職場のメンタルケアはできる!認知行動療法を徹底解説
テレワークを推進する企業が増える中、在宅ではたらく労働者のうち半数以上が同僚や部下、上司とのコミュニケーションが取りにくいと感じています(※1)。
コミュニケーションを取りにくい環境では、社員のストレスが溜まりすいため、企業にはテレワークに対応したメンタルサポートが求められています。
今回の記事では、テレワーク下でも実践できるセルフケアとして、認知行動療法について詳しく解説していきます。
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目次[非表示]
- 1.認知行動療法の基本的な考え方
- 1.1.自身を客観視し考え方のクセを理解する
- 1.2.自動思考を見逃さない
- 2.世界の医療現場で認められるほどの治療効果
- 2.1.うつ病治療のために開発された心理療法
- 2.2.身体の内側から根本的解決を目指す
- 3.今日から実践できる認知行動療法4選
- 3.1.認知の歪みに気づく
- 3.2.セルフトークで自分に寄り添う
- 3.3.マインドフルネスで自分の思考に気づく
- 3.4.行動活性化で偏った思考を行動から変える
- 4.認知行動療法でテレワークでも活力ある職場づくりを
- 5.ピースマインドのメンタルヘルス予防サービス
- 6.参考文献
認知行動療法の基本的な考え方
認知行動療法とは、臨床現場で用いられている心理療法です。考え方を応用すれば普段の生活にも手軽に取り入れることができ、近年注目を浴びています。
認知行動療法を正しく活用するためには、まずは考え方や構造を理解することが大切です。以下で詳しく解説していきます。
自身を客観視し考え方のクセを理解する
認知行動療法を実施する際、最初のステップとなるのは、自身が感じているストレスを正確に理解することです。
ここでの正確さとは、どのような自分であったとしても、まずは否定も肯定もせずに向き合うことを指します。つまり、決して「悲観的な考え方だからダメ」「楽観的だから良い」ということではなく、いかに自分を客観的に分析し、理解できるかを意識することが大切になるのです。
認知行動療法では私たちの普段の状態を、環境、感情(気分)、身体反応、行動、認知(思考)に分解し、それらは常に相互に関係し合っていると考えます。
・環境
「出来事・状況」とも言い換えられます。例えば「同じミスを繰り返してしまった」「今月の売り上げ目標を達成できなかった」など、様々なシチュエーションがあるでしょう。
・認知(思考)
感情や気分を決定する、思考パターンのことです。例えば「こんな会社は嫌だ」と認知することで「辛い」という感情が生まれます。
・身体反応
「汗が出てくる」「目眩がする」「胃が痛む」など、自身でコントロールできない症状のことです。
・行動
「自身は何をしたか」を表します。「会社を休んだ」「Aさんに代わりに会議に出てもらった」「ミスが増えた」などが該当します。
・感情(気分)
「嫌だな」「不安だ」「後悔」「憂鬱だ」など、一言で表せる気持ちのことです。
ストレスを感じた際は、まずこれら5つの要素に分けて自身の状態を記録することで、状況を落ち着いて俯瞰することができます。
また、ストレスを感じた際だけでなく、気持ちが上向きの際にも記録をしておくことで、自身がどのような時に気持ちよく過ごせるのかも把握できます。
最初はストレスを感じた時だけ、慣れてきたら常時記録する、と段階的に挑戦してみても良いでしょう。記録し、自身の状態を把握することが大切なので、記録シートは以下のような簡易的なもので構いません。最近ではスマホアプリで記録できるものもあります。
自動思考を見逃さない
記録シートにおいて、特に焦点を当てたいポイントは認知の箇所です。
認知は自動思考とも呼ばれており、私たちの頭の中を、半自動的に流れているとされています。
自動思考によって身体反応や感情、行動が影響を受け、結果的にストレス症状として現れることや、ストレスを抱えている際には自動思考が偏りやすいと考えられていることから、認知行動療法では認知の仕方を変えることで、ストレス状態を脱する方法が基礎となっています。よって、ストレス状態を記録した後は認知の欄に目を向け、自身の思考パターンを把握・理解することが重要です。
