あなたの言動、パワーハラスメントではないですか?予防のためのセルフチェック
ハラスメント対策が求められる昨今、部下との適切な関わりに悩む管理職の方もいらっしゃると思います。良かれと思って指摘や叱責したものの、「部下からハラスメントと言われた」ということが起きないよう、日頃のコミュニケーションや、自身の言動を定期的に見直す機会を作ることが重要です。
本記事では、無自覚に起こり得るパワーハラスメント(以下、パワハラ)を予防するためのセルフチェックや、パワハラ予防につながる部下との円滑なコミュニケーション方法をご紹介します。
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目次[非表示]
- 1.パワハラについて
- 2.言動をセルフチェック
- 2.1.セルフチェックの重要性
- 2.2.セルフチェックの実践
- 2.3.自身の言動改善のために
- 3.上司と部下の円滑なコミュニケーションのコツ
- 3.1.部下とのコミュニケーションの基本姿勢
- 3.2.定期的な1on1ミーティング
- 4.まとめ
- 4.1.参考情報
パワハラについて
パワハラとは
自身の言動を振り返る前に、まずはパワハラについて正しく理解する必要があります。厚生労働省は、パワハラを「優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるもの」(※1)と定義しています。
では、具体的にどのようなものでしょうか。厚生労働省では、過去の裁判例などに基づき、職場のパワハラの典型例として、以下6つに分類しています。
無意識のパワハラ
身体的な攻撃といった目に見えるパワハラの事例は減少しつつあるため、「自分がパワハラをしている可能性があるかも」と思われる方は少ないかもしれません。しかし昨今問題視されているケースは、行為者自身がまったくパワハラと思っていない、いわゆるグレーゾーンなものです。
例えば世代間ギャップを考慮せずに、自分が若いときに受けた厳しい指導を自分の部下にするケースが挙げられます。また、指導のつもりが無意識のうちに大声で叱責していた、部下が話しかけても無視する、などもグレーゾーンに該当します。一度きりの言動では相手がパワハラと捉えなくとも、頻度が増えることによって、これらの言動を相手がパワハラと認識している可能性があります。
このようにグレーゾーンな言動が蓄積すると、受け手はパワハラと捉え、職場における心理的安全性、生産性が下がってしまいます。そのため、自身の言動を定期的に振り返り、パワハラを未然に防ぐことが必要です。
言動をセルフチェック
まずはセルフチェックの重要性を確認し、実際に行ってみましょう。また、自身のパワハラ行為を認識した場合の言動改善につながるヒントもご紹介します。
セルフチェックの重要性
パワハラのセルフチェックは主に2つの効果があります。
1つ目に、定期的に振り返ることで、無意識に行いがちなパワハラに対し改善できる可能性があることです。2つ目に、企業のコストを抑えられる点です。社員自らがチェックを行い、パワハラ予防に取り組むことで、企業の社会的信用の棄損や、損害賠償といったパワハラ対処にかかるコストを抑えられます。
これらの理由から、セルフチェックを定期的に実施し、自身の言動を振り返ると良いでしょう。
セルフチェックの実践
自分では思い当たる節がなくとも、相手からはパワハラと認識されている場合があります。それでは、セルフチェックをしてみましょう。以下の言動、していませんか?
