復職者への接し方のポイントは?
メンタルヘルス不調者が増えている昨今(※1)、従業員の休職や復職への適切な対応が、今まで以上に求められるようになりつつあります。
特に、メンタルヘルス不調が原因で休職をした従業員の復職に関しては、個々人に合わせた対応に苦慮されている人事・管理職ご担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。本記事では、復職者への適切なサポート方法、再休職防止のためのポイントについてご紹介します。
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目次[非表示]
- 1.復職者のケアは本人のみならず職場全体のためにも必要
- 1.1.復職者の約半数は5年以内に再発または再休職
- 1.2.再休職の原因と対策を確認
- 2.休復職者への接し方のポイントとは?
- 2.1.休復職に関する社内の役割分担
- 2.2.①専門家につなぐ
- 2.3.②情報共有して対策を講じる
- 3.タイプ別に休復職支援を考える
- 4.社外資源の活用で復職者支援がスムーズになるケース
- 4.1.EAPご利用までの経緯
- 4.2.初回セッションでの対応
- 4.3.その後の経過(2回目~終結まで)
- 5.まとめ
- 5.1.参考資料
復職者のケアは本人のみならず職場全体のためにも必要
まずは復職者へのケアが重要な背景について紹介し、復職者の再休職が起こる原因と、対策について解説します。
復職者の約半数は5年以内に再発または再休職
厚生労働省の報告によると、平成28年度におけるうつ病で休職した社員のうち47.1%が5年以内に再発、再休職をしていることがわかりました(※2)。
このように、うつ病での休職者のうち約半数が再休職をしていることを考えると、職場復帰後のフォローアップが重要であると考えられます。また、再び休職となれば、職場の復帰支援策が不十分であったと本人やその周りの社員から思われかねないため注意が必要です。
再休職の原因と対策を確認
再休職は、本人も職場も望んでいない結果と考えられます。再休職を防ぐにはどうすればよいでしょうか。再休職の原因と、それぞれの対策について確認してみましょう。
①主治医の診断書/意見書のみでの復職判定
主治医の診断書/意見書のみで復職を判定し、再休職となるケースです。対策は大きく2つです。1つ目に、診断書/意見書の提出後、産業医との面談や、復職判定検討会を実施するとよいでしょう。2つ目に、診断書/意見書の提出後、模擬勤務や通勤練習を行い、記録をつけ職場と共有することが効果的です。
②再発予防トレーニングが不十分
メンタルヘルス不調を予防するためのトレーニングが十分でないため、再休職が必要になるケースです。対策としては、復職者本人にとってストレス要因が何かを把握し、自身のストレス反応に気づけるようになることです。認知行動療法などによって、自らのものの捉え方のパターンを知り、より適切な対処法を身につけることも、再発予防に効果的だと考えられます。
③復帰する職場環境の調整不足
復職者のストレス要因になっていた職場環境に復帰したことが原因となり、再休職となるケースです。以下3つの対策が考えられます。1つ目に、復職前に休職者と管理職が、復職後の業務内容・職場環境について確認作業を行うことです。2つ目に、ストレス要因となっていた職場環境の調整が可能かを検討することです。3つ目に、可能であれば職場環境の調整をすることです。
上記3つの原因以外にも、症状や必要な対応は再休職される方それぞれで異なりますので、本記事の後半で休職者の代表的な例を見ていきましょう。次章では、休復職者の個別対応をスムーズに行うために、会社で誰がどのように対応すればよいかを確認します。
休復職者への接し方のポイントとは?
職場として、いつ・誰が・どのように休復職者に対応すればよいのか整理しておくことで、休復職者のサポートがスムーズに行えると考えられます。職場での役割分担と流れを確認し、振り返ってみましょう。
休復職に関する社内の役割分担
人事/労務担当者・保健師は、休復職に関する情報提供や事務手続きを行ったり、配置転換、異動などの社内調整及び手配、管理者への助言・休職者へのケアサポートを行います。
管理職は、人事/産業保健スタッフと協力し、休復職者を受け入れるための職場環境の整備や就業上のサポートを行います。
続いてメンタルヘルス不調の再発の恐れがある休復職者に対しての、企業としての対応の流れを確認します。
①専門家につなぐ
異変を察知したら、復職者に対して「最近調子が悪そうに見えるのですが、大丈夫ですか?私でよければ話を聞きますよ。」と声を掛けてみましょう。本人が話すことを望まない場合には、無理に話す必要はありませんが、心配していることを伝えて専門家に相談することを勧めるのも一つの手です。相談にのる場合には、自分が解決してあげようとするのではなく、相手の話を受け止めたうえで専門家につなげることを念頭に置きます。
管理職はあくまでメンタルヘルス不調者の職場で発生している課題への対応(事例性)を担い、症状等の疾病性に関する判断や対処は医師の役割です。つまり、病名を特定することは医師の仕事で、管理職の役割は復職者の職場における不調や支障をきたしている状況を把握し、専門家につなぐことです。
また、専門家の中でもカウンセラーはカウンセリング、つまり悩みを抱えた人それぞれの状況にしっかりと耳を傾け、個々の状態に合わせた対応を行うことを専門とするため、病院に行くかどうか迷っている場合におすすめです。メンタルヘルス不調の症状を客観的に判断してもらうことで、受診への心理的ハードルが下がり、正確な情報を得られます。
②情報共有して対策を講じる
次に行うことは、管理職自身の上司に対して情報を共有することです。メンタルヘルス不調者から相談を受けた際に、誰にも言わないで欲しいと言われた場合には、まずは相談者の情報は匿名で、カウンセラーや上司に相談することをおすすめします。
相談内容は、相談者本人の同意を得ずに第三者に話してはいけませんが、リスクがある場合などは、主治医や産業医、上司や人事といった適切な人に共有した上で連携し、チームとして動き、支援することが管理職の孤立を防ぎ、企業としての対応を円滑に進めることにつながります。
職場での適切な役割分担を意識することで、休復職者サポートがスムーズに進むと考えられます。また、チームで情報を共有し動くことは、支援者である管理職のメンタルヘルス不調防止のためにも必要となるでしょう。
タイプ別に休復職支援を考える
各休復職者により、適切な支援の方法も様々です。休職者の代表的な3タイプを例に、支援方法を考えてみましょう。
タイプ①「大丈夫です」と言っていたのにある日突然の欠勤...
