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データで読み解く|女性活躍推進と職場のウェルビーイングの関係を解説!

女性活躍という言葉が聞かれるようになって久しいですが、依然として施策が進まなかったり、女性の悩みや課題の傾向を理解するのに苦戦している人事・管理職・ダイバーシティ推進担当者の方の声を耳にします。


そこで、人的資本及びウェルビーイング研究の第一人者である九州大学 馬奈木教授とピースマインドが共同研究を行った結果、女性管理職比率を高めることで従業員のウェルビーイングが良好になる傾向が明らかになりました(※1)。


本記事では、前半部分で女性活躍推進がもたらす効果をエビデンスを元に紹介し、施策を進める上での具体的なポイントについて解説します。記事後半では、女性活躍を妨げる課題の解決策をダイバーシティ・インクルージョンの観点から解説します。


データで読み解く女性活躍推進と職場のウェルビーイングの関係を解説 ポイント


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目次[非表示]

  1. 1.女性活躍推進が求められるものの手が回らない現状
    1. 1.1.女性活躍推進法の改正と現場の実情
    2. 1.2.「女性活躍推進」から「全体としてのウェルビーイングを重視する職場づくり」へ
  2. 2.データで読み解く 女性活躍推進がもたらす職場への影響
    1. 2.1.女性管理職比率の上昇は従業員のウェルビーイングの改善に繋がりうる
    2. 2.2.従業員の成長機会やキャリアアップ形成につながる可能性も
  3. 3.女性活躍推進を阻む壁
    1. 3.1.はたらく女性を取り巻く環境
    2. 3.2.キャリアアップを望まない女性の心理的背景とは?
  4. 4.女性がキャリアアップに抱える不安と解決支援
    1. 4.1.キャリアアップに伴って感じる仕事のストレスといった女性のリアルな声
    2. 4.2.個人支援と組織支援、双方のブラッシュアップを継続的に行うためのEAP
  5. 5.まとめ
  6. 6.ピースマインドの「はたらくをよくする®️」EAPサービス
  7. 7.参考文献


女性活躍推進が求められるものの手が回らない現状


女性活躍推進法の改正と現場の実情


女性活躍推進法が2022年に改正されました。法改正の内容には「推進法が義務付けられる事業主の範囲の拡大」「女性活躍に関する情報公表の強化」が含まれています(※1)。


改正された女性活躍推進法


しかしながら、女性活躍を推進しようとしても、「担当者の手が回らない」「経営層を説得できない」「制度は導入しているが活用できない」等々、課題を抱えたまま施策を進められない現状がある職場も多いでしょう。


「女性活躍推進」から「全体としてのウェルビーイングを重視する職場づくり」へ


女性活躍推進が求められるものの、最近ではその1つ上の階層であるジェンダーに着目し、ジェンダーギャップ平等を目指す職場が増えています。ジェンダーギャップ平等を目指すことは職場にどのような効果をもたらすのでしょうか。ピースマインドと、人的資本及びウェルビーイング研究の第一人者である九州大学 馬奈木教授の共同研究結果(※2)を元に紐解いていきます。


データで読み解く 女性活躍推進がもたらす職場への影響


女性管理職比率の上昇は従業員のウェルビーイングの改善に繋がりうる

管理職の男女比率におけるジェンダーギャップが埋まると、職場にどのような効果が期待できるのでしょう。女性管理職比率の高さと、従業員のウェルビーイング(心理的ストレス、ワークエンゲイジメント、仕事満足度、職場の一体感)の関連について分析したところ、従業員のストレス度、ワークエンゲイジメント、仕事満足度、職場の一体感が良好になる傾向が明らかになりました。


	女性管理職比率の高さとウェルビーイングの関係

【図1】管理職女性比率を1%増加した場合、従業員のWellbeingの改善度(各指標の偏差値)
出典:【調査分析】女性管理職比率の向上が従業員のウェルビーイングにポジティブな影響



上記の結果が得られた理由として、女性管理職比率の高さが職場に2種類の影響を与えていることが考えられます。1つは、従業員のウェルビーイングに直接与える影響(直接効果)、もう1つは、女性管理職比率の高さが、間接的に従業員のウェルビーイングに与える影響(間接効果)です。


 直接効果は、女性管理職が増えることで、男女問わず社員のモチベーションが向上したり、女性社員であれば自身のワークスタイルについて相談できるようになったりすることで効果が見られます。一方、間接効果は、女性も活躍できる職場づくりの推進により、他の従業員もはたらきやすくなる環境が整うなどの効果を指します。