(※2)「あかるい職場応援団 ハラスメントって言われた!管理職の方 どんなハラスメントかチェック」よりピースマインド作成
(注)客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワハラには該当しないことに注意が必要です。
いかがでしょうか。上記の項目は全てパワハラと判断される可能性があります。当てはまった項目があれば、以下から理由を確認してみましょう。
休みの理由を根掘り葉掘りしつこく聞く。
⇒業務遂行に当たって、私的なことに関わる不適切な発言や私的なことに立ち入る管理などは「個の侵害」となります。こうした事例では、どのようなことが「業務の適正な範囲」を超えるパワハラなのか、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによって判断されます。業務上の理由で、休暇の予定を把握したい場合には、その旨を説明した上で、尋ねるようにしましょう。また、休暇の取り方や情報共有の仕方について、職場内の認識を揃えることも大切です。
他の社員との接触や協力依頼を禁じる。
⇒職場の上司や先輩、古くから勤めている社員など、職場内での優位な立場の人が必要もないのに、無視や仲間外しなど仕事を円滑に進めるためにならない行為を行えば「人間関係からの切り離し」となります。
終業間際に過大な仕事を毎回押しつける。
⇒業務上、明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害があった場合、「過大な要求」となります。また、業務上の些細なミスについて見せしめ的・懲罰的に就業規則の書き写しや始末書提出を求めたり、能力や経験を超える無理な指示で他の社員よりも著しく多い業務量を課したりすることは、「過大な要求」型のパワハラに該当することがあります。
営業職なのに、雑用ばかりを必要以上に強要する。
⇒業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや、仕事を与えないことは「過小な要求」となります。
皆の前で、些細なミスを大声で叱責した。
⇒「やめてしまえ」などの社員としての地位を脅かす言葉、「バカ」「アホ」といったひどい暴言は、業務の指示の中で言われたとしても、業務を遂行するのに必要な言葉とは通常考えられません。このため、こうした暴言による精神的な攻撃は、原則として業務の適正な範囲を超えており、パワハラに当たると考えられます。
部下、後輩から挨拶されても無視、会話さえしていないことが日課になっている。
⇒職場の上司や先輩、古くから勤めている社員など、職場内での優位な立場の人が必要もないのに、無視や仲間外しなど仕事を円滑に進めるためにならない行為を行えば「人間関係からの切り離し」型のパワハラに当たると考えられます。
自分が誤った指示をしたのに、始末書を書かせた。
⇒業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害があった場合、「過大な要求」となります。他にも、終業間際に過大な仕事を毎回押しつけるなど、能力や経験を超える無理な指示で他の社員よりも著しく多い業務量を課したりすることは、「過大な要求」型のパワハラに該当することがあります。
部下がミスをしたとき「役立たず」「給料泥棒」と言う
⇒「おまえは小学生並みだな」「無能」などの侮辱、「バカ」「アホ」といったひどい暴言は、業務の指示の中で言われたとしても、業務を遂行するのに必要な言葉とは通常考えられません。このため、こうした暴言による精神的な攻撃は、原則として業務の適正な範囲を超えており、パワハラに当たると考えられます。
部下がミスをしたとき、一人だけ別室で仕事をさせる。
⇒その行為は、「人間関係からの切り離し」型のパワハラです。職場の上司や先輩、古くから勤めている社員など、職場内での優位な立場の人が必要もないのに、無視や仲間外しなど仕事を円滑に進めるためにならない行為を行えば「人間関係からの切り離し」型のパワハラに当たると考えられます。
不在時に机の上や鞄の中身を勝手に物色した。
⇒業務遂行に当たって、私的なことに関わる不適切な発言や私的なことに立ち入る管理などは「個の侵害」型のパワハラになります。
これらはパワーハラスメントのほんの一例にすぎません。自身が行っている他の行為がパワハラに該当しないかどうか詳しくチェックしたい方は、厚生労働省作成のチェックリストを利用することをおすすめします。
尚、上記のチェック項目について、どのようなことが「業務の適正な範囲」を超えるパワハラなのかについては、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによっても左右されます。そのため、職場での認識をそろえ、その範囲を明確にする取組を行うことが望ましいです。
