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産業医の選任義務とは?嘱託・専属の基準と失敗しない選び方

「産業医を選ばなければならないが、どのようなポイントで選べばいいのだろうか?」 「最近休職者が増えて対応が追いつかないため健康管理体制を見直したいが、どのように進めればいいのだろうか?」 と感じられたことはありませんか?

法律によって、常時50名以上の従業員が働いている事業場では産業医を選任することが定められています。
本記事では、産業医を選ぶ際に是非とも知っておきたいポイントをご紹介します。

<この記事を読むとわかること>
・産業医を選任しなければならない基準
・自社に合った産業医を見つける方法

目次[非表示]

  1. 1.産業医の選任義務とは?
    1. 1.1.法律と罰則
    2. 1.2.嘱託産業医と専属産業医の違い
    3. 1.3.産業医選任の基準
  2. 2.自社のニーズに合う産業医を選ぶには?
    1. 2.1.企業として産業医に何を求めているかを明確にしておく
    2. 2.2.産業医を探す方法
  3. 3.まとめ
  4. 4.ピースマインドの提供する産業医業務受託サービス

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産業医の選任義務とは?

産業医の選任義務については、労働安全衛生法(※1)と労働安全衛生規則(※2)に記載があります。具体的にはどのような義務が事業者に課されているのでしょうか。


法律と罰則

産業医の選任義務は、労働安全衛生法と労働安全衛生規則によって定められています。

「事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。」(労働安全衛生法第十三条)
「産業医を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に選任すること。」(労働安全衛生規則第十三条一項)

産業医選任については、後で掲載する事業場の規模に応じて、選任する必要が生じてから14日以内に選任しなければなりません。また選任したら、所轄の労働基準監督署に選任届を提出する必要があります。
産業医選任の義務に違反した場合、50万円以下の罰金が科されます。


嘱託産業医と専属産業医の違い

産業医の選任義務は先ほどの法律によって定められていますが、産業医には嘱託専属という2つのタイプがあります。

嘱託
・常時働く従業員が50〜999名の事業場で選任する必要がある
・産業医の資格を持った開業医などが非常勤で契約に応じた回数/時間訪問する
・常勤ではないので、事業場への理解度や関わりが限定的になる場合もある
・非常勤なので報酬は抑えられる

専属
・常時働く従業員が1000名以上(特定業務では500名以上)の事業場で選任する必要がある
・産業医が週3~5日程度事業場に常勤している
・事業場内にいるので、事業場への深い理解や関わりが期待出来る
・常勤でいるので報酬額は嘱託に比べて高い

次の章では事業場の規模による選任基準の違いを詳しく見ていきます。


産業医選任の基準

産業医選任の基準に関しては、以下の3点が重要なポイントとして挙げられます。


ポイント①事業場の規模に応じて選任

ポイント②従業員1000名以上の場合は「専属産業医」

ポイント③特定業務の場合は従業員500名以上で「専属産業医」


以下でそれぞれのポイントを詳しく解説します。


ポイント①  事業場の規模に応じて選任

産業医の選定義務には事業場の規模によって、以下の表のような違いがあります。

事業場の人数
産業医選任の義務
~49名
なし
(医師等による健康管理等の努力義務)
50~999名

産業医1名以上(嘱託可)

1000~3000名

専属産業医1名以上
※特定業務は500名〜で専属産業医1名以上

3001名~

専属産業医2名以上


常時働く従業員が49名以下の事業場については、産業医の選任義務はありませんが、医師等による健康管理などを行うことが努力義務とされています。
常時働く従業員が50名以上の事業場は、産業医を1名以上選任する必要があります50名以上999人以下の場合、産業医は嘱託でも可とされています。
➤産業医の業務内容についてはこちら


ポイント②  従業員1000名以上の場合は「専属産業医」

常時働く従業員が1000名以上の場合は、専属産業医を選任する必要があります。
専属の産業医は、事業者と直接雇用契約を結び、原則として1つの事業場に常勤して活動するため、嘱託産業医のように複数の事業場を掛け持ちすることはありません。(※)
専属産業医は常勤のため、従業員や会社との接点が多く、より密接なサポートが期待出来ます。


※ただし、親会社の専属の産業医が子会社嘱託産業医を務めるなど、一体として産業保健活動を行うことが効率的であると考えられる場合には、対象となる従業員3000人超えなければ兼任可能なっています。(※3)


ポイント③  特定業務の場合は従業員500名以上で「専属産業医」

労働安全衛生規則に定められた以下の14特定業務においては、常時働く従業員が500名以上の場合に、専属の産業医を選任する必要があります。


①多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務

②多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務

③ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務

④土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

⑤異常気圧下における業務

⑥さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務

⑦重量物の取扱い等重激な業務

⑧ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

⑨坑内における業務

⑩深夜業を含む業務

⑪水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務

⑫鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務

⑬病原体によって汚染のおそれが著しい業務

⑭その他厚生労働大臣が定める業務




自社のニーズに合う産業医を選ぶには?

