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ラインケアとは?社員のメンタルを守るために「人事・上司の方が」出来ること

・休復職を繰り返す社員がいて現場が回っていない

・社員のセルフケアに任せていていいのか不安 

・メンタルが不安定な部下にどう接すれば良いかわからない


こんな相談や報告は受けていませんか?

今回は、社員のメンタルを守るために重要な概念である「ラインケア」とは何か、社員のメンタルケアのために人事や上司の方が取り組むべき行動を具体的に説明していきます。


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目次[非表示]

  1. 1.メンタルヘルス不調による休職は当たり前に
    1. 1.1.個人のリスク
    2. 1.2.会社のリスク
  2. 2.メンタルヘルスケアの概要と種類
    1. 2.1.制度として定められたメンタルヘルスケア
  3. 3.適切なラインケアは社員が安心して業務できる職場に繋がる
  4. 4.管理職はラインケアにおいて何をすれば良いのか
    1. 4.1.事例性と疾病性:管理者が注目すべきは生産性低下の事実
    2. 4.2.「ラインケア」具体的には何をすれば良い?    
    3. 4.3.1次予防 〜メンタル不調の未然防止及び健康増進〜
    4. 4.4.2次予防 〜早期発見と対処〜
    5. 4.5.3次予防 〜治療と職場復帰・再発予防〜
  5. 5.メンタルヘルスケアを外部委託することで多くのメリットがある
    1. 5.1.産業医の8割が「メンタルヘルス不調・過労対応に自信がない」
    2. 5.2.専門知識を持つ人が少なく、有意義な研修を行えない
    3. 5.3.情報漏れを気にして、社内機関に相談できない場合も
  6. 6.まとめ
  7. 7.ピースマインドが提供しているEAPサービス
  8. 8.参考文献


メンタルヘルス不調による休職は当たり前に

メンタルヘルス不調への対処を知る前に、まずは現在までのメンタルヘルス不調者数を確認してみましょう。

厚生労働省の調査(※1)によると、2002年〜2017年の15年間で精神疾患を有する総患者数は増加の一途を辿っており、うつ病などの「気分障害」においては約1.9倍にまで膨れ上がっています。


加えて、労働者健康状態調査では5,000人以上の事業所のうち91.3%の事業所において、メンタルヘルス不調に関連した理由で、連続1ヶ月以上休職や退職をした労働者がいることが明らかになっています。

つまり、今やメンタルヘルス不調によって働けなくなることは、いつどの職場でも起きる可能性があります。しかし、メンタルヘルス不調を軽く考えてしまうとさまざまなリスクがあります。今回は2つのリスクについてご紹介していきます。


個人のリスク

①「もう少し様子を見てから医者に行こう」という考えから早期治療ができず、治療が長引く

メンタルヘルス不調は早期発見・治療が重要です。稀に「1度かかってしまったらもう仕事を続けられない」と考える方がいますが、メンタルヘルス不調は、適切な対処によって改善が可能です。

しかし、「心の不調を認めたくない」「時間がない」等の理由で我慢を続けていると、症状が重くなってしまったり、治療のために長期間の療養が必要になってしまうこともあります。不調に苦しむ期間が長くなるのは、本人にとっても辛い事だといえます。

②できないことをひたすらに自分の能力のせいだと考えてしまい、悪循環に陥る

悲観的な感情や無価値感・自責的思考はうつの症状の1つです。一度思考が固定化されてしまうと、抜け出すのが難しくなります。自責思考が強まることで、同僚や周囲と協力し合って仕事を行うことに対して後ろ向きになってしまう場合があります。 

③休職が必要になる場合もあり、心理的負担や金銭的負担が生じる

うつ病は自分自身の体調と向き合いながら、少しずつ治療を進めていきます。休職はストレスを感じる環境から離れたり、自分の体調をじっくりケアする時間が確保できるという点で、うつ状態から回復するのに非常に有効な手段です。

一方で休職によって「人事評価が下がるのではないか」「復職できるかが不安だ」という気持ちが負担になってしまったり、収入が減ることで生活が苦しくなる場合もあります。そのためにも、休職をせずとも治療ができるような、ごく軽い段階での初期対処が大切です。


会社のリスク

①労働環境が原因で社員がうつ病を発症した場合、損害賠償を請求される可能性がある

労働環境が原因で社員が不調をきたし、その責任が会社にある場合は賠償義務が発生します。訴訟問題の発生は、企業のブランドイメージの低下にもつながります。

②休職者が出た場合、他の社員の負担が増え、労働生産性が低下する

休職者の業務を他の従業員が代わることになるため、休職者が多く発生することで、他の社員の負担が増加し、全体の労働生産性が低下する場合があります。

③メンタルヘルス不調者の対応により、人事労務担当者が疲弊してしまう

不調者の対応には産業医や主治医、産業保健スタッフ等様々な専門家との連携が不可欠であるため、人事労務担当者にとっても一時的ではありますが負担が高くなる場合があります。また、責任感から「なんとか解決しよう」と踏み込みすぎるあまり、本人の焦りが生まれて回復が遅れる例もあります。


