事例から紐解く!ストレスチェック実施後の個人結果活用法
ストレスチェック実施後、個人結果の活用はできていますか?
ご自身の結果を振り返らない方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
今回はストレスチェックの個人結果をもとに、ご自身で取り組むことのできる改善活動についてご紹介します。
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ストレスチェックの活用の重要性
ストレスチェックの目的とは?
ストレスチェックの目的は、労働者のメンタルヘルス問題を未然に防ぐことです。そのため、ストレスチェックの結果を活用することで、ストレスが高い人に対して対策を講じたり、より快適な職場環境を整えたりすることができます(※1)。
ストレスチェック実施後、受検者には個人結果が返却されますが、結果を本人の同意なく事業者や上司に提供することは禁止されています。そのため、ストレスチェックの活用は本人次第となっていることが多いでしょう。その中でも高ストレス者の場合は、結果の活用が上手くできていないと様々なリスクが考えられます。
高ストレス者の場合
高ストレス者とは、ストレス反応の自覚症状が高い方や、自覚症状が一定程度あり、ストレスの原因や周囲のサポートの状況が著しく悪い方を指します。高ストレス状態が続くと、メンタルヘルス不調に陥ったり、休職・離職に繋がったりするリスクが高まると言われています。
例えば、厚生労働者の『こころの耳』では、うつ病の症状について「気分の落ち込みや意欲の低下にとどまらず、脳の機能全体が落ちることによる集中力・記憶力・判断力の低下や、さまざまな身体症状」と定義しており、このことからも、うつ病などのメンタルヘルス不調になってしまった場合、仕事を効率的に行うことが困難になる可能性があります。
高ストレス者と認定された場合には、医師面接指導を受けることができます。面接を受けることで、ストレスの要因や周囲の環境などを把握し、ストレスへの予防や対処などの支援を行う専門家のサポートを受けながら課題に対応することができるのです。
ストレスチェックの個人結果を振り返るメリット
高ストレス者でない場合にも、ストレスチェックの個人結果を振り返ることで、以下のようなメリットがあります。
以下からは、得られた個人結果をどのように振り返ればよいか、具体的な方法をご紹介します。
事例から課題を細かい要因に分解する
個人結果の振り返りの第1歩として、課題を構成する要素を考えるという対応があります。課題が漠然としたままでは、具体的かつ、効果的な改善策を考えることが難しいため、課題を細かい要素に分けて、それぞれへのアプローチを考えることが大切です。
それでは、課題をどうやって細かく分解して考えるのでしょうか。ここからは3つの具体的な事例を紹介します。
※実際にピースマインドでお受けした相談内容をもとに、プライバシーに配慮し修正を加えてまとめています。
【CASE1】やりがいがある反面、業務のレベルを負担に感じる
若手社員B「大きな仕事は自分の成長につながるから頑張りたいけれど、ちゃんとできるかどうか、とても不安に感じる」
この事例は、モチベーションはあるものの、業務レベルの高さが負担になっている若手社員の方の事例です。この方のストレスチェックでは、「質的負担」の項目が高く、「上司からのサポート」の項目が低い結果となりました。課題の要素の一つとして、周囲のサポートを活用しきれていないことが考えられます。組織としては困ったときに相談しやすい環境をつくることや、フィードバックの機会を設けることが具体的な課題となるでしょう。
また、元々部下が自身の不調を感じていたものの、何らかの不安があり言い出せず、結果的に不調を悪化させてしまった可能性も考えられます。他の社員も上司に相談しづらい場合は、組織の心理的安全性が低いのかもしれません。
改善策として、職場全体のコミュニケーションの量を増やすことが考えられます。自己開示を使ったコミュニケーション等を心掛け、互いの信頼感が深まることで、相談しやすい環境につながるでしょう。
また、自発的なコミュニケーションが苦手な社員がいる場合は、対応の一つとして文字ツールの活用があります。発話のコミュニケーションより、文字のコミュニケーションが得意な方もいるため、質問シートやチャットを活用することで、相談しやすくなることがあります。ただし、ミスコミュニケーションを予防するために、指示を出す際は「これくらいは分かるだろう」と曖昧な指示ではなく、明確かつ具体的な指示を出しましょう。
