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長時間労働には産業医面談が必須!実施の流れやメリットを解説

働き方改革関連法の施行によって、2019年から労働時間に関する規制が強化されました。(※1)

また労働安全衛生法(※2)第66条の8では、一定時間以上の労働を行った従業員に対する医師面接指導を行うことが、企業に義務づけられています。

長時間労働者に対して面接指導を行わないといけないことは分かってるけど、どういった流れで面接指導を行えば良いか分からない」「面接指導ではどのようなことが行われているか知らない」という方に向けて、本記事では、長時間労働者に対する医師面接指導の流れや、医師面接指導の内容についてご紹介します。



目次[非表示]

  1. 1.長時間労働の危険性と規制の背景
    1. 1.1.長時間労働はなぜ規制されたのか?
    2. 1.2.長時間労働による従業員の主な健康障害リスク
  2. 2.医師による面接指導を行わない場合のリスク
    1. 2.1.罰金が発生することがある
    2. 2.2.生産性の低下、最悪の場合は過労死に繋がる
  3. 3.長時間労働面接指導の流れ
  4. 4.まとめ
  5. 5.ピースマインドの産業医業務受託サービス


長時間労働の危険性と規制の背景

長時間労働の危険性はどのようなものなのか、規制の背景も踏まえてお伝えします。

長時間労働はなぜ規制されたのか?

就業者の脳血管疾患、心疾患等による死亡数は1995年に約52,000人となり、ピークを迎えました。(※3)過労死の認定基準は、1995年に定められた「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」に基づいていましたが、基準には含まれていなかった慢性的な疲労や就労状況も業務過重性要因として考慮する必要性が指摘されるようになりました。

その後、発症前1ヶ月間、あるいは発症前6ヶ月間で月平均45時間以上の時間外労働を行った場合に、その時間が長くなるほど発症との関連性が強まる可能性が指摘され、2001年に脳・心臓疾患に対する労災の認定基準が改正されました。これが長時間労働規制のきっかけです。


長時間労働による従業員の主な健康障害リスク

長時間労働の影響としては、労働の負荷が大きくなるほか、睡眠時間などの休養時間不足、家族と過ごす時間や余暇時間不足が引き起こされ、疲労が蓄積されます。 疲労が蓄積した結果として、以下の4つの健康障害と関連するとされています。

脳・心臓疾患過労死)
精神障害・自殺
その他の過労性の健康障害胃十二指腸潰瘍過敏性大腸炎、腰痛、月経障害など)
事故・ケガ


このうち最も致命的とされているのが、脳・心臓疾患です。研究においても、長時間労働を行う従業員の方が急性心筋梗塞の発症リスクが高いことが報告されています。(※4)こうした脳・心臓疾患は、時に命に関わる問題となることもあります。

長時間労働による心疾患発症リスク


また、長時間労働がうつ病などの精神障害を引き起こすこともあります。研究データ(※5、※6)によると、時間外労働が多い方が精神障害のリスクが約1.3倍高く、また抑うつの傾向が強まるということが示されています。そしてこうした精神障害によって、自ら命を絶ってしまうという事案も後を絶ちません。

長時間労働によるメンタルへの影響



医師による面接指導を行わない場合のリスク


長時間労働を行った場合に従業員に様々な健康上の問題が発生することを紹介しましたが、長時間労働をしている従業員への医師面接指導を行わなかった場合にはどのような問題が起こるのでしょうか。


罰金が発生することがある


まずは、労働安全衛生法に基づき罰金が課される可能性があります。労働安全衛生法では、法定業務を実施しなかった場合50万円以下の罰金に処する旨が定められており、長時間労働を行った従業員への面接指導も罰金の対象に含まれています。


生産性の低下、最悪の場合は過労死に繋がる


また、企業の中で長時間労働が続いてしまうと、プレゼンティーズム(※)による生産性低下メンタルヘルスの不調による休職・離職、最悪の場合従業員が過労死してしまうことも考えられます。過労死が起こってしまうと、企業への社会的イメージの低下にも繋がり、企業活動に大きな影響を与えるリスクがあります。

※プレゼンティーズムとは「欠勤はしていないが、心身の健康問題によって仕事のパフォーマンスが低下している状態」のことです。
プレゼンティーズムの対策についてはこちらをご覧ください。

以上のように、長時間労働を行うことは身体的・心理的に大きな負荷になると言えます。長時間労働による負荷を正確に評価することで、今後の就業上の配慮に繋げることができるだけでなく、健康管理役立てることができ、また職場環境改善を通して従業員生産性向上や離職率低下などにも活かすことができます。

以下では、長時間労働を行った従業員に対する医師面接指導がどのような流れで行われるのかを紹介します。


長時間労働面接指導の流れ


長時間労働を行った従業員に対する医師面接指導は以下の流れで行います。

長時間労働面接指導の手順


①情報提供、②長時間労働者の把握
事業者は産業医に以下の情報を提供します。これにより産業医は、長時間労働を行っている労働者を把握し、健康管理などを行うことができます。

