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部下のパフォーマンス向上を支援する-EAPを活用したタイプ別支援-

職場における従業員のメンタルヘルス支援に利用されるEAP(従業員支援プログラム)ですが、部下の育成にも活用することができます。本記事では、EAPの中の「1on1コーチング」に焦点を当てて、EAPをどのように部下の育成に活用するのかをお伝えします。

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目次[非表示]

  1. 1.部下のパフォーマンス向上支援にEAPを活用
    1. 1.1.EAPとは
    2. 1.2.管理職とEAPの連携による部下のパフォーマンス向上
  2. 2.パフォーマンスが上がらない4つの要因とEAPによる支援
  3. 3.パフォーマンス向上支援の事例
    1. 3.1.EAPコンサルタントが解説 パフォーマンス向上支援の事例解説
    2. 3.2.よくいただくご質問
  4. 4.まとめ

部下のパフォーマンス向上支援にEAPを活用

EAPとは

EAP(Employee Assistance Program)は、従業員支援プログラムのことを指します。これは、厚生労働省が定める「労働者の心の健康の保持増進のための指針」における、メンタルヘルス対策推進のための4つのケアのうち、「事業場外資源によるケア」に相当します。(※1)


4つのケア


EAPは、従業員個人を対象としたカウンセリングやコーチングだけでなく、人事・管理職向けのコンサルテーション、職場改善やウェルビーング施策の支援なども行います。本記事では、特に個人への支援の中で多くの相談を受けるEAPを活用して、部下のパフォーマンス向上を支援する取り組みに焦点を当てて解説します。

EAPについては以下の記事で詳しく解説しています。

  EAP(従業員支援プログラム)とは? 臨床心理士が、カウンセリング開始から課題解決までのプロセスを解説します。 この記事では、EAP(従業員支援プログラム)について以下の観点でお伝えしていきます。 ・EAPについて ・内部EAPと外部EAPの違い ・EAPの利用方法 ピースマインド株式会社



管理職とEAPの連携による部下のパフォーマンス向上

管理職向けのEAP相談窓口に寄せられる相談の中で、昨今、部下の育成に関するアドバイスを求められるケースが増えています。一人ひとりの意欲やスキルレベルは様々で、強みや弱みも異なるため、Aさんに有効だった支援がそのままBさんにも適用できるとは限りません。そのため、あの手この手で支援や指導を試みても、期待通りの成果が得られず思考錯誤されている場合も少なくありません。

部下のパフォーマンス向上支援がうまくいかないと、周囲のメンバーにも影響が及びますので、部下の支援はチーム全体の課題と言えます。

ご本人の努力や周囲の支援にもかかわらず、部下のパフォーマンスがなかなか向上しない時には、EAPによるカウンセリングやコーチングが有効な場合があります。

EAPは、メンタルヘルス支援としての機能がよく知られていますが、人事や管理職と連携しながら、従業員のパフォーマンス向上支援を目的とするカウンセリングやコーチングも提供しています。個々の課題や特性に合わせて、業務スキルの向上、コミュニケーションの改善、社内関係者に相談しにくい問題やプライベートな悩みに対する支援などを行っています。


管理職 EAP パフォーマンス


パフォーマンスが上がらない4つの要因とEAPによる支援

パフォーマンス向上を阻害する要因には、主に以下の4つが挙げられます。

要因① スキル不足
・同じミスを繰り返してしまう
・タスクが管理できない etc.

【EAPコーチング支援例】
自己評価と周囲の評価のギャップを認識し、自己理解を深め、自身の強み・弱みを踏まえた業務の進め方等を検討

要因② コミュニケーションの課題
・周囲との連携がうまくいかない
・情報の理解と適切な処理ができない etc.


【EAPコーチング支援例】
コミュニケーションスキルの向上を支援
自身の得意・不得意を周囲にうまく伝え、支援を得て円滑に協業する方法などを検討

要因③ モチベーション低下
・業務に集中できない、むらがある
・やる気が出ない、空回りしている etc.


【EAPカウンセリング支援例】
原因が会社関係者には知られたくない悩みやプライベートな問題である場合は、外部EAPへの相談が有効な糸口となる可能性

要因④ 健康問題
・心身の不調が疑われる
・持病の悩みがある etc.

