コンサル監修|職場のパワハラ予防・研修について好事例を元に徹底解説!
2020年6月から改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が施行され、職場におけるパワーハラスメント防止措置が義務化されました。今回の改正では、セクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントの防止対策の強化についても明記され、企業にはより実効性のあるハラスメント対策が求められています。
参考:あかるい職場応援団|2020年(令和2年)6月1日から、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!
人事や管理職の方の中には、「対策をどのように進めれば効果的か」、「ハラスメントを防ぐにはどのような心がけが必要か」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、臨床心理士の資格を持つピースマインドのコンサルタント3人の対談を通して
・ハラスメント対策好事例5つ
・各事例を基にした対策ポイント
・会社の状況に応じた対策
について学ぶことができます。
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目次[非表示]
事例①社長自らが「職場におけるハラスメント防止・根絶の基本方針」を発信
T社では、「ハラスメント防止・根絶に関する基本方針」が社長名で発信されました。社長自らが「根絶」という強い表現を用いて発信したことで、社内ではこの方針がインパクトをもって受け取られたようです。
参考:厚生労働省「職場のパワーハラスメント対策取組好事例集」事例47
ーーハラスメント対策の1つとしてトップのメッセージは重要とされています。どのような内容が効果的なのでしょうか。
吉野:トップからはできるだけ明確に、強いトーンで発信するのが効果的だと思います。本気でハラスメント対策に取り組むという会社の意思が明確に伝わるメッセージが良いでしょう。トップ層がハラッサー(ハラスメントをする人)と思われている場合もあります。トップからの発信によって、トップ層自らも対策に取り組むことを伝えられると良いですね。
玉井:ハラスメント対策について、従業員の間で共有できる合言葉のようなものがあると良いと思います。共有されることでハラスメントの防止につながりますので、キャッチコピーのような、ポジティブな標語を作り、社長が発信するのも良いですね。
武田:トップからのメッセージは形骸化しやすく、従業員に受け流されてしまう場合があります。また、あまりに強硬的なメッセージでは、従業員を押さえつけるような印象になります。従業員はハラスメントについて相談できると言われても、なかなか相談に行きづらいことがあります。トップが自らの行動を振り返り、態度を改めることを開示した上で対策についてメッセージを発すると、従業員は「相談に行ってもいいんだ」と感じ、相談窓口を利用しやすくなると思います。
ーートップのメッセージを通して、ハラスメント対策に向けた会社の姿勢を明確に伝えることが重要ですね。方針という形だけでなく、従業員間で共有しやすい標語も活用できるかもしれません。トップがハラスメント対策を重視する姿勢を見せることで、従業員が安心して相談に行けるようになるという効果もありそうです。
事例②三大ハラスメントの定義や懲戒のあり方を明記したガイドラインを制定
職場で最も起こりやすい「パワーハラスメント」「セクシュアルハラスメント」「マタニティーハラスメント」を合わせて3大ハラスメントと呼ばれています。
S社では、パワハラ、セクハラ、マタハラそれぞれの防止ガイドラインが制定されました。ガイドラインには、それぞれのハラスメントの定義や懲戒のあり方といった内容が含まれました。
参考:厚生労働省「職場のパワーハラスメント対策取組好事例集」事例48
ーーハラスメント対策では、事案が発生した場合に備えてルールを定めておき、迅速に対応することが重要とされています。ガイドラインやマニュアルには、どのような内容を含む必要があるでしょうか。
吉野:基本的には、国が示すガイドラインや指針に、会社のポリシーを加えて作成します。社内の具体的事例を念頭に置いて内容を絞っていくと良いと思います。
参考:あかるい職場応援団|職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!
