アニバーサリー反応とは?すぐに取り入れられる対処法をご紹介
「アニバーサリー反応」という言葉を聞いたことはありますか?
災害や事件・事故、親しい人との死別など、個人が辛い思いを抱える出来事の影響で、心身に不調をきたすことがあります。このような反応は誰にでも起こり得ることです。
そのため、個人の問題に寄り添いサポートできる職場環境づくり、個人でできる対処法の周知をし、アニバーサリー反応へのアプローチを把握しておくことが大切です。
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ご存じですか?アニバーサリー反応とは
アニバーサリー反応とは、大きな出来事、辛い出来事から1か月、1年、10年などの節目の時期に、心身の状態が不安定になることを指します。「記念日反応」とも呼ばれています。
例えば、大災害や事件・事故、身近な方との死別といった出来事によって引き起こされます。出来事が起こった日付と一緒にその体験が記憶されるため、意識していなくても、その日付が近づくにつれて心身に反応が生じます。
アニバーサリー反応の具体例として、次のような反応が挙げられます。
・その出来事について思い出したり夢に見たりする
・その出来事が起こった時の感情や身体反応、考えがよみがえってくる
・悲しみや喪失感が強くなる
・怖い気持ちや不安な気持ちが強くなる
・いらいらや怒り、罪悪感等の感情が強くなる
・意欲の減退や、集中力の低下
このようなアニバーサリー反応は異常な反応ではなく、自然なものと考えられています。反応が生じた際に、どのように落ち着かせるか知っておくことが重要です。
相談しやすく柔軟な職場環境づくりで、従業員をサポート
具体的にどのように対処することができるのでしょうか。職場ができるサポート、従業員個人ができるケアの2つの観点からのアプローチが考えられます。
職場環境では、従業員の様子を気にかけ、気持ちに寄り添う姿勢が大切です。
例えば、以下の対処法を取ることができます。
・コミュニケーションや態度を工夫し話しやすい雰囲気をつくる
安心して気軽に話せる雰囲気をつくるために、普段から声かけをするようにしましょう。様子が普段と違い心配に思ったら、周囲の方は声をかけるようにしましょう。
声をかけたとしても、「大丈夫です」と返されることもあるでしょう。その場合は、無理に話を聞き出そうとせず、見守りを続けるようにしましょう。心配な状態が続くようであれば、話を聴くための時間をきちんととり、改めて声をかけてみましょう。
また、ご本人とのコミュニケーションでは傾聴の姿勢を意識することも大切です。
「何かあったらいつでも伝えてきてください」というメッセージを伝え、話に耳を傾ける姿勢があることを示します。
ご本人が話を始めてくれたら、気持ちを丁寧に受け止めながら話を聴きましょう。不安な気持ちが現れていたら、気持ちを丁寧に受け止め、共感的に聴くように心がけましょう。自責感を抱えていらっしゃる方には、「あなたのせいではないですよ」というメッセージを明確に伝えることが大切です。
傾聴については、こちらの記事で詳しく解説しています。
・柔軟に仕事を調節する
場合によっては、休養を勧めることも必要です。例えば休日を挟んで1~2日休みをとり、少し長めにゆっくりすることを勧めてみましょう。
一方で、普段通り仕事をしていたほうが楽に過ごせるという方もいらっしゃいます。その場合は、仕事の量や質を調節して、過度の負担がかからないようにしましょう。多くのタスクを課したり、新しいことへのチャレンジを求めたりすることはなるべく避け、慣れた仕事やルーティンワークで進む仕事などを任せると良いでしょう。
・専門機関の利用を促す、情報を提供する
気持ちの面に加え、「睡眠がとれていない」「食欲がない」など、身体面に不調が現れている場合も考えられます。こうした不調を抱えている方には、相談窓口など、ケアにつながるための情報を伝えましょう。専門家につなぐことで、従業員はカウンセリングを通して、メンタル不調の原因を整理し、症状を改善していくことができます。
一方で、不調を抱えている方の多くは、自分なりの対処方法を持っていらっしゃいます。ご本人の対処方法を否定しないこと、その方法が有効であれば支持することも重要です。対処方法がわからず、困っているようであれば、有用な情報を共有し、一緒に方法を考えましょう。
