【調査分析】with/afterコロナの働き方で求められるストレス対処法とは? ~「感情的な発散」よりも「前向きな思考」が鍵~

企業向けに『はたらくをよくする®』支援事業を展開するピースマインド株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役:荻原英人、以下「ピースマインド」)は、九州大学 馬奈木俊介教授と協働し、ピースマインドが企業向けに提供するストレスチェック 「職場とココロのいきいき調査®」(以下「ストレスチェック」)のデータ(*1)をもとに、はたらく人のストレスコーピングがストレスに与える効果を分析しました。

【図1】with/afterコロナ時代への適応における
ストレス対処の成否によるストレス状況変化のイメージ

人がストレスに対処する行動は、ストレスコーピングと呼ばれます。例えば、心配事がある際に、それを解消するために人に相談したり、体を動かして気分を転換したりすることは、ストレスコーピングの一つです。その他にもストレスコーピングはありますが、人や物にあたるなど不適切なコーピング方法もある点には注意が必要です。ピースマインドでは、6種のストレスコーピングを測る尺度を開発しています。

【表1】 ピースマインドのコーピング尺度
それでは、新たな働き方にシフトする中でストレスが増えると思われるwith/afterコロナ時代へ適応するために、より効果的なストレスコーピングとは何なのでしょうか。今回の分析では、ピースマインドのストレスチェックデータとストレスコーピング尺度のデータを活用し、ストレス改善により効果的なストレスコーピングは何かを、回帰分析という手法を用いて分析しました。

ストレスコーピングの仕方の違いで、ストレスは改善もすれば悪化もする可能性がある

 ストレスコーピングが、1年後・2年後のストレスに与える影響について分析した結果が、図2です。これらの図は、値が正の方向に大きくなるほどストレスを改善する効果が、負の方向に大きくなるほど悪化させる効果があることを示しています。

【図2】ストレスコーピングの1、2年後のストレスへの影響

「前向きな思考」「気分転換」は、1年後・2年後のストレス低減効果が高い

前向きな思考と、気分転換の効果を見ると、その他のストレスコーピングよりも相対的にストレス軽減効果が大きいことが見て取れます。先行研究(*4)によると、前向きな思考は過剰な緊張状態を緩和し、気分転換は不適応な思考を中断する効果が示されています。分析結果では、1年後、2年後のストレス状態両方にポジティブな効果があることから、ストレスがかかる環境の中でも前向き思考や気分転換ができるようになることは、中長期的なストレスを低減させる可能性が示されました。

「感情的な発散」や「消極的な思考」は、1年後、2年後のストレス状態を悪化させる可能性がある

しかしその一方で、感情的な発散や消極的な思考の効果を見ると、ストレスを悪化させる効果が相対的に大きいことが見て取れます。1年後、2年後のストレス状態両方にネガティブな効果があることから、これらの対処は中長期的なストレス改善にはつながらない対処だと言えるでしょう。

 ストレス対処法を改善することで、高ストレス者を49%減少させられる可能性がある

それでは、感情的な発散をするよりも前向きな思考を上手くできるようになると、ストレスはどの程度低減するのでしょうか。データを用いてシミュレーションした結果、これらストレスコーピングが改善した場合、ストレス得点が6.96ポイント改善されることが明らかになりました。厚労省の基準で77ポイント以上が高ストレス者に該当することを踏まえると、実に49%の高ストレス者を削減できるということになります。あくまでシミュレーションではありますが、適切なストレスコーピングを行うことによって、ストレスを低減できることを示す結果と言えるでしょう。

【図3】ストレスコーピング改善による高ストレス者の減少割合シミュレーション結果

with/afterコロナ時代の新たな働き方への適応に向けて、ストレスコーピング能力の向上を

COVID-19の流行以降、我々の働き方は急激に大きな変化を見せています。この流行をきっかけとして、新たな働き方が導入・定着し、柔軟な働き方の実現が進む一方、その変化が急激であるため、新たな生活様式・働き方の中で生じるストレスへの対処が大きな課題になっています。
今回の分析では、よりストレス低減に効果的なストレスコーピングについて分析を行いました。先行研究では、従業員のストレス状態は、離職や休職といった人材の定着と深いつながりがあることが示されています。(※5、6)そのため、企業として新たな働き方を機能させ、持続的に企業活動を行っていく上では、はたらく人のストレスコーピング能力を高め、新たな働き方への適応性を高めていくことが重要になると言えるでしょう。ストレスチェック等のサーベイを利用して、はたらく人自身がコーピングスタイルを自覚できるようになること、コーピングスキルを身に着ける機会を提供することで、自律的にストレスに対処できるように支援することが望ましいと思われます。
今回は、労働者のストレスという観点から、with/afterコロナ時代の新たな働き方への適応のポイントの一つをお示ししました。今後もピースマインドでは、はたらく人と組織の長期持続的な成長、さらには持続可能な社会づくりに寄与する研究、ソリューション開発、サービス提供を進めてまいります。
 

*1 2017年から2019年度のデータを用いて分析しています。
*2 テレワークの労務管理等に関する 実態調査,厚生労働省.,2020
*3 朝日新聞世論調査,2020
*4 抑うつおよび自動的思考とCoping様式との関係についての一考察 ,林 潔.,2004
*5 A Japanese Stress Check Program screening tool predicts employee long-term sickness absence: a prospective study, Tsutsumi et al., 2018
*6 Occupational stress and the risk of turnover: a large prospective cohort study of employees in Japan, Kachi et al., 2020

 

【参考情報】
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メール:press@peacemind.co.jp
担当:末木(すえき)
お問合せ:https://www.peacemind.co.jp/contact/form


2021-05-27【プレスリリース】withafterコロナの働き方で求められるストレス対処法とは?~「感情的な発散」よりも「前向きな思考」が鍵~.pdf
2021-05-27【プレスリリース_添付資料】EAP(従業員支援プログラム)の活用で、相談者がコーピングスキルを身に着けた事例.pdf