厚生労働省|職場におけるハラスメント対策マニュアル
玉井:ガイドラインやマニュアルに事例を載せる場合は、その事例に納得性があることが必要です。社内でのヒアリングなど、事例の裏付けをとるための調査を行うとより良いでしょう。
吉野:事例は、実際のものをそのまま載せることはできませんが、その会社の従業員が「たしかにあるな」と感じるようなシチュエーションのものが良いと思います。
武田:事例の掲載には、ハラスメントについて理解しやすくなるというメリットがある反面、「その事例に該当しなければ大丈夫」と思われてしまうというデメリットもあります。ガイドラインやマニュアルはあまり形式的になりすぎないほうが良いのか、考えどころですね。
吉野:ハラスメントは関係性や環境要因に影響を受けるため、ハラスメントに該当するか否かの判断基準を定めにくいという側面があります。ガイドラインやマニュアルに事例を掲載する際には、「この場合に、この関係性だと、ハラスメントに該当します」といった背景を明記する必要があると思います。こうした背景は事例を用いることで伝わりやすくなりますね。ある行動がハラスメントに該当するか否かわからない場合に、ガイドラインやマニュアルの事例を参考にしてみるのも良いでしょう。
ーーガイドラインやマニュアルは、国が示すガイドラインや会社のポリシーをベースに、ハラスメントの事例を加えるとわかりやすい内容になるでしょう。事例を用いることで、ハラスメントが発生した背景が伝わりやすくなります。
事例③全社員への継続的なハラスメント防止研修による周知と知識の向上
X市役所では、職員一人ひとりが正しい知識を持つことが重要であるという認識のもと、全職員を対象にした研修を繰り返し実施しています。
参考:厚生労働省「職場のパワーハラスメント対策取組好事例集」事例12
ーー従業員に向けて、ハラスメントに関する研修を実施している企業は多くあります。従業員が関心を持って研修を受講するために、ハラスメント対策の担当者は、研修についてどのように説明すると良いでしょうか。
玉井:研修については、トップのメッセージと一貫した説明が重要になります。会社として、ハラスメントをなくしていくという前提に基づき研修を行っていることを伝えると良いでしょう。また、「職場をよりはたらきやすい環境にする」など、研修の先にあるものについて伝える必要もあると思います。
武田:ハラスメントは、ほとんどが人間関係の問題から生じると考えられます。ハラスメント防止研修は、ハラスメントをしないという観点だけでなく、人間関係をよりよく構築していくというポジティブな観点からも捉えられます。人間関係の円滑な構築は、はたらくスキルとして重要ですよね。研修を受けることはそのスキルの向上に役立つという感覚を持ち、従業員自身のキャリアにメリットがあると感じてもらえれば、研修へのモチベーションも高まるのではないでしょうか。
吉野:ハラスメント対策でそういったポジティブな側面もある上で、基本はやはりリスクマネジメントだと思います。
研修を行う大きな理由に、ハラスメントという、企業にとってのリスクをマネジメントする、という点が挙げられます。ハラスメントに関する知識や認識の不足によって企業の社会的信用の棄損や、損害賠償のようなリスクが考えられるからです。そのリスクマネジメントのために、会社として教育していく必要があると思います。自分の言動がハラスメントに該当するリスクは誰にでもあり、決して他人事ではない、という点を強調し、研修について説明していくと良いですね。
ーーハラスメントに関する知識不足が企業や従業員にとってリスクとなっている点で、研修による知識向上は重要ですね。研修の先にある目的や、研修を受けるメリットを伝えることで、研修に対する従業員のモチベーションを高められるかもしれません。
X市役所では、ハラスメントの背景にコミュニケーションの問題があるという認識のもと、研修の場でコミュニケーションについて取り上げています。ハラスメント事案発生のリスクとなるようなコミュニケーションの特徴とは、どのようなものでしょうか。
玉井:相手に対する先入観や思い込み、決めつけが、事案発生のきっかけになっていることが多いと思います。
武田:ハラスメントは、基本的にはコミュニケーションの齟齬から発生すると考えています。従業員の方から相談をお受けしている中で、人格の否定に該当するような発言があったケースは、最近では少ないように感じます。
ただ、例えば「あなたには無理でしょう」のような、見下したり相手の尊厳を傷つけたりする発言があり、言われた側が傷ついたというケースがあります。また、教育のつもりで行っていた叱咤激励がハラスメントになっていたというケースもあります。この場合、一方は成長させるために接していたつもりが、受け取り側にとってはパワハラと感じるという齟齬が生じています。