ピースマインドでは、2011年の東日本大震災後、被災地で過ごす方々や支援する方々のメンタルヘルスケアの一助になることを願い、冊子『災害時のこころのケア』を配布しました。本冊子では、災害後のメンタルケア方法や、様々なお悩みに関する無料相談窓口を紹介しています。
メンタル不調を抱える方のサポートにぜひご活用ください。
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セルフケアを取り入れて気分を和らげる
セルフケアを取り入れよう
厚生労働省では、セルフケアとは「働く人が自らのストレスに気づき、予防対処し、また事業者はそれを支援すること」を指します(※1)。
自身でセルフケアを行うことでメンタル不調を招きにくくなるため、アニバーサリー反応へ対処するには、社員が自分自身でセルフケアを行うことが必要になります。
セルフケアは個人が取り組むことですが、企業も従業員にセルフケアの効果と方法について知識を広め、セルフケアを促すことで、従業員のメンタル不調の予防・ケアにつながります。
以下のことを生活に取り入れ、日頃から自分の気持ちの揺れに気づけるようにしておくことで、アニバーサリー反応の発生に気づき、自分を落ち着かせることができるでしょう。
・できるだけ日常のリズムを刻む
就寝・起床や食事など、普段の生活リズムを意識して過ごしましょう。
・気持ちを外に出す
安心できる相手に、無理のない範囲で今感じている気持ちを話してみましょう。悲しいこと、つらいこと、不安や怒りなどの思いを話すことは、トラウマティックな体験から回復する手立ての一つです。
また、誰かに話すことが難しければ、出来事が起きたときの気持ちを語り継ぐ語り部の活動や、気持ちを文章にすることなど、自分の気持ちを表現することも心身の状態回復につながります。
・自分自身の気持ちに寄り添う
「喪に服す」という発想があるように、お祭りなどの「楽しいことを控えなければならない」とお考えの方もいらっしゃるかと思います。楽しみたい気持ちがあるのならば、我慢をせずに楽しんでみましょう。楽しむことも、回復の手立てとなります。
反対に、イベントなどを「楽しまなければならない」とお考えの方もいらっしゃると思います。楽しめないと感じるのであれば、無理に楽しもうとせず、自然と楽しめる日が来るのを待ちましょう。
今すぐできる!不安な気持ちやストレスを和らげる方法
不安な気持ちやストレスを和らげ、リラックスするための方法を2つご紹介します。
・腹式呼吸
ゆっくりと呼吸を整えることで、不安や緊張を和らげる呼吸法です。
息を吐くときには、吸うときの倍くらいの時間をかけて、ゆっくりと吐きます。数回繰り返し、気持ちが落ち着くのを感じましょう。
・筋弛緩法
筋肉に力を入れた後に緩めることで、心身をリラックスさせる方法です。
筋弛緩法を試すときには、力の入っている間隔、力の抜けた感覚に意識を向けてみましょう。脱力した際に感じる「力が抜けた」感覚が、リラックスした状態です。2~3回繰り返すと、よりリラックスした感じを得られます。
これらの方法は、アニバーサリー反応に対処するためのセルフケアだけでなく、日常で感じるストレスへの対処法としても効果的です。不安やストレスを感じたときに手軽に試せる方法なので、普段の生活に取り入れてみましょう。
まとめ
辛い出来事から1か月、1年、10年などの節目の時期に心身の状態が不安定になるアニバーサリー反応は、人間にとって自然な反応と考えられています。
職場で辛そうな方に気づいたら、ご本人の考えや気持ちを尊重しながら、安心して話せる雰囲気づくりや業務の柔軟な対応をして、サポートする姿勢を心がけましょう。
企業の担当者や従業員自身による問題解決が難しい場合は、対策の一つとして、EAP(従業員支援プログラム)をご利用されることをお勧めいたします。心理の専門家が皆様の気持ちの整理に伴走し、ストレスへのコーピング(対処法)のヒントをみつけるお手伝いをさせていただくこともできます。無理をせず、小さなことからはじめてみてください。
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