メンタルヘルスケアの概要と種類

メンタルの不調により、個人のリスクだけでなく会社にもリスクがあることをお伝えしました。ここからは「メンタルヘルスケアとはなんなのか」「メンタルヘルスケアの実施の際に気をつけなければならない点」をご紹介していきます。


制度として定められたメンタルヘルスケア

事業者が社員のメンタルヘルスを守ることは、労働契約法第5条における安全配慮義務にて定められています。

さらに厚生労働省の調査によって、うつ病などの会社内で起きる精神障害の多くは、ストレス過多のようなメンタルヘルス不調から始まっているということが判明し、ストレスチェック制度の実施義務化が始まりました(従業員50人未満の事業場については、当分の間は努力義務とされています)。

しかし、こういった法整備が進んでいるにも関わらず、令和2年度に厚生労働省が公表した「過労死等の労災補償状況」(※3)によると、令和2年度の精神障害の労災認定件数は過去最多となっており、申請件数もここ数年増加傾向にあります。

年々増加するメンタルヘルス不調に対してどのようなケアをしていけば良いのでしょうか。まずはメンタルヘルスケアに効果的な「4つのケア」を確認しましょう。メンタルヘルス対策として、厚生労働省は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(※5)にて4つのケアを示しています。
メンタルヘルスケアに効果的な「4つのケア」


上記4つの中でもラインケアは、日常的に部下と接している上司が異変を早期に発見すること
で、深刻な状態に陥る事態の予防を図れるという点
で大きな役割を果たしています。

ラインケアにおいて、段階に分けてケアを行うことは非常に重要です。次章では適切なラインケアの段階について解説していきます。


適切なラインケアは社員が安心して業務できる職場に繋がる

ラインケアは3つの段階があります社員が不調に陥らない「予防」の1段階、「早期発見・対処」の2段階、「復帰支援および再発予防」の3段階です。適切なラインケアは社員自身のセルフケアとの間に良い相乗効果を生み、社員がより安心して業務に集中することができます。

ラインケア整備がセルフケアの向上に繋がる


管理職はラインケアにおいて何をすれば良いのか

事例性と疾病性:管理者が注目すべきは生産性低下の事実

社員のメンタルヘルス不調において、診断や治療の部分は専門家の領域です。症状や病名などを専門家が判断します。これを「疾病性」といいます。一方、管理者が観察するべきなのは「生産性低下」といった業務への影響、すなわち「事例性」です。管理者は社員のメンタルヘルス不調が、業務にどんな影響を与えているかに主眼を置きましょう。


「ラインケア」具体的には何をすれば良い?    

では、具体的なラインケアの取り組みにはどのようなものがあるでしょうか?1次予防、2次予防、3次予防の3つの段階に分けてご紹介していきます。


1次予防 〜メンタル不調の未然防止及び健康増進〜

1次予防で重要なことは、メンタルヘルスケアに対する社員全体の理解を深めることです。社員自身がセルフケアを上手に行えるように教育研修を行ったり、管理職に対して良いコミュニケーションの取り方などを指導しましょう。また、何かあった時に相談できる窓口などの情報共有をしましょう。


2次予防 〜早期発見と対処〜

2次予防では、上司が連携を意識した行動をとることが重要となってきます。社員の不調にいち早く気がつけるように、職場環境の把握を徹底しましょう。社員の不調を察知した上司が人事労務担当者に情報共有する流れを確立することが大切です。

上司が相談を受けた際に、「誰にも言わないで欲しい」と頼まれた場合は、相談者の情報は匿名で、人事労務や相談窓口に相談することをおすすめします。人事担当者は、必要に応じて本人をカウンセラーや医療機関、産業スタッフなどの専門家に繋ぎましょう


3次予防 〜治療と職場復帰・再発予防〜

治療については、医師や専門家の領域です。人事労務担当者は、各機関との連携を図ってサポートを行いましょう。職場復帰をしたからと言って、疾患が完治したとは限りません。主治医や産業医の意見を踏まえ、適切な分量の業務を割り当てましょう。配置転換も有効な場合もあります。