吉野:ハラスメントの背景として、コミュニケーションが一方通行になり、価値観を押し付けるような状況になっていることがあると思います。これは、コミュニケーションに丁寧さが欠け、受け止め、受容、共感がなされていないことに原因があります。双方向的で丁寧なコミュニケーションが取れていない場合の極端なケースとして、押し付けが生じてしまう場合もあります。
ーーコミュニケーションに丁寧さが欠け、齟齬や決めつけが生じている状態では、ハラスメントが発生しやすくなると言えそうです。ハラスメント加害者にならないために、管理職は部下とのコミュニケーションでどのような点に気をつけるべきでしょうか。
玉井:事案発生のリスクとなるようなコミュニケーションを避けるだけでなく、日ごろの関係性、普段の信頼関係が重要です。その関係性を構築するためのコミュニケーションが大前提になってきます。このコミュニケーションが欠けて決めつけや押し付けが生じると、ハラスメントにつながりやすいと思います。
武田:双方向的なコミュニケーションの観点から、相手の言い分をしっかり聞くという点が重要です。相手の言い分を聞かずに自分からのメッセージだけを投げてしまうのは、良くありませんね。ラインケア研修でも、必ず傾聴についてお話ししています。
まずひと通り相手の言い分を聞くことが重要で、仕事でミスがあった場合などでも、その理由について話を聞くように心がけると良いでしょう。全く話を聞いてもらえないと、相手は不当感を抱く可能性があります。昔は言い訳をするなといった風潮があったように思いますが、今は言い訳を聞かないといけない時代だと思います。
吉野:特に上司と部下のコミュニケーションの場合は、一旦部下の気持ちを受け止めることが重要です。一旦受け止めた上で、その後丁寧に意見交換をするというプロセスがポイントになります。このプロセスを欠いてしまうと、お互いに分かり合えない状態が生じやすくなり、部下が物足りなさや不足感を抱くことにもつながると思います。
ーー管理職の方は、日ごろから部下と信頼関係を構築しておくことが重要ですね。何か問題が生じた際にも、部下の話をしっかりと聴き、部下の気持ちを受け止める姿勢を心がけましょう。
X市役所では、ストレスチェックの職場診断をハラスメントのない職場づくりに活用できないか、検討が行われています。組織全体として、ハラスメントが発生しやすい、または発生しにくい風土や状態とはどのようなものでしょうか。
吉野:ハラスメントの疑いがある事象を放置しないことが一番重要だと思います。ただ、放置しないからといって、即介入すべきというわけではありません。事象をリスクとしてどのように取り扱うべきか、関係者で方針を協議し共有する必要があります。
例えばオープンな議論では扱えないような事象では、情報共有する対象者や共有する内容を慎重に検討して伝える等、きめ細やかな対応が望まれます。いずれにしても、ハラスメントの疑いがある事象を放置しないことが重要でしょう。
玉井:最近、インシビリティという概念が出てきています。不躾のような意味で敬意を欠いた非礼な言動のことです。例えば、ため口で話す、「さん」を付けない、からかうようなニックネームをつけるといった言動が該当します。
これらは、ハラスメントの前段階のような言動でもあると思います。ハラスメントの疑いがある事象を放置しないという点で、インシビリティがポイントになるのではないでしょうか。
吉野:インシビリティに当たるような言動があった際に、厳しく指摘し叱責するのではなく、さりげなく軌道修正することが重要であるように感じますね。「こんな風に言ったほうが良いですよ」といったポジティブな呼びかけをすると良いと思います。
玉井:組織の文化づくりに近いものが求められるように思います。今後、ハラスメントの手前となる言動を放置しないという宣言なども、必要になるかもしれませんね。
吉野:望ましくない言動に対するフィードバックの仕方、伝え方の工夫も重要ですね。そうした言動を無自覚にしてしまう人が多く、「こんな風に言ったほうが素敵ですよ」のように伝えると、言われた側も「ああ、そうなんだ」と受け入れやすいようです。このような伝え方の工夫が欠けると、職場がピリピリと緊張感のある場になってしまうと思います。望ましくない言動の取り上げ方、そして軌道修正の仕方にも工夫が必要ですね。
ーーハラスメントの疑いがある事象を放置しないことが、まず重要ですね。そうした事象の指摘方法、伝え方の工夫についても、考える必要がありそうです。