女性管理職比率の高さと、従業員・職場のウェルビーイングの関係


従業員の成長機会やキャリアアップ形成につながる可能性も


女性管理職比率を1%増加させた場合、職場環境がどのように変化するかについても調査しました。以下は、女性管理職比率の高さに伴う良化が大きい職場環境要因をまとめた図です。


女性管理職比率上昇に伴う職場改善度

【図3】女性管理職比率を1%増加した場合 職場環境の改善度
出典:【調査分析】女性管理職比率の向上が従業員のウェルビーイングにポジティブな影響

項目は人事評価に関する説明、成長の機会、キャリア形成教育施策、仕事による私生活へのポジティブな影響、ほめてもらえる職場と続きます。


この結果から、女性管理職比率が高くなることで、従業員はサポートを得やすいと感じたり、人事評価について理解が進み、また成長機会やキャリア形成にもポジティブな影響が生じることが考えられます。また、上司からほめてもらえることで、自己肯定感を得られたり、仕事からポジティブなエネルギーを受け取りやすくなる可能性も増します。


また、先行研究(※2)では、女性管理職はメンバーとより個別に関わり、部下の個性に配慮したアドバイスや成長のためのフィードバックを与えることで、メンバーの内発的動機づけを高めるような関わりをする傾向があることが示されています。


	女性活躍により得られると考えられる効果


今回の分析の結果から、女性管理職比率が高まることに伴って、メンバーが内発的動機付けを持ちやすい職場環境が作られやすくなるなど、職場環境がよくなり、結果として従業員のウェルビーイングが向上する可能性が示唆されました。


女性活躍推進を阻む壁


はたらく女性を取り巻く環境


しかしながら前述の通り、女性の管理職登用が思うように進んでいない職場が少なくないのが現状です。女性活躍推進が難しくなっている要因には、女性自身がキャリアアップを望まない場合などがあるといえるでしょう。


キャリアアップを望まない女性の心理的背景とは?


職場では女性の管理職を増やすことを目標や指標にしているものの、キャリアアップに抵抗がある女性もいるため、キャリア支援が難しい場合もあるでしょう。その背景として考えられる3つの要因をご紹介します。


【キャリアアップを拒む背景①
「制度を使いこなせる職場」ではなく「制度を用意している職場」になっている】


管理職などのキャリアアップのタイミングでは子育てや介護が重なる場合が多く、両立の難しさから管理職へのハードルが上がっている場合があります。活用できる制度を揃えてはいるものの、実際には社員がうまく使いこなせていない職場も多いのではないでしょうか。


制度が職場で全く活用されていない場合は、制度と現場でのミスマッチが生じていると考えられます。現場の風土やニーズに応えた制度になっているか、今一度見直してみましょう。


例えば、制度の対象となる方に、活用できていない理由や背景をヒアリングし、制度を変化させていくことができるでしょう。また、制度の活用方法に関する案を社員から募集する等、社員を巻き込んだ制度の見直しを行えば、制度内容の周知ができるだけでなく、活用方法のブラッシュアップにもつながります。


事例として、子育て中の女性社員の声を聞き、短時間勤務を30分刻みで設定できるようにするなど、きめ細かい対応をとっている企業があります。「制度を整備するだけでなく制度を使うための仕組みを構築するための取り組み」については、以下の記事でご紹介しています。


\クリックして記事を読む/

企業インタビュー_丸井グループ様


職場の一部のみで特定の制度が活用されているような場合は、個人のおかれている状況や背景によってその活用度に違いが生じていることが考えられます。このような場合には、個人の状況に則した支援を行っていくことが重要です。上司や人事、管理職の方から1on1などを通して活用支援を行うことも重要です。


より制度をうまく活用するために、活用できない理由になんらかの事情がある場合は、EAP(従業員支援プログラム)などの外部機関を活用することも有効です。利害関係のない社外の人に話せる安心感はもちろん、コンサルタントが社内の人事労務担当者や管理職などと連携し、根本的な見直しをサポートします。EAPの詳しい説明は以下の記事で紹介しています。


\クリックして記事を読む/

EAPサムネイル


制度において重要なことは、女性だけが使えるものではなく、ジェンダーに関係なく皆が使えるものを目指すことです。女性のためだけの制度にしないよう心がけましょう。


【キャリアアップを拒む背景②

管理職になることを期待する意図や明確な役割が伝えきれていない】


男性と女性では管理職を引き受けるきっかけが異なるといえます。男性は社会的地位の向上や給与の増加など、何かを得るために管理職を選ぶ方が多い一方、女性は直属の上司からの説得をきっかけに管理職になることを決めた方が多いと言われます(※5)。


