基づいた評価や報酬体系を構築します。

ある取り組みでは、多様な働き方が可能となるよう、終身雇用を前提とし長期的に育成する「メンバーシップ型」と、職務内容を明確にし専門性を重視する「ジョブ型」をハイブリッドした雇用システムへと転換を図りました。

ダイバーシティポリシーの観点とそれぞれの組織文化や状況をすり合わせながら人事制度の見直しをおこなっていくとよいでしょう。

以上、3つの取り組み事例を紹介してきました。

経営陣のコミットメントや現場の意見を吸い上げた上で、体制を見直していくことが重要です。1つの領域だけではなく、各部署が協力しながら全社的に取り組みを進めることによってはじめて効果が発揮されます。


また、厚生労働省のサイトでは、ダイバーシティ推進の目指す姿や指針をコンパスの形で整理したダイバーシティ・コンパスが公開されています。DE&Iに関する施策を考える際に参考にしてみてはいかがでしょうか。


まとめ

この記事では、DE&Iの定義やメリットを振り返りました。

ダイバーシティを通じて「中長期的にどのような企業価値向上を目指すのか」という観点からDE&I推進の取り組みを実践していくことをお勧めします。

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参考資料

※1 経済産業省 競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ 資料6 2.0)の 在り方に関する検討会 第1回
※2 日本の人事部 人事白書2022
※3 日本の人事部 人事白書2023
※4 McKinsey&Company,May 19, 2020,Diversity wins: How inclusion matters
※5 Rocío Lorenzo, Nicole Voigt, Karin Schetelig, Annika Zawadzki, Isabelle Welpe, and Prisca Brosi,April 26, 2017,The Mix That Matters Innovation Through Diversity
※6 経済産業省 ダイバーシティ 2.0 行動ガイドライン 平成 29 年 3 月 平成 30 年 6 月改訂

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ピースマインド株式会社 エンプロイーサクセス部 部長 EAPスーパーバイザー 公認心理師 臨床心理士 国際EAPコンサルタント(CEAP)  社団法人日本産業カウンセラー協会 シニア産業カウンセラー 博士後期課程在学中より、教育相談所において教育相談に従事。スクールカウンセラーとしても公立小・中学校複数校にて勤務する。 その後、外部EAP機関にて、働く人々へのカウンセリング業務に携わる。 現在、ピースマインド株式会社にて、EAPスーパーバイザーとして臨床、育成に携わる一方、人事担当者及び管理職への個別のコンサルテーションにも従事する。

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