第15回
今さら聞けない?ワークエンゲージメント

Too late to ask now? Work Engagement

2023-06-01 09:15

今回のご相談者

永山 一郎さん(43歳)

食品メーカーJ社 人事総務部課長 社員数1500名

 

J社ではピースマインドのストレスチェックを2年前に導入。これまでストレスチェックの結果をもとに、高ストレス者が多い組織へのヒアリングや産業保健スタッフによるフォローなどを行ってきたが、今回新たなテーマでストレスチェックを活用するため、ミスターパインの下に相談に訪れた。

お助けマン

ミスターパイン

EAPやストレスチェックなど、ピースマインドが提供するサービスのご担当者が抱える課題を解決し、企業にお勤めの皆さまの「はたらくをよくする®」ことに喜びを感じながら日々活動している相談役。趣味は英会話。


 

永山さん「パインさん、こんにちは。毎年ストレスチェックではお世話になってます。今年もストレスチェックの準備を始めているところなのですが、1つ相談したいことがありまして。」

 

パイン「Of course!どうなさったんですか?」

 

永山さん「弊社は健康経営優良法人の認定を受けているのですが、その項目の中にワークエンゲージメントに関する項目がありまして。

 

パイン「ええ、去年から測定方法や複数年度分の結果の開示についても問われるようになったんですよね。」

 

永山さん「そうなんです。幸い、弊社のストレスチェックはピースマインドさんの80問版を使っていたので、その中で毎年ワークエンゲージメントは測定できていまして。もともとエンゲージメントは社内でも話題に上ることはあったんですが、改めて数値も公表することになり、目標数値も設定しまして。」

 

パイン「I see.経営としても力を入れていこう、となったんですかね。」

 

永山さん「そうなんです。そこで、目標値を定めたのはいいんですけど、どんな風に施策を打っていけばいいのかなと思って、まずはストレスチェックで測定をしている内容ですし、パインさんに相談してみようかと。」

 

パイン「I see. I see. 確かに、ワークエンゲージメントを上げる、と一口に言っても、どんなアプローチがいいのか分からないですよね。そもそもワークエンゲージメントはアウトカム(結果)の指標なので、それを直接高めるということは出来ないですからね。」

 

永山さん「体重を落としたい!って言っても直接体重は落とせないのと同じですね(笑)。運動とか食生活とかいろんな要因があって、そっちを変えなければいけないっていう…」

 

パイン「Exactly!幸いストレスチェックでは様々な職場環境要因が測定できているので、それを活用するのが1つの方法になりますね。」

 

永山さん「確かに…。でも、正直報告書を見ていて思うんですが、いろんな要因の数字がずらっと並んでて、どこに着目していいのか迷いますよね。通知表みたいな感覚でどうしても悪いところに目が行っちゃいますし…」

 

パイン「どこに着目するのかを絞り込む、という意味では、ワークエンゲージメントと関連が強い職場環境要因を分析する、というのがいいかもしれませんね。関連が強いということは、その要因が改善できればワークエンゲージメントの改善に繋がる可能性が高い、ということになります。」

 

永山さん「候補が絞り込める、というのはいいですね!」

 

パイン「For your information 、ピースマインドのストレスチェックデータからは、例えば『仕事の意義・働きがい』や『成長の機会』、『仕事の適性』といった尺度が関連が強い尺度の例として挙げられます。」

 

永山さん「確かにそうやって具体的に候補が見えてくると、その改善のために何をすればいいか、っていうのが考えやすくなりますね。」

 

パイン「そうですね。ただ、確かにこういう分析をすることで考えやすくなる、というのはあるのですが、データだけで考えるのも危険なんですよ。」

 

永山さん「え?どういうことですか?」

 

パイン「関連が強い、ということと、それを実際に職場ですぐに改善できるか、というのは別問題なんです。例えばですが、『仕事の量の負担』がワークエンゲージメントと関連が強かったとしても、じゃあ量を減らせるか、というとなかなかそうはいかないですよね。」

 

永山さん「確かに…それは無理ですね。そもそもそんなことしてたら業績に影響出ますよね。関連が強いからと言ってそれを現場に押し付けても、改善しようがないところもあるってことですかね。」

 

パイン「なので、人事や現場それぞれで、自分が改善に携われるものにフォーカスしていくことが大事になります。In addition、いきなり大掛かりなことをやろうとせずに、日常の業務に+αで出来ること、例えば、上司部下の1on1の進め方を見直すといったことなど、ちょっとした工夫でできることからスモールステップで始める、というのも重要ですね。幸い、永山さんの会社では経営層が問題意識を持っているようですし、経営からのメッセージが伝わることも、施策を後押しするうえではポイントになると思います。」

 

永山さん「経営はメンタルヘルスの問題含めて重要だと思ってくれているみたいなので、ストレスチェックを軸にして改善を図っていく、というのは打ち出して行けそうな気がしますし、経営も説得しやすい気がします。まずは先ほどご紹介いただいた分析からやってみたいと思います!」

 


ワークエンゲージメントは、オランダ・ユトレヒト大学のシャウフェリ教授らが提唱した概念であり、仕事に対するポジティブで充実した心理状態のことを指します。仕事に対する熱意・活力・没頭の3つが揃った状態であり、ワークエンゲージメントが高い社員は、心身の状態も健康で、生産性が高い傾向にあることも分かっています。

 

これらのことから、測定指標として活用されることも多く、ストレスチェックで代表的に用いられる新職業性ストレス簡易調査票では、ユトレヒトワークエンゲージメント尺度の3項目版から、「没頭」の項目を除いた2項目が採用されています。また、健康経営優良法人の調査票においても、アブセンティーズム、プレゼンティーズム等と並んでその測定状況に関する回答が求められており、令和4年度からは「複数年度の結果」や「測定方法」の開示についても質問項目に加わりました。令和5年健康経営度調査に向けた、2023年3月の第8回健康投資ワーキンググループでは、これらの項目を開示していることを新たに評価対象項目に加えることが提言されています(令和4年度までは評価対象外)。

 

今回は「ワークエンゲージメント」を軸に、測定した内容をどのように活用に繋げていくのか、ということの一つの考え方をお示ししました。改善したい指標と関連性が強い要素を明らかにすることは、改善施策の方向性を検討するうえで一つの有力な方法となります。

 

ワークエンゲージメントに限らず、改善したい指標や関連する要素をどのような手法で測定し、改善施策に繋げていくか、整理するところからピースマインドではご支援いたします。ぜひお気軽にご相談ください。


本日のまとめ

①ワークエンゲージメント向上の施策検討には、関連の強い要因の分析が効果的。

 

②データはあくまでもある程度絞り込むための材料。
 現場の状況や影響を及ぼせる範囲を踏まえて施策を決めていくことが大事。

 

③指標の選び方や職場環境要因の測定手法の整理から、ピースマインドにご相談。

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