このことから女性は、自身の役割に対する期待値や、選ばれた理由を理解することが動機になっており、管理職になるまでのプロセスを意識していることが分かります。キャリアアップを拒む従業員に対しては、日頃から期待や理由を明確に示すことでミスコミュニケーションを防げる可能性があります。


【キャリアアップを拒む背景③
職場と従業員とで女性活躍推進の捉え方にギャップがある】


企業としては、女性活躍推進のためには女性管理職の比率を上げたり、残業を減らしたりと数字ベースで考えがちです。しかしながら、特定の分野でスペシャリストを目指したい従業員もいれば、子育ても仕事も妥協したくない従業員もいます。


そこで、「女性活躍推進」というレイヤーを一段階上げ、各々が目指すはたらき方を実現させるための「自律的なキャリア形成を目指す企業」が増えてきています。自身のキャリアは自分でつくる・つくれることを、研修やセミナー、組織風土を通して伝えていくことで、ジェンダーに関わらずはたらきかたを調整でき、モチベーションや自己効力感の向上が期待できます。


女性のキャリアアップを阻む3つの要因


女性がキャリアアップに抱える不安と解決支援


キャリアアップに伴って感じる仕事のストレスといった女性のリアルな声


ここまで、キャリアアップを拒む理由について解説してきましたが、次からはキャリアアップに伴って感じる、仕事のストレスや休復職の不安といった女性の声をご紹介します。

*ピースマインドのカウンセリングサービスに寄せられた3つの相談事例について、プライバシーを配慮する形で修正を加えてご紹介します。 


相談事例① 仕事のストレスからメンタル不調に陥るケース


相談者:20代 一般女性社員。


相談内容:半年前にリーダーになり、仕事の量や質に変化が出てきた。最初はうまくやっていたが、最近は仕事が溜まることが常態化している。期待に応えられていない自分が不甲斐なく、仕事以外の時間でも憂うつな気分・焦燥感・不眠が続いている。


カウンセリング後:カウンセリングと並行して通院・服薬を開始し、症状は大きく改善。上司への相談は当初は消極的だったが、いざ話してみたらすぐに動いてもらえた。一定期間業務調整を行い、仕事の整理が進んだことで、仕事への意欲も改善した。



相談事例② 部下との関係構築に課題がある女性管理職のケース


相談者:40代 女性管理職


相談内容:成果を優先しており、パフォーマンスは非常に高いと上司から評価を受けている。部下との関係構築よりも成果を重視していることから、部下マネジメントは課題があり、メンバーからは、「一方的」「感情的」という評価が人事にあがっている。退職・異動希望が相次いでおり、人事から勧められてピースマインドの窓口を利用。


カウンセリング後:「先日の上司との1on1で”メンバーへの声かけの頻度が増えている”、”部内会議の雰囲気も良くなった”、とのフィードバックをもらった」と報告があった。意識の変容に伴い、良い行動が増えた。



相談事例③ 育休からの復職を控え不安を抱えているケース


相談者:20代 一般女性社員。


相談内容:1年前に第1子を出産し、その後育休を取得した。近く、時短勤務で復職する予定。出産前は営業部で仕事最優先の生活だったが同様のスタイルは難しく、成果が出せるか、同僚の理解を得られるかが不安。


カウンセリング後:「~に違いない」という思考から解放され、「~かもしれないけど、本当かどうかはわからない」と捉え方を変えることで、不安が低減。徐々に仕事に対する前向きな気持ちも戻ってきて、復職後のワーク・ライフバランスをイメージしながら復職準備をすすめられた。



女性社員が抱える個人的・心理的課題を一緒に乗り越えるしくみづくりを


事例のように、キャリアアップやライフイベントを通して新たなスタートを切ったものの、仕事をうまく捌けずストレスになってしまったり、マネジメントが思うようにいかず自信を無くしてしまうケースは少なくありません。女性活躍を阻む要因に「やる気がない訳ではなく、自信がない」「不安だ」という気持ちは誰にでも生じるこころの動きです。