<休職前>
休職前の様子としては、仕事を抱え込みがちで残業が多いことや、集中力の減退などによって、作業スピードの遅れが目立つことが特徴です。また、判断力が問われる業務で、判断ができなくなるという傾向がみられるのもこのタイプに多くみられます。このタイプの方は、周りが異変に気づき声をかけても「大丈夫です」といってなかなか病院に行かず、結果として、症状が悪化して休職せざるを得なくなってしまうと考えられます。
<休職中>
休職開始から1~2か月は活力がなく殆ど何もしない状態が続き、人との関わりを忌避する傾向がみられますので、きちんと休職中も連絡がとれるように休職する前に定期連絡に関しての取り決めを行っておくとよいです。
<復職支援のポイント>
復職時は、基本スモールステップでの復職が望ましいです。リハビリ勤務、時短勤務等の利用が可能な場合は利用を推奨しましょう。
復職後は定期的な面談の場を設け、本人の状態を確認しつつ、徐々に業務量を上げていくとよいです。併せて、主治医もしくは産業医の意見聴取も行うと効果的です。
タイプ②職場では不調だがプライベートは元気な様子...
<休職前>
業務中はとてもつらそうにしているが、仕事以外の場では元気というタイプです。
休職前の様子としては、業務内容や対人関係におけるストレスが高く、体調面の不調を訴えるケースもあります。「この仕事に向いていない」「あの人とは合わない」等の発言がみられることもあります。業務以外のことや職場外では比較的活力のある元気な様子が特徴的です。
<休職中>
休職によってストレスの原因である職場から離れることで、早期に体調が回復し、好きなことができるようになりますが、休職はあくまでも療養中であるので生活リズムに沿った行動を勧めましょう。
<復職支援のポイント>
復職検討の際に、部署異動を希望する意志を伝えられる場合があります。復職日が近づく、または復職後に不安・不調が強く現れる傾向があるため、ラインケアが重要なポイントとなり、管理職は本人の様子を伺うことが求められます。
復職後は、原因が「業務不適応」と「対人関係不適応」の場合で対応が異なります。業務不適応の場合、再度OJT体制を整え、習熟度を見極めながら業務を与えるといった調整をしましょう。対人関係不適応の場合は、復帰直後は課題となったメンバーとの関わりをできる限り少なくすることを検討することが必要です。
タイプ③気分と業務パフォーマンスに著しくムラがある...