ただし、自動思考はこれまでの経験によって習慣化された思考であり、簡単には変化しません。臨床の現場では、3年ほどかけて取り組むこともあります。
実生活においても、自身の自動思考がすぐに変化するとは思わず、地道に、ゆっくりと変えていくつもりで取り組むと良いでしょう。そのためにも、まずは否定も肯定もせず、あるがままの思考パターンを理解することが大切になります。
思考パターンを理解した後は、今後どのような考え方をすれば上手くいくかを検討し、効果を確認していきます。
以上の考えをもとにメンタルヘルス改善を図る方法が、認知行動療法といわれています。
世界の医療現場で認められるほどの治療効果
近年、認知行動療法が注目されている理由は、多くの研究によってその効果が認められていることも関係しています。以下では、認知行動療法がなぜ効果的かを解説します。
うつ病治療のために開発された心理療法
認知行動療法は、うつ病や不安障害など、個人の思考や感情が病気の症状に大きく関係する問題に対する介入方法として開発された、認知療法が由来となっています。
そのため、ストレスや自己肯定感の低下など、現代のメンタルヘルス問題にも適用しやすい療法だと言えます。
また、より効果的なものにするべく、1950年頃から多くの研究者によって改善され続け、現在では誰でも活用できるような考え方や方法が構造化されています。よって、認知行動療法は臨床現場だけでなく、生活習慣病の改善など、実生活においても活用できるようになっているのです。
身体の内側から根本的解決を目指す
認知行動療法では、即効性は期待できませんが、長期的に取り組むことで、認知を見直し根本的解決を図ることができます。
例えば、重度のうつ病治療を例に挙げてみましょう。
抗うつ剤などによる薬物治療には、即効性があり、一時的な回復は見込めますが、そのような治療だけでは、認知に対しアプローチを行っていないため、考え方の根本を変えることはできません。
一方、重症のうつ病では、薬物療法と一緒に認知行動療法を使うと、薬物治療と認知行動療法の相乗効果により、薬物療法だけの場合よりも治療の効果が高くなることが明らかになっています(※2)。
さらに、症状を和らげるだけでなく、再発を減らす効果があることも知られています。
また、薬には副作用がありますが、認知行動療法のような精神療法にははっきりとした副作用はないため、アメリカやイギリスの治療指針によると、うつ病が軽いときには、薬よりも
認知療法を使う方が良い場合が多いです(※2)。
双方のメリットを組み合わせることで、より効果的な治療法になるため、海外の医療や臨床の現場においても、認知行動療法の効果が認められています。
今日から実践できる認知行動療法4選
認知行動療法の基本的な考え方や構造が理解できれば、応用方法も取り入れやすくなります。以下では気軽に取り組める方法をご紹介します。
認知の歪みに気づく
認知の歪みとは、ネガティブな自動思考を生み出しやすい認知パターンのことです。具体的には以下のようなものがあげられます。
他にも、物事が一度しか起きてなくても、いつもどんなシチュエーションにおいても起こるかのように認識してしまう「一般化」や、「〇〇すべき」と考えることが多い「すべき化」などがあげられます。
また、上記に該当せずとも、自身特有の認知の歪みを持っている場合もあります。
例えば、買い物の際に「『最後のひとつ』は買わないと絶対に損をする」と考えることも、自身の認知を歪めているといえます。
どの考え方にも共通して「絶対〇〇に違いない」と確信してしまう傾向が見られます。前章でご紹介したストレス把握シートを用いる際に、認知の歪みが潜んでいないかという点も、合わせてチェックしてみましょう。
セルフトークで自分に寄り添う
セルフトークとは、その名の通り「自分自身との対話」のことです。自分の中にいるもう一人の自分が、自動思考が浮かんだ際に話しかけてくれるイメージを持つと良いでしょう。
自身の自動思考を受け止める方法として手軽に実践できることから、スポーツ選手へのメンタルマネジメントにおいても用いられています。
例えば、仕事がうまくいかず、落ち込みがちな時であれば、以下のようなセルフトークができると考えられます。
セルフトークに慣れない間は、
・友人に同じことを相談されたら、どう返すか?
