2023-11-02 8:49
今回のご相談者
IT企業C社 マネージャー (従業員数850名/本社所在地:東京都目黒区)
ピースマインドEAP(スタンダートモデル)を導入し約3年が経過。
第4回で部下とのかかわり方についてミスターパインへ相談しに来た。
お助けマン
EAPやストレスチェックなど、ピースマインドが提供するサービスのご担当者が抱える課題を解決し、企業にお勤めの皆さまの「はたらくをよくする®」ことに喜びを感じながら日々活動している相談役。趣味は英会話。
厚木さん「パインさん、先日は相談にのっていただき、ありがとうございました。あの時、部下とのかかわり方の悩みをカウンセラーに聞いてもらえて、自分の振る舞いを客観的に見ることができました。」
パイン「That’s good to hear! あれから1年くらい経ちますが、その後はいかがですか?少しお疲れのようにも見えますが…」
厚木さん「リモートワークが解除になったので、部下の様子が見えるようになって、マネジメント自体はやりやすくなりました。ただ、見えるようになっただけに、いろんなことが気になって。メンバーとのコミュニケーションはまめに取れていると思いますけど、正直少し疲れも感じますね。」
パイン「Got it. 厚木さん自身、部下の方にかなり気を配られていらっしゃるんですね。部下の方にとっては嬉しいかもしれませんが、ちょっと疲れも感じてしまうと。」
厚木さん「そうですね、割といろんなことが気になる性格なのと、完璧主義なところもあるかもしれません。自分でやらなきゃって考えがちなので、前回相談させていただくのもちょっと勇気が必要だったんですよ(笑)」
パイン「Oh, I see! 一歩踏み出していただけてよかったです。それでは今日は、厚木さんに『セルフ・コンパッション』っていう考え方をご紹介しますね。」
厚木さん「セルフ・コンパッション?聞きなれない言葉ですね。」
パイン「学術的な定義は置いておき、簡単に説明すると、『あなたが大事な人に対して接するように、自分自身に接すること』ということです。例えば、部下の方が仕事でミスをして落ち込んでいたら、どんな風に声をかけますか?」
厚木さん「『何かつらいことあった?』とか『気にするなよ?』とかですかね。『どうしたらいいか一緒に考えようか』みたいなのもあるかもしれないですね。」
パイン「じゃあ、厚木さん自身がミスをしてつらい時って、どんなことを考えてます?」
厚木さん「なんで自分はダメなんだろう、とか、管理職失格だ…とか。ネガティブすぎますかね(笑)」
パイン「I understand, 他人には優しく接するのに、自分自身には厳しく接してしまう人って少なくないんです。厚木さんもそうですが、管理職の方は多いように思いますね。」
厚木さん「自分に厳しくないと成長できないって思っていたし、立場がそうさせる部分もあるかもしれませんね。」
パイン「Of course, 自分に厳しいことが悪いわけではないんです。ただ、自分に厳しく、自身をいたわらないと、結果的に不安や怒りが強くなってしまいます。それが逆に孤立に繋がったり、感情のコントロールが難しくなったりして、周りを心配させお互いに不幸になってしまうこともあります。」
厚木さん「なるほど。セルフ・コンパッションっていうのが、その状況に陥らないようにするために大切なんですね。」
パイン「That's right. セルフ・コンパッションには3つの要素があります。『自分への優しさ』『共通の人間性』『マインドフルネス』の3つです。」
厚木さん「『自分への優しさ』っていうのはわかる気がします。他の2つはどんなものなんですか?」
パイン「『共通の人間性』は、簡単にいうと『誰もが似たような経験をしている、誰しも欠点があるし困難にあたるものだ』っていう考え方ですね。『マインドフルネス』は、あるがままの状態に気づく、という意味で、『つらい・苦しい』と思ったときに、それを無かったことにしたり、逆に誇張したりするのではなく、『今自分はつらいんだ』とそのまま受け入れることをいいます。」
厚木さん「なるほど、確かにそういう考え方が出来たら、むやみに落ち込んだりしづらくなるのかもですね。そういう考え方が出来るようになっていくにはどうしたらいいのでしょう?」
パイン「いろいろなアプローチがありますが、先ほども話をした通り、自分を客観的に見る、ということが1つ大事になります。なので、例えば、自分につらいことがあった時に立ち止まって、『これが自分の部下や大事な人だったらどう声をかけるだろう』と考えてみる、とかですね。
ほかにも、マインドフルネスだったり、身体的なアプローチなどもあるので、興味があったらぜひ心理の専門家であるEAPコンサルタントに聞いてみてください!」
セルフ・コンパッションは、 アメリカの心理学者であるクリスティーン・ネフ博士が、自身の経験から概念化したもので、Self-Compassion Scale(SCS)という心理尺度を開発しています。この尺度は、ポジティブな側面の「自分への優しさ・思いやり(self-kindness)」「共通の人間性(common humanity)」「マインドフルネス(mindfulness)」と、それに対極する「自己批判(self-judgement)」「孤独感(isolation)」「過剰同一化(over-identification)」で構成されています。
このポジティブな側面を高めることで、メンタルヘルスやフィジカルも含めたウェルビーイングにプラスの影響を与えることが、学術的な研究でも示されています。
セルフ・コンパッションが低い人は、自分自身をねぎらうことなく、常に自分を厳しい目で批判的に見続けてしまいがちです。厚木さんのように、部下のことであれば落ち着いて、受容的に考えられる人も、自分のことになると厳しく捉えてしまい、知らず知らずのうちに自分を追い込んでしまう管理職の方も少なくありません。
セルフ・コンパッションを高めるための方法についても、様々な研究・アプローチが存在します。比較的手軽・身近なものでいえば、昨今広がりを見せているマインドフルネスや、自分が思っていることを書き出すジャーナリングといったアプローチ、自分で自分の身体に触れるスージングタッチや、本文でも触れられていた客観的に視点を変えてみる、などの方法があります。
個人の特性によってアプローチの合う合わないはありますので、自分にあった自分の労い方をEAPなどに相談してみるのもよいかもしれません。また、ピースマインドにはこのセルフ・コンパッションに関するトレーニングプログラムもありますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
参考:
有光興記(2014)セルフ・コンパッション尺度日本語版の作成と信頼性,妥当性の検討.『心理学研究』 85 , 50-59
Neff, K. D. & Germer, C. (2017). Self-Compassion and Psychological Wellbeing. In J.Doty (Ed.) Oxford Handbook of Compassion Science, Chap. 27. Oxford University Press
・自分に厳しくなりがちな管理職こそセルフ・コンパッションを大切に
・自分に合ったアプローチは気軽にEAPにご相談