自身の言動改善のために
ご自身のパワハラ行為を認識したとしても、個々が抱える課題は様々だと思います。課題やご自身の特徴に応じて、必要な対処法は異なりますが、多くのパワハラ行為者に共通していることは、「自身の常識を相手に押し付ける」「相手の立場を考慮しない」点だと言えます。その際は怒りのコントロールに関する研修などを活用し、イライラする原因や怒りの傾向について自己理解を深め、対処法を考えることも大切です。
例えば相手の言動で頭に血が上ったとき、相手に「改善してほしい」という思いよりも、イライラが先に出てしまうと、自分の思いが適切に伝わらないことがあります。怒りをコントロールすることで、自分の思いを誤りなく伝え、お互いが気持ちよく働ける環境につながります。詳しくは以下の記事をご参照ください。
次章では比較的取り組みやすい、上司と部下のコミュニケーションのコツをご紹介します。日常的なコミュニケーションは信頼関係の醸成に繋がり、信頼関係があると認識のズレが生じづらく、ハラスメント発生の予防となりますので、確認してみましょう。
上司と部下の円滑なコミュニケーションのコツ
パワハラ事案発生のリスクとなるような言動を避けるだけでなく、日頃のコミュニケーションを活発にすることで、部下との信頼関係を築くことができます。この章では、様々あるコミュニケーション術の中から、部下と関わる際に使える2つのコツをご紹介します。
1つ目の「相互尊重の姿勢」は、部下との関係のみならず、良好な人間関係を築くうえで大切なコミュニケーションの姿勢です。2つ目の「1on1ミーティング」は、部下の状況を把握することに加え、お互いの信頼関係を構築する効果があります。
部下とのコミュニケーションの基本姿勢
まずご紹介するのは、良好な人間関係を築く上で有効となる、基本的なコミュニケーションの姿勢です。その中でもパワハラの防止に有効なポイントは「相互尊重」の姿勢です。「相互尊重」の姿勢とは、「自分の意見は率直かつ明快に伝えるけれど、相手の話も聞くことで、両者のアイデアや力の掛け算の成果が生まれ、相互の信頼関係も深まる」という対話姿勢です。この姿勢は相手の立場や考えへの配慮が不足することで発生する、パワハラを抑制することにも大きく貢献します(※3)。
続いて「相互尊重の姿勢」を踏まえた伝え方である、「しない3原則+2」をご紹介します。
これは
①感情的な叱責はしない
②不快・やめてほしいと言われた行為は繰り返さない
③人格・人間性の否定はしない
ことに加えて、
①言い過ぎたと思ったら謝る
②改善してほしいことについては明確かつ具体的に伝える
ことです。
やみくもに怒ることや指導の意図が伝わらないということを無くし、効果的な指導を行うのに有効な手法です。上司の皆さまは、「しない3原則+2」に自身の言動を照らし合わせ、部下への伝え方が適切かどうか、振り返ることが重要です。以下の記事で、さらに詳しく解説しています。
定期的な1on1ミーティング
続いては、「定期的な1on1ミーティング」です。1on1ミーティングとは、定期的にチームのメンバーそれぞれと1対1で面談を行うことです。
・現在の業務についてどのような不安を感じているのか
・それにどう対処することが出来るのか
・どのようにサポートし、何を目標に努力させるのか
という事を定期的な面談の場で共有し、部下の成長に向けて伴走します。このようなミーティングは部下の状況を把握することに加え、お互いの信頼関係を構築する効果があります。1on1ミーティングで行うようなコミュニケーションは、上司と部下が円滑に業務を進めていく上で必要になりますので、導入を検討してみましょう。
まとめ
パワハラ対策への社会の関心は高まっているものの、無意識なパワハラという課題は依然として残っています。自身の言動がパワハラに該当するリスクは誰にでもあり、決して他人事ではないといえます。定期的なセルフチェックでパワハラを未然に防ぐことが、働きやすい職場づくりのために重要です。加えて、「円滑なコミュニケーションの構築」といった面からも、パワハラ防止に取り組むことが可能です。
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➤お役立ち資料のダウンロード「ハラスメント対策支援サービス事例集 」
参考情報
※1. 厚生労働省”あかるい職場応援団 ハラスメント基本情報”(最終閲覧日2022/6/10)
※2. 厚生労働省 “あかるい職場応援団 「ハラスメントって言われた! 管理職の方」どんなハラスメントかチェック”(最終閲覧日2022/6/10)
※3. 厚生労働省”あかるい職場応援団 第1回自分も相手も尊重する”相互尊重”コミュニケーション”(最終閲覧日2022/6/10)