2017年度~2019年度のストレスチェックデータ(上場企業25社、社員数合計約10万人)をもとに、ROA(総資産利益率)及びTobin's q(将来の収益力期待を示す一つの指標)との関連性を分析しました。(*3)
分析の結果、ストレス度と両指標の間には正の関係が見られ、ストレス度1ポイントの上昇は、ROAを0.4%、企業価値を0.1%押し上げると推定されることが分かりました。(*4)
一方で、ピースマインドのストレスチェックデータを元に、ストレス度の上位・下位10%の企業データを抽出してその平均の差を見ると、約7.5ポイントの開きがあります。(図1)
これらをもとに、2020年度の上場企業の総資産平均に当てはめて金額換算し、ストレス度が下位10%にある企業のストレス度が仮に上位10%まで改善した場合を試算したところ、約3億円の純利益、73.7億円の企業価値の増加が算出されました。
なお、昨年度にピースマインドのEAPの導入とストレス度の改善について分析した結果(*5)では、EAP導入2年後のストレス度に約1.1ポイントの改善が予測されることが分かっています(図2)。こちらを上記の試算にあてはめると、EAPの導入によって約4300万円の純利益、約10.8億円の企業価値向上につながるということになります。
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社員のストレスの改善と企業業績の向上の間には、複雑な要因が相互に影響しあっていることは明らかで、その全貌を明らかにするのは簡単ではありませんが、上記の分析から、メンタルヘルスの向上が企業業績と正の関係にあることが示唆されました。他の健康経営に関する取り組みと同様、その重要性が裏付けられたとも言えます。
健康経営施策が企業業績に如何にして影響を及ぼすのか、については、前述の経済産業省 「健康経営の推進について」において、以下のように整理されています。
①個人の心身の健康状態の改善による生産性の向上
②組織の活性化によるエンゲージメントの向上や離職率の低下
③企業のイメージアップ・ブランド価値の向上やリクルート効果、顧客満足度の向上等による企業価値の向上
今回の試算から、メンタルヘルスの問題は企業のリスクマネジメントという観点に留まらず、業績向上にプラスの影響を与える可能性が高いことが示唆されました。今後もピースマインドでは、メンタルヘルスがどのように個人・組織のパフォーマンスに影響を及ぼしていくのか、またメンタルヘルスに影響を与える要因についても、継続して研究を進めていく予定です。
*1 健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
*2 データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン,厚生労働省 ,2017
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000412467.pdf
健康経営の推進について,経済産業省,2020
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/180710kenkoukeiei-gaiyou.pdf
*3 株式市場で評価された企業の価値を資本の再取得価格で割った値のこと。
(企業の株価総額+債務総額)/資本の再取得価格 で計算される。
*4 ストレスとの関係を分析するため、企業業績に関連する複数の財務的要因(企業規模、資本集約度、過去の業績、負債比率、研究開発強度、産業、年度)の影響を取り除く推定を行いました。
*5 【調査結果】従業員支援プログラムの継続導入がストレス軽減に寄与 ~コロナ禍で益々重要な社員のメンタルヘルス対策~
https://www.peacemind.co.jp/newsrelease/archives/282
【参考情報】
https://www.peacemind.co.jp/service/eap
https://www.peacemind.co.jp/service/stresscheck
https://www.peacemind.co.jp/newsrelease/archives/261
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担当 末木
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【プレスリリース】2021-08-11_ストレスの改善は企業業績の向上につながるのか?~「上場企業のストレスと企業業績」に関する調査結果を公開~ .pdf