<休職前>
上記の2つのタイプと比べると少ないですが、一定数このような傾向の方もいます。気分のムラが目立ち、高まっている時とそうでない時の業務態度・パフォーマンスに差があることが特徴です。気分が高揚している時には、周囲を巻き込む言動や新たな企画提案を好む傾向があり、その様子に周囲が違和感を覚える場合もあります。
<休職中>
気分の上がり下がりが激しいため、少し元気になると復職を希望する傾向があります。しかし、気分の変動が激しいタイプなので、復職希望時点の様子だけですぐに復職とはせずに主治医としっかり相談しましょう。また、「生活記録表」を付けて一定期間、状態が安定しているかどうか確認することも重要です。また、ストレス対処法を習得していけるようにサポートしていくことも必要となります。
<復職支援のポイント>
復職時の工夫として、気分の高揚が顕著な場合、復職前に「気分が著しく高揚する傾向があった際、医療機関を受診する」旨の書面に署名してもらう等、再発防止策を講じるとよいです。
復職後、業務量は本人の様子をみながら段階的に上げていきましょう。主治医と連携の上、仕事の任せ方を検討することが妥当です。
社外資源の活用で復職者支援がスムーズになるケース
復職者の不調に対して、自社資源のみならず、外部資源の活用をすることで、適切な対応につながることがあります。以下では、「復職後すぐ再休職に至った従業員の復職支援」に、ピースマインドのEAP(従業員支援プログラム)を活用した事例をご紹介します。
EAPご利用までの経緯
ご相談者様は、入社10年目の40代女性、B課長です。
B課長の部下Aさんは、業務量増加と家族の介護負担が重なり、睡眠障害、意欲の低下、緊張が取れない、不安感など不調があらわれ、1か月休職しました。その間に家族の施設入所が決まり、介護負担が軽減したということで回復し、復職したものの、2カ月ほどで再度不調をきたし2度目の休職に入りました。
産業医からは、 Aさんの回復状況の確認、休職の振り返りと再発防止策の検討のためリワーク利用を勧められましたが、Aさんはそれを拒否したとのことでした。
B課長はEAPの人事管理職相談(※a)を活用しました。Aさんにも紹介相談(※b)でのカウンセリングを受けてもらい、回復状況の確認、休職の振り返りと再発防止策の検討を行えばどうかと産業医からアドバイスをもらいました。
(※a)人事管理職相談は、人事や管理職の方がマネジメントに関する相談ができる窓口のことです。
(※b)紹介相談は、人事や管理職の方より紹介頂き、本人にもカウンセリングを提案できる窓口のことです。
初回セッションでの対応
ヒアリング
初回セッションでは、EAPコンサルタントがこれまでの経緯を丁寧にヒアリングします。
課題整理
相談者のB課長とEAPコンサルタントなど、支援者の双方で課題感を確認します。また、カウンセリングで取り組む目標を明確化しました。その際、「職場で、B課長がAさんに何をサポートしたらよいか」、整理しておくことをアドバイスしました。
提案
まずは、産業医との情報共有の場を設定します。共有の場では、産業医からみたAさんの課題の見立て、カウンセリングに期待する効果を伺いながらディスカッションを行います。最終的には「Aさんのカウンセリングプラン」と、「B課長の役割を検討すること」を、EAPコンサルタントより提案し、合意しました。
その後の経過(2回目~終結まで)
支援者の目標共有
産業医も参加し、セッションを実施しました。産業医からあげられた、「休職の経緯の認識の浅さや再発予防策が持てていない」というAさん自身の課題をふまえ、EAPコンサルタントから、「Aさんのカウンセリングでは今回の休職の振り返りを通して、Aさんの自身の傾向への気づきと理解を深め、それを踏まえた再発防止策をたてる」プランを提案しました。
B課長の役割は「職場で立案された再発防止策の実施状況と就労している様子の観察」とし、Aさんへのサポートの仕方についてEAPコンサルタントが随時サポートすることとなりました。
Aさんの復職前セッション
B課長とEAPコンサルタントで、Aさんがたてた再発防止策を共有しました。それに合わせB課長がサポートする点として、「1週間に1度の面談を設定すること」、「残業時間の超過の際はリマインドをし、業務量調整の相談をすること」を決定しました。
また、カウンセリングで得られたAさんの「完璧主義な面がある」、「相談をすることに引け目を感じがちな傾向がある」という情報を踏まえ、面談や関わり方の工夫をEAPコンサルタントと検討し、実践しました。
復職後~相談終結
途中、設定した残業時間を超えて業務をした疲れから遅刻などもありましたが、B課長が残業時間の超過をリマインドしたり、面談の中で「適切なタイミングで業務量をコントロールし、休養をとることはよいセルフマネジメントである」とアドバイスしました。Aさんの早めの業務量調整と有休取得を前向きに行い、立て直すことができました。
産業医にも報告し、当初の課題はクリアできているとの意見を得ました。
そしてB課長から、「以前は本人が大丈夫というから、それ以上の関わりはできていなかった。以前よりも互いに信頼感を感じているのでやっていけそうです。」と話があり、サポートの終結としました。
このように第三者とセッションを行うことで、課題整理、目標設定、それに基づいた実践など、不調者のサポートに必要なことが明確になり、課題解決がスムーズに進む効果が期待できます。「復職者の再不調にどのように対応すればよいか迷っている」といったお悩みをお持ちの担当者の方は、社外資源活用の検討をお勧めします。
本記事では「復職者への接し方」にスポットをあてましたが、「社員の休職開始から復職後までの全体的な流れ」を理解したい方は、こちらの記事も是非ご覧下さい。
まとめ
再休職は、職場の復帰支援策が不十分であったと本人やその周りの社員から思われかねないため、企業にとってもリスクになる可能性があります。
症状や必要な対応は、休復職者それぞれで異なりますので、社外サービスも活用しながら効果的な方法を検討する必要があります。
休復職者と他の社員の双方がはたらきやすい職場づくりのため、休復職者にどのように接するのか、職場として見直してみることをお勧めします。
ピースマインドでは、「休職者を減らしたい」「個別社員の職場復帰プランの作成方法がわからない」等の課題に、休職前から復職後の再発防止まで各段階に応じてEAP(従業員支援プログラム)コンサルタントがサポートいたします。
年間約2万件の相談対応実績を持つピースマインドのEAPコンサルタントが、人事・管理職・産業保健スタッフと連携し、職場および当該社員の課題解決を伴走支援いたします。
参考資料
※1 平成28年度総括・分担研究報告書「労災疾病臨床研究事業費補助金」
※2 厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」