・時間外、休日労働時間が1ヶ月あたり80時間を超えた労働者の氏名、およびその従業員の時間外労働に関する情報
・高度プロフェッショナル制度対象者の場合、1週間あたりの健康管理時間が40時間を超えた時間数
・健康診断、長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェック後の面接指導後の講じた(講じる予定の)措置に関する情報


③対象者の選定
事業者は産業医から提供された情報をもとに、面接指導の対象者を選定します。
法令による基準は以下の通りです。


労働者

月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労の蓄積があり面接指導を申し出た者

研究開発業務従事者

月100時間超の時間外・休日労働を行った者(罰則つき義務)

月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労の蓄積があり面接指導を申し出た者

高度プロフェッショナル制度対象者

1週間あたりの健康管理時間が40時間を超えた時間について、月100時間超行った者(罰則つき義務)


医師による長時間労働面接指導実施マニュアル(※7)よりピースマインド作成

法令による基準以外にも、事業場で独自に基準を設けて対象者を選定する場合もあります。

④対象者へ情報提供・申出勧奨
面接指導の対象者が決定したら、対象者に事業者から労働時間に関する情報提供を行ったり、産業医から面接指導への申出の勧奨を行うことで、面接指導の申出を促します。


④面接指導の申出
面接指導の実施には労働者からの申出が必要です(月100時間超の時間外・休日労働を行った研究開発業務従事者、高度プロフェッショナル制度対象者は面接指導が義務づけられているため、申出は不要)。人事など担当者に申出を行います。


⑤面接指導の準備、⑥事業者からのヒアリング・問診票など
面接指導を行う対象が決定したら、面接を実施する準備を行います。

事業者は、面接指導の実施者を決定します。労働安全衛生法(※2)では、実施者は事業場で選任されている産業医が望ましいとされています。産業医を選任していない場合は、労働者の健康管理等の知識を持った医師が実施者となることが推奨されています。

実施者となった医師は、面接指導を効率的に行うために、事前対象者の健康障害リスクを評価しておくことが効果的です。事前問診票や自己評価シートへの記入を対象者に依頼する、管理監督者への聞き取りを行うなどの方法で、業務の過重性や心身・生活の状況に関する情報を収集します。


⑦面接指導の実施
面接指導では、対象となる従業員の⑴勤務の状況業務負担度、職場支援度など)⑵疲労蓄積状況食欲、睡眠など)⑶その他心身状況(所見、自覚症状などについて確認が行われます。

面接指導で聞き取った記録は記録用紙にまとめ、事業場内の産業保健スタッフの間で共有することで、面接指導後事後措置を組織的にスムーズ行うことができるでしょう。


⑧医師からの情報提供、⑨事後措置の決定・実施、⑩事後措置の報告

長時間労働面接指導後のフロー

面接指導後、事業者は⑴医師から意見聴取⑵事後措置決定・実施⑶産業医に対する情報提供を行います。

⑴医師からの意見聴取
はじめに、必要な事後措置を検討するために、面接指導を行った医師から意見を聞き取ります。


⑵事後措置の決定・実施
聞き取った医師からの意見を勘案して、以下の表の中から適切な事後措置を決定し、実施します。事後措置を実施しても改善が見られない場合、再度面接指導を行って適切な措置を講じます。


就業区分

通常勤務、就業制限、要休業

就業上の措置

労働時間

指示なし、時間外労働制限、時間外労働禁止、出張制限、就業形態の変更、就業時間の制限

労働時間以外

指示なし、業務量・業務内容の調整、通院への配慮、職場環境の調整


⑶産業医に対する情報提供
事後措置が最終的に決定したら、産業医に報告を行います。実施しなかった場合はその理由を報告します。


​​​​​​​これらの事後措置に関する医師への意見聴取や面接指導の対象者決定などを衛生委員会で行うことで、事業場における長時間労働の状況を把握することができます。また、組織的な対応や職場環境の改善などについても検討を行うことができます。


まとめ


長時間労働を行った従業員への面接指導は、対象となる従業員の心身の健康保持・増進に欠かせないだけでなく、職場環境全体を見直すきっかけにもなります。面接指導を実施するためには、職場環境やメンタルヘルスの知見がある産業医の存在が欠かせません。従業員の心身の健康を持続的に保持・増進させるためにも、メンタルヘルスの対応を行える産業医を選任するところから始めてみてはいかがでしょうか。


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産業医業務受託サービス



※1:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説
※2:労働安全衛生法
※3:就業者の脳血管疾患、心疾患等の発生状況
※4:労働時間と急性心筋梗塞・脳卒中発症リスクとの関連
※5:A prospective observation of onsets of health defects associated with working hours
※6:日本の長時間労働・不払い労働時間の実態と実証分析
※7:医師による長時間労働面接指導実施マニュアル







ピースマインド 産業保健推進チーム
ピースマインド 産業保健推進チーム
産業保健推進チームのメンバーが監修している記事です。

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