女性管理職比率を高めることは、企業ではたらく従業員にどのような影響があるのでしょうか。従業員にとってポジティブな影響があるのであれば、企業にとって女性管理職比率を高めるモチベーションになるでしょうし、ネガティブな影響があるのであれば、女性も活躍できる社会実現に向けて、しかるべき対策を講じる必要があるでしょう。
今回の分析では、ピースマインドのストレスチェックデータのうち、企業の女性活躍に関するデータを含む企業経営に関するデータベースとマッチした50社、約9.5万件のデータを活用し、企業の女性管理職比率と従業員のウェルビーイングの関係について、回帰分析という手法を用いて分析しました。
女性管理職比率の高さと、従業員のウェルビーイング(心理的ストレス、ワークエンゲイジメント、仕事満足度、職場の一体感)の関連について分析した結果を図1に示します。この図は、女性管理職比率の高さが従業員の各ウェルビーイング指標に与える影響を表しており、グラフの値が正の方向に大きいほど従業員の各ウェルビーイングの指標がポジティブに変化する、負の方向に大きくなるほどネガティブに変化することを示しています。 こちらの結果を見ると、女性管理職比率が高くなることに伴って、従業員の各種ウェルビーイングの状態は良化するということが示されています。なぜこのような結果となるのでしょうか。
女性管理職比率の高さが従業員のウェルビーイングに与える影響には、
(1)女性管理職比率の高さが、直接、従業員のウェルビーイングに与える影響(直接効果)
(2)女性管理職比率の高さが、従業員の職場環境に影響を与え、間接的に従業員のウェルビーイングに与える影響(間接効果)
の2種類あると考えられます。
女性管理職に特徴的な傾向は、メンバーの内発的動機づけを高める関わり
では、女性管理職比率の高さは、具体的にどのような職場環境要因と関連しているのでしょうか。そちらについて分析をした結果、女性管理職比率が高くなることに伴って、一部職場環境要因が良化する傾向が明らかになりました。職場環境要因の中で、女性管理職比率の高さに伴う良化が大きな要因上位7つをまとめたのが以下表(表1)です。
今回の分析の結果から、女性管理職比率が高まることに伴って、メンバーが内発的動機付けを持ちやすい職場環境が作られやすくなり、結果として従業員のウェルビーイングが向上する可能性が示唆されました。その一方で、前述の通り女性管理職比率は目標値との乖離が未だ大きく、女性の管理職登用が思うように進んでいないのが現状です。
ある調査(*5)によると、キャリア初期のはたらく女性の中で、管理職を目指したくないと答える方の約70%が、その理由に仕事と家庭の両立の難しさをあげています。多くの企業が、育児休暇や時短勤務など、仕事と家庭の両立を支援する制度を導入し始めていますが、この調査結果からは、そういった制度を充実させるだけでは女性の管理職登用が進みにくいことが見て取れます。
女性に限らず企業内でのキャリアを志向する全ての従業員が仕事と家庭を両立していく上では、企業側の制度が充実するだけではなく、従業員側の家庭環境にも目を向ける必要があります。はたらく人だれもが、それぞれのキャリアプランを持っています。家庭でお互いのキャリアや働き方についてコミュニケーションし、家庭内外に必要なサポート資源を求めながら、双方が納得できる仕事と家事・育児のバランスを見つけられることが大切です。一方で、従業員の家庭環境については、企業としては直接的には介入しにくい面があります。自身のキャリアと家事・育児の両立について、家庭でのコミュニケーションに悩まれる従業員がいる場合には、EAPなど外部相談機関を紹介し、家庭環境の整備を支援することも企業が出来る一つの支援となるかもしれません。
今後もピースマインドでは、はたらく人と組織のウェルビーイングに寄与する研究、ソリューション開発、サービス提供を進めてまいります。
*1 ピースマインドが企業向けに提供するストレスチェック 「職場とココロのいきいき調査®」2017年度から2019年度のデータを用いて分析しています。尚、本分析は、延べ社数・延べ人数で集計しています。
*2 厚生労働省「令和元年度雇用均等基本調査」の結果概要
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r01/07.pdf
*3 それぞれのウェルビーイング項目について、女性管理職比率が1%上がることで上昇する理論的に予測した数値を示しています。なお、本分析では、女性管理職比率と各種変数の間に直線的な関係を仮定した分析を行っています。
今回の分析においては社数は限定的で、集計に用いた企業の女性管理職比率の平均は約6%です。この平均値付近では上記の理論値は比較的あてはまりがよいと想定されますが、平均値から外れる場合にはこの理論値のあてはまりは悪くなる可能性を含んだものとなっております。
上記のことから、数値の解釈をする際には、女性管理職比率が10%増えたら上記の数値が10倍良くなる、といった単純な試算が出来るものではないことをご理解いただいたうえで、結果をご覧頂くようお願いいたします。
*4 Eagly, A. H. (2007). Female Leadership Advantage and Disadvantage: Resolving the Contradictions. Psychology of Women Quarterly, 31(1), 1–12.
Eagly, A. H., Johannesen-Schmidt, M. C., & Van Engen, M. L. (2003). Transformational, Transactional, and Laissez-Faire Leadership Styles: A Meta-Analysis Comparing Women and Men. Psychological Bulletin, 129(4), 569–591.
*5 独⽴⾏政法⼈国⽴⼥性教育会館 「令和元年度男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査(第五回調査)報告書」
https://nwec.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=18858&item_no=1&page_id=4&block_id=58
【参考情報】
https://www.peacemind.co.jp/service/stresscheck
https://www.peacemind.co.jp/service/eap
https://www.peacemind.co.jp/newsrelease/archives/313
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2021-11-17【プレスリリース】調査分析_女性管理職比率の向上が従業員のウェルビーイングにポジティブな影響.pdf