ハラスメントが発生しにくい職場づくりに向けて、管理職の方は日常的にどのようなことができるでしょうか。
武田:日ごろから周囲とコミュニケーションをしっかりとって、現場の状況を把握することが重要だと思います。上司のことがよく分からないと、コミュニケーションの齟齬が生じやすくなります。日常的なコミュニケーションをどれだけとれるかということが、ハラスメントの防止につながるでしょう。
吉野:そういった日常的なコミュニケーションを各自の努力や裁量の中で試みるのは、なかなか難しいかと思います。日常的なコミュニケーションや、職場の雰囲気づくりのための仕掛け、枠組みを作ることが必要ですね。特に今のようなリモートワーク下では、日常的なコミュニケーションの機会をいかに作るかということが重要になってきます。
ーー管理職の方は、日常的なコミュニケーションの充実化によってハラスメントの防止を図ることができるでしょう。コミュニケーションの機会を増やすための仕組みづくりについても、検討したいですね。
事例④リーダー層へのハラスメント研修の内容を社内報で全職員に公開
K生協では、職場リーダーを対象とした研修を実施後、その内容を広報誌に掲載して全職員に配布し、研修内容の周知を図りました。広報誌を読んだ職員たちからは、大きな反響が寄せられたそうです。
参考:厚生労働省「職場のパワーハラスメント対策取組好事例集」事例14
ーー組織の方針や取り組みについて従業員に周知することは、ハラスメント対策におけるポイントの1つとされています。ハラスメント対策について職場全体への周知を図るために、どのような方法・媒体を利用するとよいでしょうか。
吉野:私がよくおすすめするのは、社内報や社内イントラ等で、トップの方へのインタビュー記事や、トップと専門家との対談記事を掲載する等の方法ですね。
玉井:研修にグループディスカッションを取り入れると良いですね。。当社でも先日、管理職研修と全社員研修を実施し、その中でグループディスカッションを行いました。ハラスメントは日常的に話すテーマではないので、研修を機に周囲と対話することで、気づきが得られるように感じます。
吉野:媒体や方法にはさまざまなアプローチがありますが、いかに自分事にするかという点がポイントになります。第三者ではなく自分の会社の誰かが語る、研修でディスカッションをする中で自分の考えを語るなど、当事者意識を持っていただくための仕掛けが重要ですね。
武田:自分で話すということは、とても意味のある行動ですね。研修を受けた方は、その内容を相手に伝えることを通して、理解を深められると思います。
また管理職の方が研修を受ける場合、それをチームに還元するような場や試みがあると良いのではないでしょうか。e-learningや社内報にも良さはありますが、受動的になりやすく、内容を見ない場合や、どこまで真剣に見てもらえるか分からないという不安があるため、管理職の方が話し、広めることは、管理職の方ご自身にとってもプラスになるでしょう。
ーー研修を自分事として捉えられるようにする工夫が重要ですね。人事の方や管理職の方が、職場全体に研修の内容を広める際にも、こうした工夫がポイントになるでしょうか。
吉野:そうですね。武田さんもおっしゃったように、研修を素材にして皆で話す場を持つことが重要ですね。当事者として、自分だったらどうするか考える、自分は大丈夫か考える機会を従業員の方々に持ってもらうことが大切だと思います。
事例⑤ハラスメント相談窓口への多様な手段と相談内容に応じた窓口の区分けの設置
D社では、ハラスメントに関する相談窓口の体制として、対面・電話・メールと複数のチャネルを設けています。
参考:厚生労働省「職場のパワーハラスメント対策取組好事例集」事例15
ーー対面での相談と、電話やメールでの相談には、それぞれどのような長所や短所があるでしょうか。
武田:窓口として、メールは敷居が低いと思います。対面でいきなりハラスメントの話をしに行くのは、勇気が要るのではないでしょうか。ただ、メールの短所として事案の詳細がわからないという点が挙げられます。対面になるほど、より詳細がわかりますね。
吉野:メールで書く場合には、話す場合に比べ事案の内容がシンプルになりやすいのではと思いますが、どうなのでしょうか。
武田:例えば、「使えない人間と言われた」とメールに書いてあったとします。しかし、「使えない人間」とそのままの表現で言われたかお尋ねすると、「そういう意味の言葉を言われた」とおっしゃる場合があります。このように、対面でないとわからないこともありますね。