・自動思考の根拠は何か(認知の歪みが生じていないか)?
・友人に話したら、何と言ってくれそうか?
と問いかけてみると良いでしょう。
常にもう一人の自分を頭の中に置いておくことで、感情をモニタリングできることに加え、自分に寄り添ってあげることができます。これにより、自分の感情をコントロールしやすくなり、感情の切り替えが上手くなる効果が期待できます。
セルフトークや、以下で紹介する瞑想、行動活性化は、第三の認知行動療法と呼ばれており、自身の認知を変化させるのではなく「受けいれる」という考え方の、新しい認知行動療法です。
認知に向き合うことで、自身のネガティブな部分に気づき、より不安を抱えてしまう場合や、ポジティブな部分を楽観視しすぎることで改善につながらない場合も考えられます。
その点で、第三の認知行動療法は、基本的には自分の認知を知り、受けいれるだけなので、初心者が取り組みやすい方法ともいえます。
従来の認知行動療法とアプローチの仕方は変わりますが、考え方の基本は同じです。よって、まずは自身の思考パターンをしっかりと把握・理解することが大切になります。
マインドフルネスで自分の思考に気づく
マインドフルネスは仏教から生まれた方法ですが、「今この瞬間の自分の考え・感情・からだに意識を向ける」ことに重点を置いている点で、認知行動療法のひとつとしても使われています。セルフトークと同様、自分の状態に気づき、受け止めることが大切です。
マインドフルネスをする際は、「こんなこと考えてはいけない」「集中しなくては」と自身を評価する思考が浮かんだとしても、それに気づいて「いま自分はそういう思考を浮かべているのだ」ということを確認します。そう考えるあるがままの状態を観察し、その状態を受け止める姿勢で取り組むことがポイントです。
また、マインドフルネス用のスマホアプリや、音声などもあるため、どこでも手軽に取り組める点が特徴です。なかなか時間が取れない場合は、3〜4回腹式呼吸をするだけでも、自動思考を断ち切り、リラックスする効果が期待できます。
行動活性化で偏った思考を行動から変える
近年注目されている新しい認知行動療法のひとつに、行動活性化があります。
これは、環境、感情、身体反応、行動、認知のうち、行動に焦点を当てた方法です。自分の認知を把握し変化させるのではなく、偏った認知と関連している行動に着目し、その行動を変えようとするものです。
そのため、行動活性化では、私たちのストレス状態をTRAP(罠)モデル・TRAC(進路)モデルという独自の構造で分析、改善していきます。
認知の仕方を変えるよりも行動を変える方が手軽な点から、近年では臨床実験を初めとする様々な研究により、効果的なパッケージが検討され続けています。
行動活性化を行う際は、毎日の気分と行動を記録し、自身がどのような行動によって感情が変化するかを把握するところから始めます。
その上で、TRACモデルとTRAPモデルを使いながら、認知がネガティブになっている場合は、対策として認知がポジティブになる行動に置き換えていきます。これを代替行動と呼びます。
行動活性化で重要なポイントは、日々の記録を怠らないことです。自身の感情を得点化する、どんな行動を何時間行ったかメモする等、自身の変化を可視化できるようにし、より良い状態になるためにはどうすべきか検討し続けることが大切になります。
認知行動療法でテレワークでも活力ある職場づくりを
認知行動療法の基本的な考え方や構造、応用としての実践方法をご紹介いたしました。
ご紹介した他にも、グループで行うと効果的な方法や、専門家と一緒に取り組む方法などがあります。
テレワーク下においてもセルフケアに取り組む職場づくりのために、部署や社員それぞれに合う方法を導入してみてはいかがでしょうか。
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