再発予防としては、フォローアップの面談やカウンセリングを行うなど1次予防と同様に研修を行うことも効果的です。

ラインケアのステップ


メンタルヘルスケアを外部委託することで多くのメリットがある

管理者・社員ともに、従業員のメンタルヘルスケアに取り組む必要があると考える一方で、自社では対応が難しいという声を頂きます。


産業医の8割が「メンタルヘルス不調・過労対応に自信がない」

医師専用の会員制交流サイト「メドピア」が産業医にアンケートを取った結果(※6)、「過労やメンタルヘルスの対応で十分な役割を担えている」と答えたのは約2割でした。理由として産業医の多くが非常勤であることや、精神科が専門でなく「的確に診断できる自信がない」「職場復帰までの見極めが難しい」という意見が挙がりました。

メンタルヘルス対応への自信


専門知識を持つ人が少なく、有意義な研修を行えない

社員研修には、現場の特徴に合わせた問題意識の共有や医学的な見識を兼ね備えた研修が必要です。また、有意義な研修を行うためには、産業医以外にもこうした知識を持った人材が必要不可欠になります。「専門知識を持つ人が少ない」ことで、得られる学びが少ない研修を行ってしまうと、マンネリ化や形骸化に繋がる可能性があります。 


情報漏れを気にして、社内機関に相談できない場合も

カウンセラーや相談窓口などの社内機関ではもちろん守秘義務が課されています。しかしながら、「窓口に入るところを見られてしまうのではないか」、「人事査定に響くのではないか」との不安が生じ、なかなか社内窓口に相談するのは難しいという方もいらっしゃいます。そのため昨今は、はたらく人のメンタルヘルスサービスを専門に提供する会社への「外部委託」という手段をとる会社が増えています。

メンタルヘルスケアを外部委託することで、次のような効果が期待できます。

①専門家と産業医が連携して適切な対応が図れる

②現場の課題に基づいた研修を実施することで社員全体の生産性向上につながる

③情報セキュリティが万全なので、相談者が忖度なく相談できる

その他にも、管理者が自分の業務に集中できたり、予防や発見、初期対応やフォローアップなど多角的かつ一元化されたサポートを受けられるなどのメリットがあります。


ピースマインドで行っているEAPサービスについて詳しく知りたい方はこちらの記事も是非ご覧ください!

まとめ

社員の精神衛生が保たれていることは、はたらく社員がベストなパフォーマンスを発揮するためにとても重要です。適切なラインケアは、人事労務・上司・社員の間の信頼関係の構築や、安心安全な職場環境作りに大いに貢献しています。

一方、会社の中でラインケアを取り入れる必要性はまさに今高まっていますが、心の問題は非常に多様であり複雑です。専門知識の不足から対応できないことや、対応する側の負担が大きくなってしまう場合もあります。そうした場合には抱え込まずに専門家に相談をしてみましょう。

ピースマインドでは、20年以上のメンタルヘルス専門サービス実績を活かし、課題解決に最適なご提案をさせていただきます。どうぞお気軽にお問い合わせください。


ピースマインドが提供しているEAPサービス

EAPとは、はたらく人の「はたらくをよくする®」ために、心理学や行動科学の視点から職場のパフォーマンス向上などに対し解決策を提供するプログラムです。

経営課題、人事課題、組織目標に応じて、セルフケア・プラン、ラインケア・プラン、スタンダード・プランなど最適なプログラムをコンサルタントがデザインします。他にも、職場のクライシスケアや社員のワークライフバランスを実現させたい等の課題にも解決策をご提供しています。

専用ホットライン、予約制カウンセリング(対面・電話・オンライン対面)など様々チャネルを通じてサポートいたします。職場内やご自身に不安や悩みがある際や、メンタルヘルスに関する知識やアドバイスが欲しい時など、様々な場面でご活用をご検討ください。


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参考文献

(※1)厚生労働省 平成29年「患者調査の概況」

(※2)厚生労働省 平成24年 労働者健康状況調査

(※3)厚生労働省 令和2年度「過労死等の労災補償状況」

(※4)厚生労働省 令和2年度「精神障害の労災補償状況」 

(※5)厚生労働省 労働者の心の健康の保持増進のための指針

(※6)メドピア株式会社 産業医の約8割がメンタルヘルス不調・過労対応に自信がない、「時間」「専門性」   「相談しにくさ」に課題感 ~first callが産業医500人に調査~

小薬 理絵(こぐすり りえ)
小薬 理絵(こぐすり りえ)
ピースマインド株式会社 エンプロイーサクセス部 部長 EAPスーパーバイザー 公認心理師 臨床心理士 国際EAPコンサルタント(CEAP)  社団法人日本産業カウンセラー協会 シニア産業カウンセラー 博士後期課程在学中より、教育相談所において教育相談に従事。スクールカウンセラーとしても公立小・中学校複数校にて勤務する。 その後、外部EAP機関にて、働く人々へのカウンセリング業務に携わる。 現在、ピースマインド株式会社にて、EAPスーパーバイザーとして臨床、育成に携わる一方、人事担当者及び管理職への個別のコンサルテーションにも従事する。

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