「人数や業務内容によって産業医を選ばなければいけない基準があることは分かったけど、自社に合った産業医を選ぶ方法が分からない…」ということはないでしょうか。

ここでは自社に合った産業医を選ぶポイントとその方法についてご紹介します。


企業として産業医に何を求めているかを明確にしておく

産業医の関わるレベル


産業医に対する企業のニーズによって、産業医の関わりのレベルは変わってきます。

まず基礎的なものとして、基本的な法令遵守の為の健康管理体制構築・立ち上げや、不調者対応があります。初めて産業医に業務を委託する際には、こうした基礎的な部分から関わってもらうことで、企業における産業保健活動の基盤を築くことが出来るでしょう。

基礎的な部分がある程度確立してくると、メンタルヘルスや健康管理への対応が必要になります。具体的には、ストレスチェックや健康診断の実施、その面談と事後措置、長時間労働者への面談、などが挙げられます。また休復職者への対応とも合わせて、事業場におけるマニュアルの策定も必要です。

より発展的なニーズとしては、積極的な健康経営実現の為のコンサルテーションになります。従業員向けの研修の実施や、健康経営の実現に向けた経営層との連携、産業保健スタッフの取りまとめなどが含まれます。経験豊富な産業医と連携することで、事業場や従業員の健康保持・増進に大きな影響が見込まれます。

このように、産業医の企業への関与にはいくつかレベルがあります。この他にも、「メンタルヘルス対策に特化した先生が欲しい」「外資系企業なので外国語に対応している人がいい」「全国各地の事業所に対応して欲しい」など様々なニーズがあるでしょう。
企業として、産業医にどのレベルで関わって欲しいか、またどういった部分を重視している、などを明確にしておくことで、産業医とのミスマッチ防ぐことが出来ます。



産業医を探す方法

産業医を選ぶ時にチェックしておきたいポイントとして、以下のものが考えられます。

・産業医としての実績、経験
・対応出来る範囲
・自社のニーズに合っているか

まずは産業医としての実績、経験が重要になってきます。「産業医としてこれまでどのような企業で勤務してきたのか」「どのような取り組みをしてきたのか」といった情報は選任に当たっての重要な判断材料になります。

また産業医が対応可能な業務範囲も非常に重要なポイントになります。法定業務に加えてどれだけ企業に深く関われるかによって、産業保健活動全体のレベルが変わってくるでしょう。
自社のニーズに合っているかという点も見逃すことが出来ません。例えば、企業としてメンタルヘルスや健康経営に力を入れていきたいと思っているにも関わらず、選任した産業医の専門領域と異なり、取り組みが上手く進まない、というケースも少なくありません。

ではこのようなポイントを抑えた上で、どのように産業医を選任すれば良いのでしょう?
事業者が産業医を探す方法は、以下の通りです。

・近隣の医療機関に相談する
・健康診断を実施してもらっている健診機関に相談する
・地域の医師会に相談する
・人脈を活用して探す
・産業医を紹介するサービスを提供している会社を活用する

相談のしやすさという視点では、健診機関や関係者へ相談し、紹介された医師を選任する方法が挙げられます。また地域の医療機関や地域の医師会であれば、アクセスが良い点も魅力と言えます。しかし、契約の段階では、手続きを全て自社で行う必要があるなど、煩雑な作業が伴う可能性があります。また、紹介された医師が、事業者のニーズと合っておらず上手く機能しない場合に、産業医自体を見直すことが難しい場合もあるでしょう。

一方で産業医を紹介するサービスを提供している会社活用する場合、登録を行うだけで、自社の課題に即した産業医の提案を受けることができます。また、産業医紹介会社が面談した複数の産業医の中からより自社課題に即した産業医を比較して選ぶことができることもメリットと言えます。さらにこうした企業を活用することで、複数の拠点における産業医の紹介・選任を一括で依頼出来ることで、産業医と事業者との間での交渉を任せることが出来ます。加えて、選任後のフォローも実施されるため、途中で問題が生じた場合にも相談することが出来ます。


まとめ

近年関心が高まっている従業員のメンタルヘルスや企業の健康経営(*)への取り組みには、産業医は欠かせない存在と言えます。産業医の重要性は分かっていても、選任するとなるとハードルがあるように感じられた部分も多かったのではないでしょうか。より自社のニーズに合った産業医を選任することが出来るように、まずは「自社が産業医に何を求めるか」を明確にするところから始めてみましょう。


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参考情報

※1:労働安全衛生法
※2:労働安全衛生規則
※3:安全衛生情報センター「専属産業医が他の事業場の非専属の産業医を兼務することについて」
*健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

ピースマインド 産業保健推進チーム
ピースマインド 産業保健推進チーム
産業保健推進チームのメンバーが監修している記事です。

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