【EAPカウンセリング支援例】
心身の不調が疑われる場合は適切な医療機関・専門機関を紹介
早期対応による重症化の未然防止が重要



パフォーマンス向上支援の事例

ここからは、1on1コーチングによる支援の実例をご紹介します。

1on1コーチング 流れ


EAPコンサルタントが解説 パフォーマンス向上支援の事例解説

以下は、建設業界大手の営業部門管理職のBさんからの相談を受け、入社3年目のAさんのパフォーマンス向上を当社のEAPコンサルタントがサポートしたケースです。ただし、プライバシーを考慮して内容を修正しています。

① 部下Aさんの「パフォーマンス向上支援プラン」検討
(関係者:上司Bさん、人事育成担当Cさん、EAPコンサルタント)

1on1コーチング 関係者


まずは、Aさんの上司であるBさんとの面談を通して、EAPコンサルタントがAさんの状況や課題をヒアリングしました。



次に、関係者で話し合い、パフォーマンス向上に向けた目標設定を行いました。


1on1コーチング 目標設定


② コーチング(全5回)の実施

1回目

まず、ご本人の動機付けを実施しました。ご自身の課題意識や、全5回のコーチングで目指したい目標を、ご自身の言葉で言語化してもらいます。


コーチング 1回目

2回目

ご本人と話し合いながらパフォーマンス向上のための具体的な取り組みを検討し、取り組みの実践を次回までの宿題としました。コーチング期間中は、依頼者の上司Bさんに、Aさんの職場での様子や変化をヒアリングしてもらい、軌道修正を適宜行います。

コーチング 2回目

(中略: 3回目~5回目コーチング実施)

コーチング終結

5回目のコーチングが終了し、報告書を作成しました。ご支援によって達成できた目標、引き続き取り組むべき課題を「成果と今後への提言」としてまとめ、終結です。


コーチング 成果 今後

よくいただくご質問

Q: 決められた回数内で課題を解決できるのでしょうか?

A: 決められた回数で一定の成果を出すために、事前の打ち合わせを綿密に行います。依頼者(上記事例の場合は上司のBさん)とEAPコンサルタントが意見を合わせ、「対象者にとってどのようなアプローチが効果的か」を検討します。また、達成目標に関しても具体的で達成可能な目標を設定し、現実に即した問題に取り組みます。


Q: EAPの利用を本人に説得するには、どうすれば良いのでしょうか?

A: まず、対象者が改善の意思を持たない場合は、効果的な支援は行えません。対象者が自身の現状に困っており、解決したいと思っている場合には、EAPがその問題の解決をサポートできることを依頼者から伝えます。また、対象者がEAPの利用に否定的な場合には、パフォーマンスの向上が対象者にとって有益であることを説明し、動機づけすることをお勧めします。


Q: EAPの利用後も効果は継続するのでしょうか?

A: EAPの支援の基本スタンスは、対象者の自律的な行動をサポートすることです。そのため、EAPでのサポートが終わっても、相談者自身の努力によって継続して成果を得ることが可能です。ただし、これを維持するためには、相談者の意欲と企業側のサポートが必要です。



まとめ

部下のパフォーマンス向上を支援するのは管理職の重要な役割の一つですが、手を尽くしても目論み通りに進まないケースもあろうかと思います。現場での支援に限界を感じるような場合、EAPの活用が解決につながることがあります。外部のコンサルタントによるサポートが、部下やチーム全体のパフォーマンス向上に役立つ可能性もありますのでぜひご活用ください。

ピースマインドでは、EAPの外部相談窓口や個別ケースコンサルティングを提供しています。外部相談窓口では、自主相談、紹介相談、人事管理職相談など、個人や組織の課題解決支援を行っています。

また、個別ケースコンサルティングでは、本記事で紹介した1on1コーチングプログラムを提供しています。※EAPを導入していない場合でも、スポットでの個別支援を行っています。

ピースマインドのEAPに関する詳細はこちらでご覧いただけます。

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参考文献

※1 厚生労働省「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」

武田 英彦(たけだ ひでひこ)
武田 英彦(たけだ ひでひこ)
ピースマインド株式会社 組織支援コンサルティング部 EAPスーパーバイザー 公認心理師 臨床心理士 国際EAPコンサルタント(CEAP) 【専門分野】産業領域におけるカウンセリング、組織へのコンサルテーション(休復職支援・職場改善活動支援ほか)、ハラスメント事案調査、コーチング 飲食業にて店舗運営スーパーバイザー、番組企画制作会社にてテレビ番組の企画制作を担当。 その後、退職し心理系大学院に進学、臨床心理士の資格を取得。 国立精神・神経医療研究 センターでの臨床検査、東京都知事部局において、職員のメンタルヘルスケアに従事。 その後、ピースマインド株式会社に入社。現在、EAPコンサルタントとして社員と企業向けのコンサ ルティング業務を担当。

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