武田:メールで具体的に書く方もいらっしゃいますが、2,3行で終わっている場合もあり、どういうシチュエーションや流れで事案が生じたのかわからないことがあります。メールのやりとりをするのが大変ということもあり、対面が一番良いように思います。ただ、対面での相談に勇気が要る方もいらっしゃいますね。
玉井:対面と電話の違いとして、匿名で相談できるかという違いが挙げられます。対面の場合、匿名で相談できないことが多く、メールや電話の場合、匿名で相談できることが多いです。
吉野:相談のチャネルには、それぞれ特徴がありますね。その点で、バランスよくチャネルを持っているほうが良いように思います。
玉井:顔や名前を明らかにして解決していきたいという場合には、電話やメールだけでなく、対面での相談が必要になります。
D社の相談窓口体制の特徴として、セクハラのみ/ハラスメント全般のように、相談内容に応じて窓口が分かれていることも挙げられています。
ーーセクハラのみ・ハラスメント全般のように窓口を分けた場合、利用する従業員や窓口を運営する人事にとってどのような利点や留意点があるでしょうか。
玉井:例えばセクハラの場合、異性の相手には相談しにくい場合があります。最近は、男女両方が窓口の担当者になっている場合が見られますね。
吉野:ハラスメントの事案がパワハラなのか、セクハラなのか、マタハラなのか、判別のつかない場合やあいまいな案件もあります。窓口としては全て受け入れ、相談を聞く中で話しにくい様子が出てきたら担当者を変えるといった方法もあります。セクハラの場合などに備え、性別に応じた選択肢を担保しつつも、相談窓口としてはあらゆる相談を受けられるようにすると、従業員にとって利用しやすいと思います。
武田:窓口の担当者がどうしても相談しにくい相手という場合や、担当者と親しすぎて相談しにくい場合もありますよね。
玉井:社内窓口の場合、そういったことが多いように思います。
吉野:相談する方にとって、窓口の担当者が決まった方だと相談しにくい場合がありますね。選択肢が複数あると、相談しやすくなると思います。
ーー相談窓口としては広く相談を受け付け、必要に応じて担当者を変えるなど、柔軟な対応が理想的ですね。窓口の選択肢を複数設けると、利用しやすさにつながるでしょう。
D社では、社内窓口だけでなく、臨床心理士資格を持った外部機関のカウンセラーによる相談窓口も設置しています。外部機関の窓口には、利用しにくい印象が持たれる場合があると思います。従業員がこうした窓口を利用しやすくするために、人事は窓口についてどのように周知すれば良いでしょうか。
玉井:守秘義務があることや専門家がいることなど、安全性のメッセージを伝えることが基本と言えますね。
吉野:第三者機関であり、安心して利用できる旨を伝えることが重要ですね。事案によっては会社と連携したほうが良い場合もありますが、基本的には外部機関として会社とはファイヤーウォールのような壁があることを強調すると良いと思います。
ただ、EAP(従業員支援システム)の窓口と同様に、命の危険がある場合など、守秘義務には注釈が付くことも伝える必要があります。また、社内窓口の場合、実際にそうしたことはなくとも、「窓口の利用が人事評価に影響を及ぼすのでは」、「相談内容がハラッサーに筒抜けになるのでは」と気になさる方がいらっしゃいます。社外窓口の場合、そうした懸念を払拭しやすい点がメリットかもしれません。
ーー社外窓口については、守秘義務があることや、専門家に相談できること、会社とは一定の距離があることを周知すると良いですね。一方で、守秘義務には注釈が付くことについても、事前に伝えておく必要があります。
まとめ
本記事では、ハラスメント防止の職場を作る上で重要なのは、会社の方針や研修、相談窓口等の制度を整える側面と社員同士の丁寧なコミュニケーションなど日常での社員の関わり方であることを解説しました。
研修などを通してハラスメントを未然に防ぎつつ、事案の発生に備えて、対応方法や相談窓口を整備しておくことが重要です。社内での対策が難しい取組みについては、外部の専門機関を活用しながら実施するとよいでしょう。
ピースマインドでは、ハラスメントに関して「準備」「施策」「対処」の各ステップを支援する様々なサービスを用意しています。
ハラスメント防止のための措置義務を遵守するためのサポートを行う「職場のハラスメント対策支援サービス」や職場のパワーハラスメントのリスクを把握し、予防するための新尺度である「パワハラ・インデックス」等を活用した職場のハラスメントの予防・解決支援をご提供しております。
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