ダイバシティ&インクルージョンの推進と女性活躍推進


近年では、女性活躍推進にとどまらず、より多様性を包括する会社組織の変革が求められることも多いでしょう。そんなとき、「女性活躍」と「ダイバシティ&インクルージョン」、どちらを優先すれば良いのでしょうか?以下ではソリューションの一つとして、個人支援と組織支援の観点とEAPの活用についてご紹介します。


個人支援と組織支援、双方のブラッシュアップを継続的に行うためのEAP


多様性に富んだ職場づくりのために企業が取り組んでいる施策は、大別すると、個人支援と組織支援に分類できます。


個人支援は、個人の能力向上・能力開発などを支援するものです。自信のないメンバーを支援するなど、主に上司が部下に対して実施するようなことが含まれます。


組織支援は、多様な働き方を促進したり、長時間労働を是正するような制度づくり、個別課題をサポートするような施策の導入など、主に人事・経営者が実施するようなことが含まれます。


その際には以下のポイントを意識すると、組織支援がより効果的になると考えられます。

・制度活用を促す社内周知

・活用事例を周知

・マネジメント層による部下へ利用促進

・利用状況調査、制度の改善


このような支援は、時代背景やニーズに合わせて常にブラッシュアップしながら継続して行うことが重要です。しかしながら従業員それぞれが抱える悩みや課題は幅広く、制度を活用しきれる・しきれない事情はひとそれぞれです。特にプライベートに踏み込んだ事情を汲むのは、組織やラインだけでは難しいでしょう。


このような場合は、EAPなど外部の個別支援サービスを導入し、取り組みを推進していくのも1つの手段です。


外部EAPとの連携


外部EAPのようなサービスでは、利害関係のない第三者が支援するため、心理的安全性が確保された環境下で悩み相談ができます。また、それぞれの特性・事情・課題を踏まえ、パーソナライズされた支援が可能となります。


個別の課題に地道に対応することは、非常に手間がかかることですが、結果的に社員のウェルビーイング向上に繋がっていきます。どのように実現していくかは、企業のリソースや文化に合わせて検討していただくとよいでしょう。


また、事例にあったマネジメント方法が分からない場合についても、カウンセリングのような場で感情と状況を整理することが改善の後押しになり得ます。個人のマインドセット・信念を捉え直して行動改善に繋げることは、もちろん上司によるコーチングで改善できる部分もありますが、上司側のコーチングスキルや元々の関係性など、条件が揃わずうまくいかないような場合は、EAPのような外部サービスが有効になります。


まとめ


ここまで、女性活躍推進について

・女性活躍推進を図ることで従業員全体のウェルビーイングにつながること

・制度を整備するだけでなく制度を使うための仕組みを構築すること

・対象を絞らず性別問わず誰でも活用できるしくみを作ること

・個人支援と組織支援双方をブラッシュアップし継続させること

・制度の未活用や個人が抱える問題の背景は人それぞれであり、対応するためにはEAPなどの外部サービスが有効であること

などを解説しました。

全社員が活躍できる職場づくりを推進し、会社全体のウェルビーイングや利益にコミットしていきましょう。


ピースマインドの「はたらくをよくする®️」EAPサービス


ピースマインドのEAPは、はたらく人の「はたらくをよくする®」ために、心理学や行動科学の視点から職場のパフォーマンス向上などに対し解決策を提供するプログラムです。


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参考文献

(※1)厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)

(※2)【調査分析】女性管理職比率の向上が従業員のウェルビーイングにポジティブな影響

(※3)Eagly, A. H. (2007). Female Leadership Advantage and Disadvantage: Resolving the Contradictions. Psychology of Women Quarterly, 31(1), 1–12.

Eagly, A. H., Johannesen-Schmidt, M. C., & Van Engen, M. L. (2003). Transformational, Transactional, and Laissez-Faire Leadership Styles: A Meta-Analysis Comparing Women and Men. Psychological Bulletin, 129(4), 569–591.

(※4)男女共同参画局「共同参画」2021年5月号

(※5)中原淳 『女性の視点んで見直す人材育成-誰もが働きやすい「最高の職場」をつくる』 ダイヤモンド社

後藤 麻友(ごとう まゆ)
後藤 麻友(ごとう まゆ)
ピースマインド株式会社  社員支援コンサルティング部 部長 EAPスーパーバイザー 公認心理師 臨床心理士 国際EAPコンサルタント(CEAP)  臨床心理学の修士号を取得後、ピースマインド株式会社に入社。EAPコンサルタントとしての臨床業務の傍ら、研究、研修、サービス開発にも従事。現在は、主にコンサルタントのマネジメントや育成支援を行っている。

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