【CASE2】上司の割り振る業務量が多く、ストレスが高まる
社員C「上司が自分にたくさん業務を振ってくる。業務量が多すぎて、対応できる自信がない」
この事例は、上司のマネジメント方法に不満を抱いている部下の方の事例です。この方のストレスチェックでは、「量的負担」の項目が高く、「仕事のコントロール」の項目が低い結果となりました。
課題の要素の一つとして、業務に対する互いの合意の形成が十分ではないことが考えられます。業務を割り振る前に、上司と部下の間でモチベーションや不安に感じていることについて共有することが具体的な解決策となるでしょう。業務の目的や、大きな流れの中での業務の位置付けを共有することで、協働意義を高めることができます。
そして、業務が進行する中では、業務をスモールステップに分けて、他の社員にも進捗が分かるように”見える化”することで、適宜状況を確認することができます。このように、細かく双方的なコミュニケーションを取って、業務の進捗や心境を共有することが課題解決のポイントとなります。
このように、業務を任せるところから業務を遂行する間まで、細かく双方的なコミュニケーションを取って、業務の進捗や心境を共有することが課題解決のポイントとなります。
【CASE3】職場の対人関係やハラスメントによって、自由に意見が言いにくい
社員D「上司の顔色を伺わないと意見が言えず、社員同士でもあまり意見交換ができない」
この事例は、周りの反応を気にして自由に意見を言いづらい部署にいる社員の方の事例です。この方のストレスチェックでは、「職場環境によるストレス」の項目が高く、「上司からのサポート」の項目が低い結果となりました。
課題の要素の一つとして、過度な緊張があり、安心して意見を言い合える環境ではないことが考えられます。相手の話を否定しないことや、相手と自分の両方の意見を尊重することが具体的な課題となるでしょう。
そのために心理的安全性を確保することが必要です。心理的安全性とは「反応を気にして発言を控えたり、意見を述べることを誰かに咎められたりすることなく、自分の率直な気持ちや反対意見について自由に発言できる状態」のことを指します。心理的安全性が低い組織では、表面的なコミュニケーションにとどまり、情報交換や相互理解が深まらないことで、業務上のミスや、進捗の遅延が起こる場合があります。対して、心理的安全性が高い組織はコミュニケーションが活発になり、課題への遂行の効率と質が高まることがGoogleの研究よりわかっています(※4)。
心理的安全性の土台となるのは、傾聴です。まず相手の話をしっかり聞くことで、「自分の考えが受け止められている」という安心感につながります。
心理的安全性を向上させるには、ポイントがいくつかあります。
これらのポイントを意識した双方的なコミュニケーションを行うことで、心理的安全性が高まり、ストレスの要因となっている課題に対してアプローチすることもできます。
心理的安全性について、さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
5つの事例からわかる行動改善のポイント
これまで、さまざまな課題に対する組織としての具体的な解決策を考えてきました。それぞれの課題解決に共通するポイントは、双方的なコミュニケーションの工夫が重要であることです。
どちらか一方の考えを伝えるだけでは、ミスコミュニケーションによって、互いの認識の間に溝が生まれる可能性があります。そのため、上司と部下、また企業と従業員の間で双方向のコミュニケーションを積み重ねることが大切であり、相互理解を深めることにも繋がります。またコミュニケーションの方法においても、相手の意見を尊重しながら、自分の意見も上手に伝えるとよいでしょう。
部下とのコミュニケーションで気をつけるべきポイントについては、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
まとめ
本記事では、ストレスチェック実施後の職場改善環境の方法の一つとして、心理的安全性にもとづいた双方向的なコミュニケーションの工夫を紹介しました。
コミュニケーションの積み重ねや工夫によって課題は改善されることがあります。そして、業務量の調整や設備の拡充に比べて、実践に取り入れやすいと考えられます。
今回紹介した事例を一例として、ストレスチェックの分析からわかった課題を細かい要素に分解し、それぞれ対応するアプローチを考えて、ぜひ実践してみてください。
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